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3:35~4:18までが自分のパートです。

原曲

ゆらゆら帝国で考え中 / ゆらゆら帝国

中学生の頃、日本の同人音楽シーンのCDを買い漁ることから始まった私の音楽趣味は、「歌の無い曲が好き」という立場をある種の指針として邁進していました。その頃はJ-CORE、ゲーム音楽、電気グルーヴの影響で好きになったアシッドハウス、音MADに使われる曲などが自分にとっての音楽全体で、エレクトロニックな何かで構成される速い音楽にしか興味がありませんでした。t+pazolite - Kick-ass Kung-fu Carnivalがこの世で一番好きな曲でした。

このあまりにもオタクすぎる状況に風穴を開けたのがゆらゆら帝国でした。ファーストコンタクトは高校の軽音楽部の友達がいきなり聞かせてきた『ゆらゆら帝国で考え中』だったことを未だに覚えています。しかし、衝撃的な出会いだったから覚えている訳ではなく、その時は何とも思わなかったことが逆に記憶に残っています。まだギターという楽器が鳴る音楽に自分の好きなものがあると信用していなかった。その場ではバンド名をちゃんと覚えることも曲名を把握することもなく、聞く音楽に何の変化も起こりませんでした。

時期は定かではありませんが、ファーストコンタクトからそう時間を空けず、Twitterで #私を構成する9枚 の流行があり、音MAD作者の中でも画像や文章を投稿している方がちょこちょこいました。その頃の私は、多大な憧れに導かれる形で、音MAD作者のパーソナリティを追うのが好きだったので、色々な人の音楽遍歴に目を通すことになります。その中の一人の1枚に、ゆらゆら帝国の『3x3x3』がありました。アルバムに沿えられていた選者の私的な紹介文の内容が好きだったことと、そういえば前に聞いたことがあるかもしれないという薄らとした記憶が偶然重なり、その足でYouTubeの検索欄に「ゆらゆら帝国」と打ち込むことになりました。

当時は公式の音源ではなく、1stシングルのジャケットで投稿された非公式の動画で聞いたことを覚えています。めちゃくちゃカッコ良かった!!月並みな表現ですが、完全にブッ飛ばされた。流れるように他の曲も聞いていき、ズックにロック、ラメのパンタロン、夜行性の生き物3匹、冷たいギフトなど好きな曲が沢山増えました。自分の意志で初めて買った同人CD以外のCDがゆらゆら帝国のアルバムだと思います。ライブ盤の『な・ま・し・び・れ・な・ま・め・ま・い』の轟音は未だに私の人生の支柱になっています。

その後、ゆらゆら帝国によって開いた穴に、エレクトロニックに縛られない色々な音楽が入っていくことになります。自分と音楽の関係を最初に変えたのはKick-ass Kung-fu Carnivalですが、ギアをもう一段階上げたのは明らかにゆらゆら帝国です。坂本慎太郎がインタビューで「歌をやりたい」と答えていたのを読んで、「歌」を意識して聞くようになりました。「歌の無い曲が好き」という基盤に、色々な歌を積み重ねていくことができたのは僥倖だったのではないかと思います。私の一番好きなバンドはゆらゆら帝国です。

素材

アキバ冥途戦争、仁義なき戦いシリーズ、ダイナマイトどんどん

「物事をフラットに見る」ことを是としていた私は、何らかの事物に接する時も単一の意識で解釈することを心掛けていました。たとえば、女児アニメと時代劇を見る時の心を同じにしようとしたり、ある食べ物が好きな理由とある映画が好きな理由を同じ感覚にまとめようとしたりしていました。まだ統一的な感覚は構築している途中ですが、いまのところ「乾いている」感じが、私が好きなものに共通する要素だと言えそうです。あとは「ギャグ」も入りそうかなと思っていますが、付随する背景が多い言葉なので自分の感覚に落とし込むのが難しいなと思っています。

アキバ冥途戦争は、アニメを観ることから遠ざかっていた自分が最近一番ハマったアニメです。SHIROBAKO以来にBlu-rayを買いました。ティザーPVの「そのうち放送開始」という投げやりな文言の時点で注目はしていたのですが、当時はアニメを観る気力がほとんど無かったので、リアルタイムでは観ていませんでした。今年の夏にようやく視聴し、すごく好きになりました。ギャグを軸にメイドと任侠を同居させた上で真剣に生命や関係の問題に取り組んでいく作品の感覚が、自分、ないしはこれまで積み上げてきた自分の感覚もろとも強烈に後押ししてくれたように感じたのを覚えています。監督がインタビューで「反戦アニメ」と説明するようなとても大きなベクトルを持っていることも、自分にはすごく響いている作品です。

