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買った本と、その理由 大崎コミシェル同人即売会、参加体験記


1.行く!と決めた

記念すべき100回が現在もまだ感染症禍での開催となった今夏のコミックマーケット。
「完全事前チケット制」「当日販売なし」など幾つもの理由が重なり、どうにも足が遠のき、結局今回も不参加を決めた僕。
それでも日々SNSに上がる同人誌即売会の情報。こうした即売会が「お祭り」と称されるのも、目にした誰かの元へと参加者の興奮が伝わるからだろうか。

自宅で通販を待つことも考えたが、ふと、今年もJR大崎駅にて「コミックシェルター公式同人誌即売会」(以下「大崎コミシェル」)が開催される旨のツイートが目に止まる。
同人誌も色々あるが、僕のお目当てはもっぱら情報系同人誌とデザイン同人誌だ。
14日開催の「おもしろ同人バザール」共催のイベントではまさにそれら本が並ぶという。
事前チケットもなし、入場料も無料。まさに「フラッと立ち寄れる軽い感じ」のイベントに見えた。
「お祭りへの参加は叶わない、けれど、その雰囲気だけでも」
そんな気持ちを胸に感染症に十分注意を払いながら、なけなしのお金を持ってお邪魔することにした。


8月14日、午後13時、
山手線品川駅の隣駅、JR大崎町、コミックシェルターに到着した。
台風の影響を鑑み、開始時間を1時間遅らせての開催となったが、到着した13時ごろは、すでに多くの来場者で混み合いを見せていた。
開けたアーケードの一角を利用し、人気作話題作の情報系同人誌が所狭しと並ぶ。
JR大崎駅はりんかい線の最寄駅ということもあり、コミックマーケット帰りと思しき参加者も多かった。
麦茶がサービスで飲めたり、冷汗スプレーを販売するなど、主催者の気遣いがとても温かい。

屋外を使用するだけに換気は言うことなし。参加サークルにマスクの着用を徹底されているようで、安心してぐるりと回ることができた。


2.お迎えできた作品

明日からまたおかゆ生活

当日の感想を綴る前に、本日お迎えすることができた同人誌を簡単に紹介したい。

てふや食堂様「てふや食堂のライスペーパー料理」
スープからサラダ、生春巻きで使う皮を使った料理のレシピ集。導入部に市販品の写真や水を使った戻し方まで詳細に掲載。圧倒的に読みやすく、デザインの勉強にもなります。

同じくてふや食堂様「ランチョンマット」
テーブルに敷くと、かわいい猫のキャラクターが料理を応援してくれるマットです。色もシックで、かつ丸洗いでき、実用性も十分。取扱注意の漫画も可愛らしく捨てるにはおこがましいです。

版元ひとり様「このご当地レトルトカレーがすごい!」
ご当地レトルトカレーの紹介とレビュー記事の本です。ド直球の定番商品よりも隠れた逸品が数多く紹介されたようで、山梨、北海道、と住んでいましたが初めて見るレトルトカレーばかりでした。取材記やインタビュー記事など読み応えたっぷりです。

食レポするよ様「だいすきかためのプリン 六」
市川〜東千葉のカフェで堪能できる「かためのプリン」を紹介、まとめた本です。歯ごたえからボリューム、立地や最寄駅など、実際に筆者の足と舌で綴ったボリュームたっぷりな記事からは、そこはかとなくプリンへの愛情が伝わってきました。

村咲くう様「キングオブアイス それすなわちバニラ」
コンビニやスーパーなどで市販されている「バニラアイス」、気軽に買える定番品からご褒美アイスの高級品、さらには百均アイススプーンのレビューまで盛りだくさん。アイスはたくさん褒め、スプーンはかなり率直なレビューが並ぶ、そのギャップと選球眼も楽しめました。

道草パレット様「名古屋コミティア遠征レポ」「関西コミティア遠征レポ」
参加会場周辺のお立ち寄りスポットや実際の設営、旅程、旅費に至るまで、愛らしい絵柄とともに綴られた本です。両イベントとも2022年、感染症ただ中のイベントがどう運営されたかも併せて読み取れました。


3.買った理由を分析する項

はてさて、事前情報をほぼ何も仕入れずに参加した自分が、どういった作品に魅了され、どのような作品を購入して回ったのか、自己分析と共に振り返ろうと思う。

3.1 応援しているサークルから買った

事前に集めた数少ない情報の中、「応援するサークル」が1サークルあることを確認できたことが、参加する一番のきっかけになったことは確かだ。
一つでも見聞きしたサークルが出展するならば、足を運んだ挙句に何の成果もなし、なんてことはないだろう、たとえ新刊が売り切れだったとしても、応援のご挨拶だけは済ませることが叶うはず。
そんな気持ちを胸に到着後最初に向かったサークルは、やっぱり普段から創作活動を応援しているサークルだった。
人気の新刊もさることながら、創作活動を応援したい気持ちが先に立ったのだろう。

