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ASOBIJOSの珍道中

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文筆家で尺八見習いの万里一空と、日本舞踊を習っている妻・MARCOによる、ドタバタ自給型ハネムーンの紀行文です。素っ頓狂で向こう見ずなアホ二人がカナダワーホリへ。果たして、無事に…
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#MARCO

ASOBIJOSの珍道中㉓:ウォークインドクターへ

 ”ほっ!うぁっ!なんで逃げるの……。”  とMARCOさん、ソファにちょこんと座って寝ている猫に忍び寄って、強引に抱きかかえようとするも、大慌てで逃げられてしまいます。  私たちが移り住んだユウタとサニー夫妻の家には、茶色い縞(しま)模様の入った猫のパンちゃんと、少し紫がかったグレーの斑(まだら)の、フィギーと呼ばれる猫がいました。”パンちゃん”は、まさにふわっと焼けた食パンみたいな色をしていて、”フィギー”は甘く熟したイチジクの実のような、濃い紫色の毛色で、どちらもやや警

ASOBIJOSの珍道中㉒:バンクーバーアイランドへ

 ”ねぇ、バスまだかなぁ”  ”乗り場8番って書いとったけん、大丈夫やろ、眠い…”  と、両手をスーツケースに置いて突っ伏して眠る私…。  ”もう時間なのに…”  ”遅れとんやろ…。”  と、ウトウトとしていると、”Airport! Airport!"と叫び声が後ろから…。  ”フランス語わかんねぇと、すぐコレだ。”  ”だからいったやん”  と、大慌てで、スーツケース2つと、バスキング(路上演奏)で車輪を壊して全く動かなくなった3つ目のスーツケースを必死にずりずりと押して進

ASOBIJOSの珍道中⑮:百花繚乱、オールドタウン

 ジャック=カルティエ広場は、幅の広いゆるやかな斜面で、たおやかなサンローラン川の流れを見下ろし、今日も世界中の観光客を乗せ、虹色の巨大洗濯機のごとく、ごったがえした夢の渦です。左右には赤、紺、緑の大きな天幕を広げたオープンテラスのレストランが並び、蝶ネクタイをした給仕たちが担ぐお盆の上には、黒や金に輝くビールが泡立ち、ワイングラスが重なり合う音が鳴り響きます。  ガラガラガラと、その斜面を転がり落ちるように、私たちの片輪の台車が右に左に、よっと、よっと、と危なげに揺れながら

ASOBIJOSの珍道中⑬:夏、賑わい盛りのモントリオールで路上芸人をば。

 ”ぬわぁっ。”  ”ぬわぁっ!”  ”うるさっ。”  ”寝言で起こされたんこっちやで。”  ”うわぁ、夢の中でも踊っとったわぁ。”  ”休みないねえ、Swallows。”  ”よっしゃあ、今日も行くかぁ、路上〜ぅぅう〜!”と、あくびを一つ。短い腕と背中をめい一杯伸ばして、MARCOさんのお目覚めです。  レストランでの仕事が夜中まであるため、私たちの起床はだいたい昼前の10時ごろ。カンカン照りの太陽に汗びっしょりになりながら目を覚ますのでした。  日本で使っていたASOB

ASOBIJOSの珍道中⑪:ようやくモントリオールにも春が

  コンクリートのビル群が並んだモントリオールの中心街の北側に、あまりに唐突に、近代フランスの香りがむんむんと立ち込める石造りの巨大な門が立ち現れまして、その門をくぐると、急に別世界のように、伸び伸びと育った樹木と芝が生い茂った一面の緑が広がります。その門からは広い舗装道がまっすぐと伸びていて、その左右のベンチに座った大学生たちのうたたねまじりの読書や、健気で不毛な色恋を、ふくふくとした花々の咲き乱れた花壇が縁取りを与えています。  カナダで最も長い歴史を持つ名門、マギル大学

ASOBIJOSの珍道中⑧:NY、7年ぶりに。

 ”もう二度と飛行機なんて…”とMARCOさんは相変わらず。  今度はニューヨークに下り立ちました。3月下旬のことです。2泊だけの予定で、今回の目的は、尺八でジャズの作曲や演奏をしているザック・ジンガー氏に会いにいくことでした。空港から地下鉄に乗り、予約していたソーホーエリアのホテルへ向かいます。  ”切符ってこれでいいんだっけ。”  ”なんか、うまくカード決済ができんのやけど〜”  などと、田舎モノのわたしたち。モタモタとやっていますと、  ”Sorry, we are i

ASOBIJOSの珍道中③:いよいよモントリオールに

”もう二度と飛行機なんて乗らねぇ”と、MARCOさんは相変わらず。  いよいよモントリオールに到着しました。2月の17日のことです。一つ驚いたことがありました。それは、既にコロナが終わっていたことです。アメリカの入国にはワクチン接種の証明書の提出を求められましたが、カナダの入国には何一つコロナに関連した手続きなどありませんでした。街中を歩いたって、マスクをつけている人なんてめったに見かけません。  到着した翌日に、この国の寒さを凌ぐためのコートやブーツなどを探しに中心街をぶら