仁義なき戦いシリーズは、たぶん好きな映画だろうなとは思いつつ、一作目だけしか観たことがありませんでした。アキバ冥途戦争を観た後に、大きな関係がある作品だろうし一作目からちゃんと観てみようと思い、観ました。西部劇や時代劇が纏っている乾いた感じと様式美に基づいた作劇や表現が元々好きだったので、似た空気感のヤクザ映画も好きだろうと思っていたのですが、実際にすごく好きな映画でした。強烈な広島弁による迫力ある言葉や荒々しく揺れる画面はもちろん印象的でしたが、自分が予想していなかったのは、抗争による死に対する無常感が作品を通してずっと語られることです。笠原脚本の最終作である第4作の『頂上作戦』のラストは、「何ら実りなき終焉を迎え、ヤクザ集団の暴力は市民社会の秩序の中に埋没していったのである」とナレーションで語られた後、「人間を暴力に駆り立てる様々な社会矛盾は決して消え去った訳ではない」ことを観客に留意させて完結します。2作目の『広島死闘編』のラストでも、主人公・山中の死が英雄視される状況と対比して、山中の墓を訪れる者が誰もいないことを強調します。このような無常感や無力感が作品全体を通して埋め込まれているとは考えていなかったので、大きな衝撃を受けました。

仁義なき戦いシリーズに貫かれる抗争を無益なものとする姿勢と、アキバ冥途戦争でなごみが目指したものは、形は違いますが似ている部分があると感じています。他方で、ブッ飛んだ「ギャグ」で物語が推進していく感じも両方の作品に共通している部分だと思います。今回の合作では自分が感じた両作品に共通するメッセージを具体化することを目指し、あのような両方を混在させたパートを作ることになりました。ざっくり言って、前半がギャグで、後半が無常感です。中盤のダイナマイトどんどんについては、前半よりあからさまなギャグという感じです。ダイナマイトどんどんは九州のヤクザが野球で抗争のケリを付ける強烈な映画で、アキバ冥途戦争 #8の元ネタともいえます。それまでのヤクザ映画を全部フリに使っているムチャクチャな映画なので、体感的には仁義よりこちらの方がアキバ冥途戦争に近い気がしています。あからさまに楽しいパートも入れたいなと思って、飛び道具としてダイナマイトどんどんも使うことに決めました。

以上が今回の3つの素材を選んだ理由です。自分が心から好きな素材で、好きな音像で、好きな展開を作れたので良かったかなと思っています。

筆文字

『仁義なき戦い』も含めて昭和の邦画が好きな理由の一つに、題字のカッコ良さがあります。自分が好きな赤色の鋭い筆文字を使いたいと思ったので、筆ペンを買ってきてスケッチブックに文字を書きまくりました。前半で使ったアキバ冥途戦争・仁義なき戦いのセリフ群から文字を抽出して書きまくりました。多いです。

1999年・広能昌三・17才・十七歳・姉妹・契・啜・盃・腕・切・血
啜・所詮・獣
姉・お姉ちゃん・頂戴
病・豚・相手・表
表・アキバビッグバン
アキバビッグバン・秋葉
秋葉・大爆発
大爆発
道・違
年・歳・才
年・死
死・外道
外道・枯木・山・賑・店
店・舐・使い捨て・ナメ・他人
今日・他人・生・殺
殺・いってらっしゃいませ・広能
広能昌三・17・十七・盃・違
店・枯・死・他人・ナメんな・生・殺

「殺」とか「死」をたくさん書けたのが楽しかったです。でも一番好きなのは「歳」。

スキャンして一文字ずつに分解した後、Aviutl側で白・黒・赤に色を絞って映像にベタベタと重ねていきました。無茶苦茶な画面になったので良かったです。ちなみに後ろの映像も仁義とアキバを重ねまくっているのですが、何をどう重ねているのか自分でももうよくわからないです。筆ペンで文字を書くのはすごく楽しかったので、今後も機会があれば使っていきたいですね。

終わりです!楽しかった!ありがとうございました!

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