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覇道

私が経営する会社の事業は自動車整備業と移動通信販売業です。予てよりこの2業界は、多くの類似性(ビジネスモデル)があると感じています。自動車業界は昭和の高度経済成長の主役でした。これは昭和40年代に始まり、今も主要産業であります。一方移動通信、即ち携帯電話業界は約30年前にこの世に現れ、自動車よりも短期間で主要産業となりました。そしてこの2つの業界は現在自動車の安全技術(自動運転技術)の進歩により密接に関係しています(コネクティッド CASEのC)。従いこれからも日本のみならず世界の主要産業であり続けます。またここ5年くらいの間に両産業は転換期を迎えていることも類似しています。自動車においては、既述の安全技術の進歩と電気化(EV)であり、携帯電話においては国と3大キャリア(ドコモ au ソフトバンク)が絡んだ業界再編成です。

自動車業界は国交省管轄であり、国とメーカー、特にトヨタの力が圧倒的です(敢えて支配下と言います)。整備業界はその底辺で日本の安全(交通事故防止と環境維持そして徴税)に大きく貢献しています。自動車販売について述べます。クルマを販売するといくら儲かるか?買う人は大金を払うので販売者(ディーラーではない整備事業者が販売した場合)は15%くらいは儲けがあると思われるでしょう。大メーカー(代表トヨタ)の事例を出します。トヨタ最上位ブランドのレクサスです。レクサスが登場したころ、フラッグシップのLSと言うモデル(販売額1500万円)の整備業者が得る利益は最初は何と1万円~3万円でした。私は100万くらいはあってよいと思いました。当時のユーザー値引きはゼロ円でした。メーカーはいったいいくら儲かるのか?今は無いセルシオを何世代も購入いただいた整備業者のお客様にレクサスを売って(実際は紹介販売で紹介料をもらう)この低利益です。商慣習においてあり得ない事象です。当時プリウスの事故多発でアメリカ議会聴聞会に呼ばれた豊田章夫社長(当時)がアメリカのディーラー(州代理店)オーナーとのお疲れ会での記者会見で涙する姿を見て、豊田社長に手紙を2通書きました。内容は【レクサス利益は商売倫理に反する 今まで数えきれないカローラを何百万台も販売し 今も整備をしている日本の仲間に先ず涙を流してください!】。さすがに1-3万円は改善しましたが、今でも商売とは言い難い額です。強者がその圧倒的力により弱者をコントロールする状態は変わっていません。日本にもディーラが存在しますが、かつて各ディーラーが専売車を有していた状態が、今は全てのディーラーが全てのトヨタ車を販売できることになっており、ディーラー間での競争も激化しています。半導体問題も加わりディーラーの置かれた環境も大きく変化していると感じます。減産傾向が続く中で値引きをせずにしっかり儲けるようトヨタはディーラーに指示しています。独禁法に抵触するのではと懸念します。値引き額(幅を)暗に指示しているからです。こうした夢を描けない状況下で、自動車整備士なりたい若者が激減しています。社会的使命を負った整備士の減少を国(国土交通省)も問題視しており対策を打ち出しています。

次に移動通信業界です。総務省の監督下にあります。昨年日本の巨人NTTがNTTドコモを完全子会社化したのをご存知と思います。この辺からです、強者による弱者イジメが始まったのは。景気が良い時代はキャリア各社が競ってキャリアショップ(ドコモはドコモショップ)を拡大して来ました。都会などでは電車2駅圏内に複数のショップが在ると言う状態を作りました。開設したのは代理店ですが、資金も含めてリードしたのはキャリアです。auとソフトバンクは早々に店舗縮小を行いました。多くの代理店が痛い目に遭っています。ドコモはナショナルブランドとして契約者保護のために店舗を維持して行くと思われましたが、NTTがTOBしてからは様相はガラッと変化しました。最初は真綿で首を絞めるがごとく、そして今は覇道(力で制する手法)により支配を強めています。日本を代表する巨大企業は王道(徳をもって制する)の経営理念を持って頂きたいです。【店舗最適化】という言葉の元に具体的目標値をもってドコモショップの整理を進めています。日本は資本主義自由経済ですからある程度の整理が行われても仕方がないとは思います。しかしその手法には倫理を無視した手法が行使されています。例えば成績を計る指標があり、達成すると一時的に収入が増えますが、次の瞬間大きく目標値が上げられ、未達成となり大幅に収入が減ります。いくら頑張って成果を挙げても利益が出ない状況が作られています。この負のスパイラルに入ってしまうと代理店はあっという間に疲弊して行きます。経営が成り立たず廃業する店舗や会社を譲渡する事例が顕著になっています。ここで確認しておかねばならぬのは【なぜ店舗数最適化か?】です。目的は代理店手数料原資の大幅削減です。ドコモは減益していますが、今でも巨額利益を出しています。NTTからの指示なのですが、その後ろには大黒幕がいるような気がします(大株主??国??)。代理店のみならずドコモの出世街道を歩いていた方々も消えてしまいました。代理店は最下位のランクを取ってしまうと、契約解除に向けて交渉を始めると言う丁寧語を用いた脅し文句が公式に通達されています。そのような状況下でドコモと代理店が育成したショップスタッフが頑張っても頑張っても目標値が上げられ、達成感を抱けないので離職するケースが増えています。まだまだ高齢者のスマホ弱者が多く存在する日本でこの状態は健全なのでしょうか。ドコモショップスタッフはよく教育された高スキル人財なのです。自動車整備士同様社会的必要性が高い人財なのです。ドコモショップの疲弊は、週刊誌文春が何度かスクープしています。情報源はドコモ内部からの告発であるようです。代理店には頼もしいです。

このように自動車業界も移動通信業界も、大企業の圧倒的力によって動かされて、底辺が疲弊すると言う共通点があります。底辺には多くの中小企業がいます。給与を上げ景気を回復させると国は言ってますが、中小企業では叶わないことです。国は全体構造にもっと視点を向ける必要があります。やはり行き着くところは政治なのでしょう。



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