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ゲームの先の「体験」 ヘクサタイルゲーム大会、参加記録記

1.不思議なゲーム会

「ヘクサタイルゲーム大会」という聴きなれない名前のゲーム大会にお邪魔することにした。

https://twipla.jp/events/522161

六角形タイルのゲームを集め、大会形式で勝敗を競うという催しだ。

プレイする作品は
アンブラデコ(くじらだま)
フジヤマクリエイト(ななつむ)
トラペーツ(アソビツクース)
の3種類。

六角形タイル、さらには、個人サークルの作品、と、何重にも縛りが設けられる中、どういった会となるのか興味が沸いた。
秋に向けた新刊本の制作も滞る最中ではあったが、早速申し込みを済ませ、当日、東京・中野のボードゲームカフェ&オムライスのお店kurumariへと向かった。


2時間前に到着

kurumariというお店では、先日も「そうめん食べ放題ゲーム会」など一風変わったイベントが催される。

これまでボードゲームカフェのイベントというと、「◯◯初心者会」「重量級ボードゲームで遊ぶ会」など、テーマとしてはわりとザックリしたものが多く、「ワーカープレイスメント」「軽量級」など制限を設ける中で何作かのボードゲームをチョイスし、プレイするゲームをその場の流れや人数などで(特定の作品をプレイする会など一部例外はあれど)その都度入れ替える、といった流れだ。

その中で一際目を引く今回のヘクサタイルゲーム会、「六角形タイル」の制限に加え、さらに「制作者が集まり説明」「大会形式」など幾重もの制限が加わる中で、運営の流れや会場全体の雰囲気、盛り上げ方、など、勉強になることがあるのではないか。

夕方の早い時間に到着し、ノートを広げながら頭に浮かんだことを逐次メモを取った。


2.プレイ開始!

時間となり、それぞれのゲームが展開される。
見たところ参加者はざっと12名ほどだっただろうか。中にはサイ企画のもんじろう氏や、natriumlamp gamesのPRA氏など、国内の有名ボードゲーム製作者の面々も集う。

簡単な趣旨の説明がアソビツクース様からあり、その後はゲームの説明、そして本大会となる。
今回のゲーム大会では、実際に製作者が集まり、制作者によるゲーム説明が展開された。3ゲームそれぞれの順位に応じ得点を競い、上位3位入賞者にはプレゼントもあるのだという。

正直に話すと、今回がテーマの3作品中2作品が未プレイだったため、事前の説明は非常にありがたかった。
周りを見ると、どうやら未経験者は自分だけではなかったらしく、ひとり安心する。

大会形式とはいえ、あまり勝敗にガツガツすることなく、基本は「周りと楽しみながらプレイする」会の趣旨を、言葉ではなく、笑顔の制作者やオーナーのuenoさんのトークなど、雰囲気ではあるが、何となく読み取った。


第1ゲーム目「フジヤマクリエイト」

(ゲーム詳細:ななつむ公式ブログより

https://nanatsumu.wixsite.com/website/フジヤマクリエイト

ななつむ制作、三角形タイルを個人ボードに並べるセットコレクションだ。

タイルは各々の山から取るものの、取ったタイルは両サイドの相手に手渡す仕組み。

両サイドから頂戴した2枚のタイルのどちらかを選択し、春夏秋冬それぞれ得点方法の分かれたタイルを配置する。選ばれたタイルは手駒の動物コマをプレゼント。こちらも同一スペースに種類を集めるとボーナスとなる。

最初に理解しなければならないことが多く少々複雑なルールに悪戦苦闘しつつも、プレゼントされる動物コマのボーナスに旨みを感じた自分は、自分よりも相手のボードに視線を移し、どんなタイルをプレゼントしようかと、自分のボードそっちのけで終始画策していた。

特に言及こそされはしなかったものの、自分の欲しいタイルは周りに話して回ってもよかったのだろうか。

両サイドからのナイスパス(タイル)に恵まれ、86点で2位。同卓の1位プレイヤーは100点代を叩き出す好成績だった。もっと上手いやり方があるのかもしれない。

在庫僅少ながらヨドバシ.comで発見。チェックするhttps://www.yodobashi.com/product/100000001006834620/


第2ゲーム「アンブラデコ」

(ゲーム詳細:ゲームマーケット公式ブログより

https://gamemarket.jp/game/179355)

くじらだま制作。ポルトガルの「アンブレラ・スカイ・プロジェクト」というお祭りが元となったタイル配置ゲーム。

色鮮やかな傘(アンブレラ)を六角形タイルに見立て、相手の傘(タイル)を押し退けながら、ラインや各色ボーナスなどの得点を稼ぐもの。

雨空に見立てた殺風景なタイルボードに、色鮮やかなタイルがポツポツと並ぶ様が実に目に映えた。

ルール上「同色タイルの隣接ができない」点も、この色映えに一躍買っていたことかと勝手に推測する。

周囲に5色目のタイルを配置することで高得点とはなるが、配置タイルの少ない序盤から積極的に稼げるポイントを見つける必要があり、それら高得点ポイントがしっかり発見できたプレイヤーが終始リードを保っていたように感じる。
有り体に話すと、タイルがある程度ならぶ後半頃から一気に巻き返そうと試みた自分は、最後までその差を埋められず最下位に終わった。

こちらも在庫僅少ながらヨドバシ.comで発見。チェックチェック。
https://www.yodobashi.com/product/100000001007064472/


第3ゲーム「トラペーツ」


(ゲーム詳細:ゲームマーケット公式ブログより
https://www.gamemarket.jp/game/178689)

2色のタイルを順に配置し、各色担当の色を7枚繋げた時点で勝利。周囲を囲むことができた場合、タイルを60度方向のどちらかにグルリと回す必要があり、静かだった盤面から一気にゲームが動きだす。
そんなギミックのため、アブストラクトながらかなりドラマチックな展開が楽しめる作品。

