KGB(Koe編)

ケビン・クーイ(Kevin Koe)は1975年生まれ。KGBの最年長。カナダ先住民族(First Nations)にルーツを持つ。彼は少年時代をノースウェスト準州イエローナイフで過ごし、大学進学を機にカルガリー(アルバータ州)に出てきた。

クーイの持ち味は力強いテイクアウトショットだ。絶体絶命と思われる局面を、人間技とは思えないピンポイントのパワーショットで(しかも息を吐くように簡単に)打開してみせる。世界で最もカタルシスを感じるプレーを見せてくれるカーラーだ。(しかも繊細なドローもむちゃくちゃうまい)

スキンヘッドの強面で、ゲーム中は(終わった後も)短くボソボソ話すだけ。
ものすごいショットを決めても表情ひとつ変えない。ポケットに手を突っ込んで背中を丸めるのが癖。おそろしく静かな人物として知られる。下記ツイートは彼をきわめて的確に表している。

クーイが育ったノースウエスト準州は半分以上が北極圏に属するカナダ北限地帯に位置し、人口も人口密度もきわめて少ない(準州全体で4万人くらい。面積は日本の数倍。)。誤解を恐れずに言えば「辺境地域」だ。冬は完全に雪と氷に閉ざされて何もできない。カーリングはできる。

クーイは「ド田舎でカーリングしかせずに過ごしてきた少年が、ある日都会に出てきたら実は無茶苦茶すごかったッ!」という漫画的キャラクターで、例えていうなら漫画「ドラゴンボール」の孫悟空というところだ。(盛大に盛りました)

今や珍しいテイクバック(石を氷から持ち上げるスタイル)の使い手。デリバリーフォームも超独特。誰も真似できない。カーリングはすごい。コミュニケーションは取れない。
(※ 実際はシャイな仕事人という程度で奥さんと子どもを大事にするタイプです。相当盛ってます。念のため。)

余談だが、弟のジェイミー(Jamie Koe)と妹のケリー(Kerry Galusha)(※ 双子です。)がイエローナイフにいる。準州代表としてカナダ選手権の常連だ。(クーイ家は祖父の代からのカーリング一家なのです)
クーイはモリス(John Morris)、ケネディ(Marc Kennedy)らとのチームで2005カナダオリンピックトライアルのプレーオフまで勝ち上がり、注目されるようになった(※ 竹田に注目されるようになった)。

その後、ブレイク・マクドナルド(Blake MacDonald)、カーター・ライクロフト(Carter Rycroft)、ノーラン・ティッセン(Nolan Thiessen)とのスクワッドで長くプレーし、2010年にBrier初優勝(全カナダが泣いた)そして世界選手権優勝。

マクドナルド離脱後はサードにシモンズ(Pat Simmons)を迎え、2014年再び Brier優勝、世界選手権4位。しかし、彼はこの結果に満足できず、直後のオフに代表チームをひとり離脱し(スキップなのに!)新チームを結成(たまげましたね)。そして新チームで2016年 Brier優勝、世界選手権優勝。

2018平昌五輪カナダ代表の座を獲得。絶頂だ。しかし五輪の結果は4位。彼は本意ではなかったと思う。平昌後はニューフェルド弟(B. J. Neufeld)らと新チームを結成。2019年 Brier優勝、世界選手権2位。

書いていて思う。
ス ゴ す ぎ で し ょ う !

メンバー集める → スキップする → 優勝
10年この繰り返し。違うメンバーでBrierを4回勝つ。世界選手権を2回勝つ。そして何もしゃべらない。そんな人はどこにもいない。世界で彼だけだ。

昨シーズンのオフにはじまったチーム再編にあたっては、Bottcherのフロントエンド、マーティン(Karrick Martin)とティッセン(Bradley Thiessen)、そして2018 & 19世界ジュニア連覇のタルディ(Tyler Tardi)のラインナップで新チームを結成した。5回目のBreir制覇はあるのか?注目せざるを得ない。

(2023年3月1日ツイート)

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