見出し画像

ロバート・マローン氏の動画について

今回、医療従事者の見解を聞きたいとTwitterでご依頼を頂いたので、返答いたします。

↓ご依頼の内容はこちら↓

ということで、ロバート・マローン氏およびこの動画の内容について検証します。

ローバート・マローン氏はwikiに
>COVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する誤情報を拡散しており、批判を浴びている
としょっぱなに記載されている人物です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BBW%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3

動画にある彼の主張の誤った誘導について検証します。

ロバート・マローン氏とmRNA

彼は動画内でmRNA技術開発者を自称していますが、果たしてどうなのでしょうか。

最近のNatureのニュースに、彼の功績を含めたmRNA技術の特集があります。

>In late 1987, Robert Malone performed a landmark experiment. He mixed strands of messenger RNA with droplets of fat, to create a kind of molecular stew. Human cells bathed in this genetic gumbo absorbed the mRNA, and began producing proteins from it.
つまりロバート・マローン氏はヒト細胞にmRNAと脂質を混ぜたものをひたすことにより、細胞がタンパクを発現したことを証明し、これがmRNA技術の大きなステップになった、ということです。

そもそもmRNAとは何なのか?はこちらの東レのサイトの図が分かりやすいです。

mRNAは人間の細胞の中でDNAから作られるもので、結果としてタンパク質を作る設計図となるわけです。

ただしmRNAという物質は細胞の外では非常に不安定で、すぐに壊れてしまいます。人間に注入しようとしても、そう簡単に細胞の中に入ってくれないので、mRNAを壊れないように包み保護する工夫が必要になってきます。

今回のmRNAワクチンは、

①新型コロナウイルスのうち、スパイクタンパクと呼ばれる部分だけの設計図をLNPという脂質の袋に入れて注射する

②設計図をもと細胞にスパイク蛋白を作らせる

③そのタンパクに対して僕らの免疫系が反応して抗体を作ったり敵の顔を覚えたりする

④本物の新型コロナウイルスが来た時にそのスパイク蛋白を認識して迅速かつ的確な攻撃をしかけることで感染や重症化を防ぐ

というものなのです。

ロバート・マローン氏がmRNAワクチンに関連した大きな発見をしたのは確かな事実ですが、一方で記事中に
>Malone’s experiments didn’t come out of the blue. 
とあるように彼の功績も決して白紙から生まれたわけではありません。

またNature記事中の年表のような図を見て頂くと分かるように、mRNAワクチン技術が決して彼の功績のみで確立したわけではなく、多くの研究者たちの功績の積み重ねで生まれたことに注意です。そしてよくある「mRNAワクチンは急造ワクチン」というレッテルも間違っていることがお分かりかと思います。

さてmRNA技術をワクチンに応用する研究にも着手したマローン氏ですが、
>Malone was listed as one inventor among several, but he no longer stood to profit personally from subsequent licensing deals, as he would have from any Salk-issued patents. Malone’s conclusion: “They got rich on the products of my mind.” 
とあり、特許関係でかなりモメたようです。

>In 2001, he moved into commercial work and consulting. And in the past few months, he has started publicly attacking the safety of the mRNA vaccines that his research helped to enable. Malone says, for instance, that proteins produced by vaccines can damage the body’s cells and that the risks of vaccination outweigh the benefits for children and young adults — claims that other scientists and health officials have repeatedly refuted.
2001年からは研究ではなく商業的活動に移行したマローン氏ですが、最近彼はmRNAワクチンによって発現した蛋白が人体にとって有害というキャンペーンを張っています。そして他の科学者たちによって否定されている、というところまでNatureのニュースで言及されています。

mRNAワクチンの有害性についてのファクトチェック

マローン氏は冒頭の動画で、スパイク蛋白による不可逆な脳・心筋障害や、遺伝子的な免疫システムのリセットなどと言っていますが、果たしてこれはどれだけ妥当性がある話なのでしょうか。​

マロ―ン氏による同じ趣旨の動画に対するファクトチェックを、既にロイター紙がまとめています。

それから「遺伝的な免疫システム」というのが何を指すのか不明ですが、「mRNAワクチンで自分の遺伝子が改変されてしまうのではないか」という不安をお持ちの方はいるかもしれません。それについてはこちらの図が分かりやすいです。

ワクチンの後に心筋炎が起こることは確かにありますが、100万回あたり20-40と、極めて稀な数値です。そして、基本的には特別な治療を要さない軽症です。一方で、コロナ感染による重篤な心筋炎・脳炎は実際に起こっています。

仮にスパイクタンパクが悪いのだとしたら、コロナに感染して、ウイルスが細胞を乗っ取り、やつらの設計図に従ってウイルスを複製させられてしまう過程でスパイクタンパクも作られるわけで、コロナにかかること自体がリスクということになります。

実際のところは、小児に対してもワクチンは重症化予防効果を発揮しますし、MIS-Cと言われる、コロナ感染後の多臓器障害の予防効果が証明されています。

マローン氏の言葉は、ファクトとしても、説明の論理性としても、間違っていると言えます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?