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〇〇してそう構文 (エッセイ)

 チーズ牛丼。略してチー牛。
「陰キャ」または「オタク」「ネクラ」などを揶揄するネットスラングである。

 見出し画像にあるイラストはあまりにも有名で、「チーズ牛丼を注文してそうな顔」というパワーワードが語源となった。
 このイラストに引っ張られ、見た目の特徴としては「眼鏡」「黒髪」「子供のような髪型」「覇気のないオーラ」などが挙げられるが、なんにせよ『イケてない』見た目を揶揄し、煽り文句として使われることが多い。

 私自身がチー牛かどうかは置いておいて、チー牛という言葉の破壊力は抜群である。
 人畜無害、平和に暮らしていた青年がある日「チーズ牛丼を注文してそうな顔」と指摘されることで、イケてないレッテルを貼られるのだ。あまりに可哀想である(大事なことなので二回言うが、私がチー牛かどうかは置いておく)

 そもそも、チー牛とカテゴライズされる男たちはそんなにイケてないだろうか。
 私は、たまたま男性を恋愛対象として見ることはないので、友達になれるかという視点で見ることが多いのだが、私ならチー牛と友達になりたい。
 むやみに人を攻撃することも傷つけることもなさそうだし、気が弱そうなところも好感が持てる。それに特定のジャンルについて詳しそうだ。世間ではそれをオタクと呼ぶが、私はそういう人の方が話していて面白いと感じる。

 まぁ、人の好みというのそれぞれなのだが、少なくとも馬鹿にされるような存在ではないと思う。
 それらも全て、この〇〇してそう構文に端を発しているから憤りを感じているのだ。

 〇〇してそう、もしくは〇〇好きそう構文は非常に厄介だ。
 なぜなら、〇〇してそうと言うだけで実際に対象者が〇〇をしてなくても成立してしまう点だ。相手がどちらであれダメージを与える行為は、俗に言う『ダブルバインド』の構造を含んでいる。
 似たような例を挙げてみると。

・ひろゆきとか好きそう
・一日中ゲオにいそう
・Xで画像リプライしてそう
・早口で言ってそう
・VTuberにスパチャしてそう

 いくらでも例は出てくるが、相手にダメージを与える効果は一緒だ。あまりに強すぎて禁止カードとして扱う匿名掲示板もあるレベルである。

 ふと思ったが、この原理でもっと細かく掘ってみると『あるあるネタ』や『ふかわりょうの一言ネタ』のように笑いに昇華するかも知れない。
「テトリスだけ異常に強そう」とか、「煽り運転の助手席に乗ってそう」とか、「店員のペースで試着させられそう」など。なんにせよ高度なテクニックが必要そうだ。
 自分を落としたり卑下する笑いは単純だが、相手を貶す笑いというのは加減が難しいし、イジメを助長しかねない。

 言葉というのは人を傷つけることも救うこともできる。それならば、ポジティブなことを指摘してあげたいものだ。

・電話でも小さくお辞儀してそう
・誰かにあげるアメちゃんを常備してそう
・エレベーターの乗り降りで扉を押さえてそう
・一人で食事をしていても「ごちそうさまです」って言ってそう


 どうせなら、こんな風に心がけたい。

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