Brier(Territorys編)

Brierはプレーオフ突入。もう4チームしか生き残っていないのがなんだか寂しい。PO1回戦は負けたら即敗退だからなぁ。厳しいフォーマットだ。
最後に準州("Territory")3チームに触れたい。ギリギリ間に合ってよかった。(どちらかというと間に合ってない)

ノースウエスト(NWT)、ユーコン、ヌナブトの準州3チームはあまり強くない。(カナダのトップレベルと比較しての話で、日本だと相当の強豪に相当します)
致し方ない面がある。人口も競技者数も少なすぎる。(3準州とも人口4万人ぐらい)

競技環境も良いとは言えない。カーリングが盛んな地域から距離が離れていて交通の便も悪い。競技会参加も一苦労だと思うし、そもそもツアーを転戦できるようなカーラーは極めてまれだ。

過去最高成績は初参加だった1975年。ユーコンのトゥワ(Donald Twa)が8勝3敗で準優勝(当時はラウンドロビンの成績のみで順位を決定)の旋風。優勝したノーザンオンタリオとのゲーム、延長13エンド(当時は12エンドマッチ)スチールを許し敗れたのが惜しかった。これに勝っていれば優勝だったから。

2014年まで準州全体で1チームの出場枠しか与えられていなかった。2015年から準州を含めた下位チームで予備戦を行うことになり出場の可能性があがった(※出られない可能性もできた)。2018年からは各準州に単独で代表枠が与えられ、以降、毎年代表チームをBrierに送り出しているが成績は振るわない。

ほぼほぼ最下位が指定席というところで、最近は1勝できるかどうか、というところにとどまっている。といっても、やられっぱなしというわけではなく2012年にはプレーオフに進出する快進撃を見せ、ファンを大いに沸かせた。(NWTのJamie Koe。Kevin Koeの弟。最終成績は4位)

今大会で、過去全敗だったヌナブトも初勝利を挙げた。2017年にNWTがGushueを、2019年にはユーコンがMcEwenを破る健闘を見せ、大いに沸いた(竹田が)。

https://www.cbc.ca/sports/olympics/winter/curling/brier-monday-brandon-recap-1.5042162

Brierでカーリングモンスターどもと戦うというのは、日本選手権で平民チームが実業団チームと戦う、というどころではない差がある。勝つこと、というか「それなりの」試合をすることすら極めて困難なミッションだ。

準州カーラーは、カナダのトップカーラーとは環境も技術も、仕事と競技とのバランスの取り方もかなり大きな差がある。しかし彼らは決して勝つことをあきらめてはいない。
勝利を目指し、クラブと地域の誇りをかけて懸命にプレーし、知恵と技術、チームワークを駆使して全てのゲームを戦い抜く。

相手の隙を突き、可能性のある形を作る。敗色濃厚でも打開する方法を探している。スコア的にも接戦の末敗れるというゲームが結構ある。結果として大差がつくゲームももちろんあるが、あくまで勝利を目指した結果だから仕方ない。彼らのプレーは、弱者が強者に立ち向かう術やマインドを教えてくれる。

いるんですよ、知り合いに。アルバータとかマニトバのツアーカーラーのゲームばかり見とる自称カーリングファンが!(しかも早送りしてサードの投石ぐらいから見やがる)
おい、聞いてるか?お前のことだよ!お前!!(おちつけ)

私に言わせりゃ、そんなファンタジー見て盛り上がってる暇があるんなら、お前はまず現実とユーコンのゲームを見ろと言いたい。
(スーパーショットの応酬を見るのも面白いですけどね)

まあ、そこまで言わなくともほとんどのチームにとって、準州チームの戦いぶりをしっかり観戦して、「弱者が持てる力を駆使して強者と戦う方法」を学ぶことのほうが得るものが大きいと思っているのは事実だ。

実際は配信対象になってない場合がほとんどで、ワイプでラストロックが映るくらい。たまにスイッチされてもスーパーショットのやられ役(カナダのメディアはNHKほど優しくはないのだ)。昔はアーカイブに試合がいくつか置いてあったが、今のアーカイブには全くないような気がする。女子はあります。

若干の例外はあるとはいえ、総体として、準州のチームを取り巻く状況はおおむね「絶望的」だ。しかし彼らは「どうしようもないくらい技術に差がある」とか「頑張ろうという意欲が湧いてこない」などといった泣き言は漏らさない。(試合が終わった後、バーで飲みながら言ってる可能性はあります)

私は今年も彼らの戦いぶりに注目している。同じ負けてばかりの立場だから親近感が半端ない。TSNやCurling Canadaは視聴率も大事だとは思うが、1個でもいいから準州がらみの配信をしてくれるようお願いしたい。

これを書くとちょっと「がっかり」する人もいるかもしれないが、準州代表チームはレジデンシールールのうち、出生地ルールを使っての出場や、適用外(フリーエージェンシー)の1選手を補強で入れている場合が多い。例えば、今回のヌナブト代表のスキップはサスカチュワン出身でオンタリオ在住。

もちろんこれは規定の範囲内で、各々が代表選考を勝ち抜き、何より各準州のカーラーがよしとしているのわけだから、部外者の私がコメントすることではない。

今回代表はNWTがおなじみクーイ弟(Jamie Koe)、ヌナブトが助っ人ヒッグス(Jake Higgs)、ユーコンが若手のスコフィン(Thomas Scoffin)で、彼は2012ユース五輪代表に選出されたユーコンの星。ア大卒。ボッチャーの後輩。

(2023年3月11日にツイート)

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