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2020年公開 北欧映画を振りかえる 映画祭篇「フィンランド映画祭アンコール」 (11/14〜18 ユーロスペース)で観た6本。

●『コンクリート・ナイト』(2014)
ヘルシンキが舞台。橋が事故で崩落し列車が川に墜落、溺れてもがいるという悪夢で始まった14歳の少年の1日。同居の、年の離れた兄は翌日に、刑務所に収監されることになっています。大好きで尊敬している兄と、街をぶらつき、港で水遊びをし、1日を過ごすのですが…。モノクロ、とてもおしゃれな映像です。ただ、とても難解。この作品は、2014年のフォンランドアカデミー賞( Jussi Awards)では、作品賞、監督賞など6部門で受賞しています。監督はピルヨ・ホンカサロ。『“糸”~道を求める者の日記~』という東京を舞台にした作品もある女性監督です。

●『リトル・ウィング』(2017)
好きか嫌いかでいえば、圧倒的にこちらの方が好きですね。シングルマザーと12歳の娘ヴァルプの物語。母は、翻訳の仕事をしているのですがそれほど裕福ではありません。何度受けても車の免許がとれません。気はいいが、ちょっとドジ。仲の良い母娘です。ヴァルプの望みは、幼い頃に別居し、いまや住所も知らない父親に会うこと。
ついヴァルプの日常に目が行きます。住まいは東ヘルシンキ。学校が終わると、郊外の乗馬学校に通います。りっちな子どもは自分のポニーも持っていますが、ヴァルプはコンプレックスはありません。親のことでからかわれてもめげる子ではありません。家の近くの友だちとつるんで、近くの駐車場から車を盗み出し、ドライブするのが楽しみです。彼女も運転ができるようになります。ある深夜、ヴァルプは友だちの男の子の車で、父親が住んでいるらしい、フォンランド北部のオウルへひとりで行くことを思い立ちます…。
タイトルは、ジミ・ヘンドリックスの曲から。ヴァルプが探す父親とのエピソードで効果的につかわれます。フィンランドでは、ヘビメタ愛好者も多いですが、オウルで途方にくれたヴァルプに温かい手を差し伸べてくれる妊婦が、元ヘビメタバンドにいたという設定でした。
監督はセルマ・ヴィルフネン。こちらも女性監督です。2014年のフォンランドアカデミー賞( Jussi Awards)では、10部門にノミネート、ヴァルプ役のリンネア・スコーグは主演女優賞を受賞しています。
ヴィルフネン監督には、ホビーホースという変わったスポーツをとりあげたドキュメンタリー作品『HOBBYHORSE REVOLUTION』があります。短縮版がNHKで放映されたそうです。再放送されないかな。

●『水面を見つめて』(2013)
フィンランド北部ラップランド、1970年代が舞台です。もうすぐ小学生になる主人公ペテとその一家の、クリスマス前後から1年間の物語です。フィンランドの映画は、両親が離婚して、という設定が多いですが、ペテも母が再婚、警官の養父、妹の4人家族です。養父は酒を飲むと性格が変わり暴力をふるいだすという困った人で、ペテたちは祖父母のもとに避難し、最後は別居することになります。四季の暮らし、小学校の入学や、クリスマスなど、フィンランドの自然と生活習慣が見えて興味深いのですが、いささか退屈な映画でした。世界一まずいキャンディ、サルミアッキがでてきましたね。監督・脚本はピーター・フランゼン

●『サマー・フレンズ』(2014年)
こちらはフィンランド最南端、ハンコというリゾート地が舞台。ウェイトレスをしながらバカンスと楽しもうとこの町にやってきた25歳の女子、イーリスとカロリ―ナ。派手で、それなりにキュートで遊び好き。ウェイトレス仲間で、実はお金もちの、まじめそうなエーヴァに頼み込み。しゃれた別荘に住むことに。ここでパーティをやったり、バーで大騒ぎと、はしゃぎまくるというコメディです。この年のフィンランド・アカデミー( Jussi Awards)では、作品賞など4部門にノミネートされています。監督はイナリ・ニエミ。これもいまひとつのれませんでしたね。

●『湖のものがたり』(2016)
昨年の「フィンランド映画祭」で観た『ネイチャー・シンフォニー』と同じスタッフによるドキュメンタリー。フィンランドでは、最初10館で公開され、翌週には114館に拡大された大ヒット作だそうです。
フィンランドの神話にでてくる水の精の話から、様々な魚、水鳥や、熊、あざらし、昆虫、カエルなど、季節の移り変わりと、生き物たちの生態がフォトジェニックに描かれます。ま、こういうのもたまにはいいかな。

●『マイアミ』(2017)
幼い頃、父母の離婚で離れ離れになった姉妹。姉はナイトクラブのショーダンサー、妹はパン屋で働く地味でおとなしい娘です。父親の死をきっかけに妹が姉を探し出し、再会。地方を流す姉の旅につきあううち、妹も踊り始めます。フィンランドの冬、ややうらぶれたショービジネスを舞台にしたロードムービーかとおもいきや、後半は思いもよらぬクライム・サスペンス仕立てでした。タイトルの『マイアミ』はふたりが夢見る、陽光きらめく場所。なんかわかる感じです。
監督はザイダ・バリルート。上映の前に、彼女のコメントが特別に上映されました。そのなかで、最新作として紹介されたのが、ムーミンを書いたトーベ・ヤンソンを主人公にした『TOBE』。30〜40代のヤンソンを描いた作品です。つまり、いま注目の監督、というわけです。
2018年のフィンランド・アカデミー賞(Jussi Awards)では、作品賞は逸したものの、姉役を演じたクリスタ・コンネンが主演女優賞を受賞しています。

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