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謎の映画、『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』をPFFで観た! 2020.9.12

ことしのPFF、特集はロイ・アンダーソン。スウェーデンの監督です。映画祭の公式ページをみると、「昨年のヴェネチア国際映画祭で、銀獅子賞=最優秀監督賞を受賞した傑作『ホモ・サピエンスの涙』が11月に劇場公開決定の報に、おお!この機会に全作品紹介せねば!とアジア初の「ロイ・アンダーソン・コンプリート特集」を実現。」とノリのいい紹介。こちらも、おおロイ・アンダーソン・コンプリートかあ、と感動しました。

1本目に観たのは、デビュー作『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』(1970年)。昔一度観た記憶がうっすらとありますが、そのときのタイトルは『純愛日記』。日本公開は71年です。『小さな恋のメロディ』とほぼ同時公開。同じ少年と少女の恋、という、たぶん便乗商法かと思います。

療養所に入院する祖父を家族と訪ねた15歳の少年ペールが、たまたまそこで出会った年下の美少女アニカに一目惚れ。町に帰ってから再会し、付き合いを始め…という典型的なボーイ・ミーツ・ガールドラマです。声をかける前の、お互いが気になって、チラ見して、目をそらし、またチラ見。相手も同じくチラ見する。それを繰り返す、もどかしい感じがいいですね。

ペール君は(知り合いの噺家さんを若くした感じの)愛嬌のある顔の少年ですが、アニカのロルフ・ソールマンがとびきりかわいらしい。『リトル・ロマンス』のダイアン・レインに似た美少女です。ペール君の友達役で、『ベニスに死す』のビョルン・ヨーハン・アンドレセンがでています。

このラブストーリーはどうということはありません。性描写はありませんが、なにせ、フリーセックスの国ですから、決して「純愛日記」ではありませんが。

観直して面白かったのは、そのふたりの話ではなく、映画の終盤。ペール君の家の別荘で開かれる、ザリガニ・パーティーのシーンです。茹でたザリガニを山盛りにし、飲めや歌えやの大騒ぎをするスウェーデンの夏の風物詩。変な三角帽をつけ、ザリガニが描かれたエプロンをつけ、手づかみでむしゃむしゃやる食べるパーティー。その席に、アニカとその両親もよばれます。このアニカの父親のキャラが、いや、ペールの父親もどこか変だが、実に変っていています。このパーティーの客の描写、そして彼らが深夜に、霧の中、湖になぜか釣りにいくあたり、不思議なムードがいっぱい。実はアンダーソンがやりたかったのはこっちでは、と思いたくなります。あやしげな映画です。

日本公開時、オリジナルから20分カットした、といいますが、おそらくそのあたりをばっさりやったのでは、と想像します。日本配給は松竹映配。あたまを抱え、不可解な部分をカットし、『純愛日記』に仕立てあげたのでしょう。

さらにネットで調べていると、音楽も謎、です。
https://blog.goo.ne.jp/832108/e/64e60f17948756820921f771e9c21751『純愛日記』は当時サントラ盤のレコードがでているのですが、どうやらこれは映画の後付けサントラ。ベルト・アンデルセン楽団とありますが、日本の村井邦彦さんのバンドで、作曲も村井さん?という説がちらほら。

もうひとつ謎。PFFのパンフにも「ベルリン国際映画祭で高い評価を受け、4賞を受賞した」と書かれているのですが。この作品がコンペ部門に出品された、第20回ベルリン国際映画祭は、ドイツのコンペ出品作が物議をかもし、審査員が辞任し、金熊賞をはじめとする各賞の選出は行われなかった、といいます。ウィキでは、「ジャーナリスト特別賞など4つの賞」と書かれています。何か、主要部門に変わる特別な賞がその年あったんでしょうね。

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