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くまさんのお話



ある日

犬は散歩をしていました。



道をあるいていると


とても大きな森をみつけました。






「とってもたのしそう!」





犬はわくわくしながら

森へ入ることにしました。






森のせかいには



ことりさんやねこさん


うさぎさんやたぬきさん




たくさんのなかまたちが暮らしていました。









ちがうせかいで生きてきた犬さんも



きらきらと笑ってお話をしているお花さんも



知らないことばをきかせてくれるおおきな広葉樹さんも





手を取り合い

温め合って





森の中のせかいで楽しく過ごしていました。








犬はせかいの声を聴きながら歩きます。







「~があったんだよ!」


ことりさんが空でつぶやいています。










「僕は今日素敵なせかいを見つけたよ」











「ふふ、あなたキレイね」


お花さんがおはなししています。











「このせかいにはキレイが溢れているね」












「今日も森を守る」


広葉樹さんが意気込んでいます。









「いつもお疲れ様、そしてありがとう」









せかいとおはなしをしながら

犬は歩きつづけました。










「「「「あ!先生だ!」」」






森のなかまたちが一斉どこかへ向かいます。



「なんだろう?」





気になった犬は

森のなかまたちを追いかけることにしました。










けもの道をかき分けて


大木につまづいて



転んで立ち上がって





はしって



はしって





なかまたちの背中は

とっくに見えなくなっていて




どのくらい進んだかなんて

もう分からなくなっていて





いつの間にか森のせかいは

闇に呑まれてしまっていて




道なんて最初から

そこには無かったかのように





あたりは真っ暗になっていました。







この先にはもう誰もいないんじゃないか


この先にはもう何もないんじゃないか







「僕は」








犬が足を止めて空を見上げると




瞬くお星さまが

輝くお月さまが




犬のことをじっと見つめていました。







お星さまの声をきいて

お月さまの光が道を照らしてくれる。







「あぁ、僕は一人じゃない」









しばらく経って

暗闇の中から森のなかまたちの声がきこえてきました。



そして

なかまたちの真ん中には




空に輝くお月さまを

胸に大きく描いたような






だれよりもおおきくて


だれよりもつよくて


だれよりもうつくしい




お月さまのようなくまさんでした。










「かわいい犬さん、おかえりなさい」










「先生はずっと空で見ていたの?」








「ううん、ずっとじゃない


でも、わたしが顔を出しているときは見守ってる」













「先生はずっとここにいたの?」

 








「うん、わたしはここから動けないの

でも、みんながここへお話をしにきてくれる」














「じゃあ、僕がせかいを持ってくるよ」








「じゃあ、わたしは空で見守ってるね」









そして


せかいへ旅に出る








せかいの声を聴きながら

疲れたときは空を見上げて







今日もゆっくりと

せかいの切れ端を拾います。








そして



こころの中のくまさんが

今日もわたしへ話しかける。










「これ、とってもきれいだねぇ」







この世界に、哀福を。


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