KGB(Bottcher編)

ブレンダン・ボッチャー(Brendan Michael Bottcher)はアルバータ州出身。1991年生まれでKGBの中では一番若い。若手の台頭を簡単に許さないカナダにおいて最も成功している存在だが、そろそろ追われる立場にもなってきた。
2012年の世界ジュニアを勝ったのち、アルバータ大学に進学した(工学部)。

そこでティッセン(Bradley Thiessen、理学部)、マーティン(Karrick Martin、経営学部。名選手Kevin Martinの息子だが、カーリングを始めたのは大学からという変わり種。アイスホッケーから転向。カナダのカゲトラさんだ。)らと出会い、2013年のユニバシアードに出場している。

彼は人気がない(言ってしまった)。彼のチームは「ボッチャー超特急(Bottcher Express)」と称されるが、これはかつて Pat Ryan が ”Ryan Express” と称されたのをもじったもので、必ずしも敬意を込められていない。(ほとんどの人は話について来れないでしょうが解説は割愛)

ざっくり言って、彼はリスクを冒さない(守備的な、つまらない)プレーをする、というイメージをカナダのカーリングファンに持たれている。(竹田目線だと必ずしもそうではないのだが…)

ボッチャーは2021年に Brierを初優勝したときも「1989年(3-2でパット・ライアンが勝利)以降、最もロースコアの決勝だった」(※ スコアは4-2)などと自称評論家どもから嫌味を言われた。(ゲームは面白かったですけどね)

ネットでディスられるたび、彼は自分の顔をコラした特急が疾走する動画(きかんしゃトーマスみたいな感じです)をSNSに上げ返す。ボッチャーは強メンタルのZ世代野郎なのだ。(※ 生年区分的にはY世代です)

「ボッチャーはガードが嫌いだからなー」などというツイートをエゴサで発見するや否や、「そうでもないよ~」というコメントと共に、ガード(自石)をランバックして大量得点した場面の動画をあげ返す。実に憎めない男だ。(そうかな?)

しかしこれらの批判は、将来カナダを背負って立つであろうボッチャーに対する期待の裏返しでもある。カナダのカーリングファンの目は厳しい。ただ勝つだけでは誰も満足してくれないのだ。

一方、別の理由で私はボッチャーをあまり好きではない。モウルディング(Darren Moulding)をクビにしたからだッ!(でた)いくら能力が高くとも、メンバーを切り捨てるタイプのスキップに私は厳しい。理由は割愛する。(根に持つタイプだね)

以下述べるのは、この10年くらいの間に形成された私のイメージにすぎないから、聞き流していただいて差し支えないのだが、ボッチャーは試合に負けたら、もう何も話さずそっとしておいて欲しいタイプらしいのだ。(SNSでは暴れん坊なのに!)

そんなナイーブな一面がある。インタビューで「あまり原因追及して、友達を責める結果になったらイヤじゃない?」などと弱気な表情で語っていた。ある意味イイやつなのだ。…でもなあ、ボッさん(※ Bottcher のことです)、そこがアンタの詰めの甘さにつながっているんじゃないのかい?

もちろん、ボッチャーもそれを自覚している。だからこそ2016-17シーズンにモウルディングをサードとしてスカウトした。モウルディングは熱く、うるさいタイプの男だ。(ウスイさんみたいな感じですかね?)うまくいかない原因を徹底的に追及する。嫌われても言うべきことは言うタイプなのだ。

モウルディングの加入で、ボッチャーのチームに欠けていたラスト・ピースが埋まり、18、19、20年と3年連続 Brier決勝に進出。そして21年…、ついに優勝の座を手にしたのである!(感涙)

しかし、世界選手権はPO敗退(5-6位相当)。彼はさらに人気を落とした。「つまらんカーリングしといて勝てもせんのか」と。カナダのカーリングファンはマジで厳しい。汚名返上に奮起するが、勝てない時期が続き…(※ 一度勝ってしまうと優勝以外は全部負けだから辛いよね)コロナ禍の影響も大きく…

そして、チームは突然モウルディングをクビにした。公式SNSは「彼は個人的理由でチームを離れる」とアナウンスしたのだが、モウルディングが「はぁ? ショートメッセージでクビって告げられたんだけど? 一体誰にとっての「個人的な理由」なのかな?」と応戦。エライことになったのだ。

その後、ボッチャーは沈黙、モウルディングもそれ以上は語らず。新しいチームでお互いに頑張っている。だから真実はわからない。しかし、カーリングファンは「何か」を察し… そしてボッチャーはいよいよ人気がなくなった!(以上、事実に基づき盛りました)

今期からケネディ(Marc Kennedy)、ギャラント(Brett Gallant)、へバート(Ben Hebert)との新チームでプレーする。でも「ボッチャー以外は全員好きなんだけどなぁ」と言われちゃう(あくまで一部からです)。本人はどこ吹く風。かわりにJohn Cullenがキレていた。(※ Inside Curlingの中の人です)

そういったプロレス的?な魅力もある。それに控えめに言ってもメンバーの戦闘力がすごすぎる。メダルを集めたら五輪・世界選手権だけで何枚になるんだろう?若手とベテランの融合という点でも魅力的だ。それを束ねるボッチャーにはカナダ男子カーリングの未来がかかっている。引き続き要注意だ。

蛇足ながら書かせてもらうと、彼のパートナーは結構年上だ。一緒にMDをプレーしたりしている。「へぇ、ボッチャーって年上好きなんだー。」などと言う方がいるかもしれないが、それは違う。ボッチャーは彼女を愛しているのであって、年上だから彼女を愛しているわけではなかろう。(竹田の見解です)

(2023年3月3日ツイート)

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