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父の失踪

バーテンダーという立場から、バーに来る人たちの人間模様を書いてきた林伸次さん。今回のコラムの主役は、お客さんではなく、林さんと同じバーテンダー人たちです。10年ぶりに再会したバーテンダーの友人。昔話に花を咲かせているうち、子供の頃失踪してしまった父親と再会したときの話をし始めました。父親はなぜ失踪したのか、そして再会した父親になにを語りかけるのか。バーテンダーたちの人間模様です。

10年ぶりに再会したバーテンダーの友人

いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。

今は横浜でバーをやっている、少し年下で、僕の修行時代からの付き合いのある男がいます。同じ店で働いたことはなかったんですが、同じ業界ですし、音楽の趣味が近かったので、昔はよく遊んでいました。彼は当時から結婚していて、奥さんとも一緒によくお酒を飲みに行きました。お互いに店を始めて、彼に子供ができて、さらに僕が結婚してからは会う機会がほとんどなくなっていたのですが、先日、突然僕の店に現れました。会うのは10年ぶりくらいだったでしょうか。

その日は雨でお客が少なく、彼と思い出話に花を咲かせました。オーセンティックなバーを経営している彼ですが、ワインの趣味もよく、サンテミリオンの90年代もののボトルを入れて飲んでいました。

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