PCCC(Devin Heroux)

今回の Devin Heroux の仕事で注目すべきは、世界カーリング連盟(WCF)が主催イベント(いわゆる世界大会)を「持続可能」にするためにアリーナ開催からクラブ開催への移行など「簡素化」を志向しており、その一環として今回のPCCCがある、という点ではないかと思う。
もっとも、それは現状うまくいっていない部分が多々ある、ということで、そのいくつかについて、関係者への取材に基づきクローズアップしてくれていると理解した。
この施策自体は「持続可能性の向上」おそらく、スポンサーやスタッフ、施設に恵まれない条件(の国や地域、時代)でもイベントを実現できるようなフォーマットを構築するという、WCFの長期計画の一環のようだ。(知らなかったのだが、今季はECCもクラブアイスで開催するらしい。)
私はてっきり、「カーリングが盛んとされる北米地域でも国際大会を今までのような規模で開催できなくなってきている」とか、「PCCCの位置づけが微妙で、盛り上がる要素が少ないとみられている」という事か?と想像していた。
が、実際はWCFが「意図的」に「簡素化」したという事のようなのだ。(もちろん竹田が想像したような要素や、そのほかの理由も一部あるのかもしれないが、今大会に関しては原則「意図的」なのだろうと見受けられる。)
これに対する我らがグッジューの指摘は「明らかに競技を後退させている」というもので、競技環境は満足できる水準ではないという。加えて、高い品質の映像が提供できない事を理由に、メディア(CBC)が競技をテレビ放送からウェブストリーミングに移行してしまったことを Heroux は重視している。
もっとも、これに対しては、かの Colin Hodgson が「悪い変化とは言い切れない。選択の自由が高まる利点がある。むしろ移行を促していく努力が重要。」といった意見を表明していて興味深い。
グッジューの指摘を改めて振り返ると、 『WCFの大会準備は十分ではない。会場には待機場所も男女別の更衣室もなく、ウォーミングアップは寒い屋外でするほかはない。プレーエリアも低温すぎ、通常のユニフォームでは十分ではないから、自分たちでインナーを買い足さねばならなかったほどだ。(続)
(続)そのような劣悪な競技環境しか提供できていないにも関わらずWCFは「インナーの色がルールに沿ってない」などと叱責する。本末転倒だ。怒りがある。』 という大意で、ルール(ドレスコード)に対するコメントというよりは、WCFの方針や大会準備が十分ではないことに対するコメントといえる。
(だから、ルール自体にフォーカスするのは少しずれている。これらはあくまでWCFの方針や大会準備に対する指摘への例示だろう。グッジューは「クラブやポランティアスタッフの責任ではなく、あくまで主催WCFの問題」と強調している。「インナーの色論争」にされては本意ではなかろうと思う。)
外的に見れば、これらはWCFの「挑戦」なのだろうと思う。合理性はなくはない。誤りであるとか失敗と断じる事は現時点ではできない。競技が発展途上の国や地域からすれば「簡素化モデル」の成功は、明るい材料かもしれないし、カーリングの真に国際的な普及や拡大に効果する可能性は十分あると思う。
しかし、今回WCFにこれが「挑戦」であるという認識があったか?そして「挑戦」にあたって、企画、シミュレーション、サポート体制等が十分だったか?については、疑念が残る。また、「今季」「カナダ開催の」「PCCCで」あえて「挑戦」した、という判断については、評価が分かれるのではないか。
2023 Nov02 09:31:10GMT

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