このボードゲームだけはゲームマーケット当日に予約購入するほど思い入れがあったため、これなら勝利できる!と期待したのも束の間。対戦相手は囲碁、将棋などの有段位者。アブストラクトなどお手のもの。
敵うはずも無い。

一斉にゲームは始まるも、後先を考えずに打った手が後々大きな傷となるため、一手の油断も許されない。とにかく相手のラインを切りながら、回転後の盤面も同時に見据え、慎重に手を進める。
案の定、というか、当たり前ではあるが、敵も「ここに打ってくれると勝てるんだけれど」と期待する箇所をどんどんと外す。

他のテーブルがとうに決着をつける中、最後の1タイルまで決着がつかず。
結果、タイブレークにまで持ち込んだものの、ラインの数が追いつかず惜敗を期す。いや、こちらの手が全て読まれていたとするならば惨敗とも呼ぶべきだったか。

こちらはアソビツクース様公式ブログから購入可能のようですね。リンクをペタリ。
https://asobytukoos.base.shop/items/54517301


2.4 成績発表、その後

3ゲームが終了し時刻は21時30分を回る時間。
総合成績が発表され、上位3人に記念品が贈呈された。一緒に参加側へと回ったお店のオーナーのuenoさんも辛くも4位入賞を果たした。
僕は……。上位入賞者の名前には呼ばれなかった、とだけ。

この日のトップは1、2、3ゲーム目とも常に上位をキープされる圧倒的な強さを見せた方だ。
記念品授与式の後は、お店の方から参加賞としてお菓子が用意された。
六角形にかけて「パイの実」を出すあたりのユーモアセンスの高さが憎い。

良いゲーム会には良い作品も自ずと集まるもの。
大会後はフリーとなり、各々でボードゲームを堪能し、卓を賑わせていた。

くじらだま様秋新作「コモレビパレード」、今回のアンブラデコに続くアフタヌーンシリーズの第2弾。
見た目の愛らしいタイルが並ぶ作品。続報に期待大です。


こちらはオブザーバーとして参加されたやぬきさん持参の「かりうち」
セネト(古代のゲーム)に、メンシュ(ドイツの伝統的ボードゲーム)を合わせた感じのすごろくに感じました。こちらもあとで機会があれば遊んでみたいです。

3 会を終えて(何を楽しむ?)

自宅が離れていることもあり、僕は周りより少し早めに退散した。

オムライスは注文し損ねました。

帰りしな、なぜ今回のイベントが楽しかったのか、の理由を、改めて考える。

遊ぶゲームや順番をきっちりと決め、大会というルールで流れを統制し、上位入賞を全員が目指すも、プレイ中は勝敗に度が過ぎるほどギスギスすることもなく、さらには国内制作者の作品をプレイできる。
なるほど、こういう催しイベントがあっても楽しい、面白い。
次回もイベントが開かれるならば、他の角度から切り取った別のイベントにも参加したい、と、率直に思った。

楽しさの理由の一つとして、知識を深掘りできた楽しさが挙げられる。

六角形タイルとゲームボードからスタートしながら、様々な切り口と、それぞれにまったく違う味わいができたことが、後になればとても不思議で、そして各創作者の持つ高い想像力を実感できる、終わってみればそんな会だったように感じた。

二つ目のヒントに、ふと、以前お邪魔した人気のボードゲーム会をふと思い出した。
その際、周りが皆「◯◯(主催者)さんと遊びたいから」参加に臨んだと口にしたことだ。

同じゲームやシナリオを堪能するにしても、会場や雰囲気、盛り上げ方など、企画「ならでは」の工夫が加わると、その体験に拍車をかけるのではないか。
それはボードゲームよりむしろ、人狼やマーダーミステリーの専門店がそれに近いように思える。

面白いゲームも、面白い企画も、そこにはゲームそのものの楽しさを上回る「ここでしか楽しめない面白さ」が土台にあってこそだ。
そのためには、「一緒に遊びたい」「のびのび楽しみたい」の点も頭に入れなくては、と、以前自分が企画し、ものの見事に失敗したゲーム会の苦い記憶を思い出した。
自分は未体験であるが、一度遊んだことのあるTRPGやマーダーミステリーなどのシナリオも、専門とするGMの元で体験できたならば、また違った楽しさが醸成されたのではないか。

全体を通じ、自分の中でひとつの結論にまとまった。
自分にとって今回のヘクサタイルゲーム会は、ゲームそのものの面白さを一歩踏み出した「ゲームを通じた体験」を味わった感覚に近い。

ゲームで遊ぶ、からさらに一歩進展した「体験の面白さ」
それはもちろん各種の制限される中で、ある種のまとまりがあったからこそ生み出された「体験したことで生み出される面白さ」ももちろんあるだろう。

しかしながら、今回は「勝敗形式」「ボードゲームの楽しめる場の提供」「アットホームな雰囲気」「理解ある店長」「呼応するように呼びかけるに集う制作者」などなど、幾重もの土台があって開催が成り立つものだと気がついた。
憶測ばかりで申し訳ないが、これがもし「ヘクサタイルゲーム『体験会』」として3作品をフリーで楽しめる会だったとしたら、また今回とは別の体験が生まれたのではないか。

お店の持つ「信頼」と、運営側の持つ人徳、高い見識、etc…。
どれを取っても自分にとって足りていないものばかり。
書き綴りながら、実に耳の痛い話となった。

「ボードゲームで遊びながら、何がどう面白かったのかを振り返る」
「そして楽しかった土壌には、それら信頼と知見の元に築かれる」

それは今後も自分に課す課題のようなものとして留めておきたいと誓った。

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