3.2 過去作繋がりで買った

「過去の作品をどのようにアピールするか」などの話題は、ゲームマーケット出展者同士でも度々話題に上がる。
新刊を手に取る気持ちは何事にも変え難い、だからと言って以前の作品が劣るかといえば決してそうではない。サークルと参加者をつなぐきっかけは、新作よりむしろ「見聞きしたことのある旧作」にこそ潜んでいるのではないか。
事実、今回購入した作品の中には、「過去に別の場所(委託先等)で購入した、読んで面白かった本」が並んでおり、そのサークルの新刊を購入するに至ったのだ。

3.3 暑いから買った

風があったとはいえ気温は30度を超える暑い1日。アイスの本、スイーツの本など、涼しげな本はその雰囲気だけで目に止まった。どの本も著者に「レビューの本ですか?」と確認し、ほぼ中身を見ずに買ったものばかりだ。
暑い日には涼しげなテーマの本が目に留まる、それは先の時期の販売を見越した本ならば、当日の雰囲気を察知して展開する必要がある。
雨の日に傘を売るような、適材適所、ということだろうか。

3.4 積んであったから買った

これに関し異論は多々あるかと思う。けれど、それが決め手で買った本があるのだからしょうがない。
参加した時間が開始直後から数時間後、少し出遅れたかな、という気持ちもあり、机の上にたくさん並べられた本には目が行った。SNSで完売となった新刊がまだ購入できることへの嬉しさもあったかとは思う。
とはいえ「在庫僅少」だったら買わなかったか、というわけでもなく、要は、SNSでちょくちょく目にする「小手先の売れるテクニック」はさほど気にしないほうが良いのだろう。

3.5 変わった表紙の本だったから買った

これは2周目を回る際に「買い逃しはないか、そういえば●●に売っていた、あの本が気になる、まだ買えるようなら買っていこう」と、印象に残ってくれるものを購入した、という意味だ。印象に残っていたならば、2度目に回る際の足がかりとなって活躍する。
SNSでの情報を仕入れないまま現地へ出向き、こうした本との不思議な出会いこそイベントの醍醐味、と話す方もいらっしゃった。

3.6 雰囲気で買った

ここからは、イベント全体の雰囲気と、購入する先での短いやり取りの中で感じた知見から、感じたことを綴ろうと思う。

3.6.1 イベント全体の雰囲気を知らずに読んでいる

先の麦茶やラムネといった各種サービスなど、会場全体がアットホームな雰囲気でとても居心地が良かった。今回はハッピをまとったスタッフの方も笑顔で対応される姿を目にできた。イベントの雰囲気がギスギスせずふんわり包まれているように感じた。それは何かのサインがあったわけではなく、自ずと肌身で空気を読んでいたからにすぎない。

3.6.2 売り子の表情はマスク越しに伝わる

もちろん自分にも跳ね返ってくることではあるけれど、マスクで口元が塞がれていようとも、笑顔、その逆のムッとした表情は、目線を含む表情でちゃんと伝わるもの。疲労がある中で笑顔を絶やさないサークル様には本当に頭が上がらない。

3.6.3 迷うな。買え。

一期一会、というより、一瞬を見逃すと次に気持ちが変化してしまう。これだけ誘惑の多い環境だからだろうか。脳内で「これは」と思った作品はすぐに判断しなければ買いそびれてしまう。後にも記述するが、無意識下で多少の焦りもあったのではないかと画策する。

4. 最後は応援したい気持ち

「ゲームマーケット含むイベント来場者は、(名前がわかるよう)全員名札をつけてほしい」、はあまりに極端だが、普段から楽しいツイートを拝見するサークルの方には、自ら名前を名乗らずとも「Twitter見てます」とだけでも伝えたい、参加する側の立場となり、その気持ちがより強く芽生えた。
実際に、上に挙げた購入品のほとんどが「表紙をサッと眺め、中身は見ないか、またはチラ見しただけ」で購入したものがほとんどだ。

それはもちろん同人誌即売会など時間に制約がある中で、話題作や新刊などが完売したりなどを心配する旨の、ある種の「焦り」が生じたことも多少は影響する。
しかしながら、こと自分に限っては、創作として本当に不遇な最中でも、手を動かし、自分の言葉で綴り、それら努力を通じて本として一つの創作を完成させることができた、その気持ちを応援したかったのだ、と振り返った。

理不尽極まりない状況に、愚痴や不安をつぶやきつつ、それでも応援の言葉を背にひたすら手を動かす、応援する側の立場として、創作者のそんな気持ちが嬉しかったのかもしれない。
言葉にするのは難しいけれど、それが人情というものだろう。

気がつけばゲームマーケット2022秋当日まであと76日(8月14日現在)
夏真っ盛りの中で頂戴できた創作のエネルギーを元に、愛され、親しまれる、そんな作品と運営を目指そうと誓った。

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