さよならの国

「さよならの国」に行った。

さよならの国では人と人は一回しか会えない。一度会ってしまったらそこでお別れでもう二度とその人には会うことは出来ない。

それで、さよならの国の人々は「出会った瞬間」をとても大切にした。言葉を選び、時間を大切にして、二人がどうして出会ったのか、今までお互いどんな人生を歩んできたのか、そしてこの出会いがとても素敵な思い出になるように、その瞬間を二人で温めた。

そして僕はそのさよならの国で、ある女の子と出会った。

出会った瞬間に僕たちは直感したのだけど、それは本物の恋だった。

僕も彼女も「これは恋だね」と言おうと思ったのだけど、言ってしまうと後はもう「お別れ」のことばかり考えなきゃならないので、ずっと「恋」については言わないでおいた。

僕は彼女の瞳が素敵なことや、そのとき着ていた洋服がとても似合っていて可愛いことなんかを伝えた。

彼女は僕の話すことや突拍子もないアイディアがとても面白いと言ってくれた。

そして今までどんな人生を歩んで、どんな人たちに出会って、どんなお別れをしてきたかゆっくりと話し合った。

そして僕たちにはお別れが近づいていた。

僕は彼女に「好きだ」って言ってしまおうと思ったのだけど、もう二度と会えないから言うのはやめにしてしまった。

彼女も僕に何か言おうとしたのだけど、「ううん。なんでもない」と言った。

僕たちはこの出会っている瞬間を温めた。

そして僕たちにはお別れが近づいていた。

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