思考のねぐら

思考のねぐら

まいにち
思考を散歩させている

思考にもねぐらがあって
だいたい似たようなところを出発し
似たようなところに帰ってくることが多い
思考にも
地域性があるようである

だれかの力を借りて
いつもとは違う場所から始めてみる
生活者の訛りが匂う住宅地
名前のない道をあるく訪問者

ああ
ここは知っている
名前は思い出せずとも
再会だとわかるのは
なぜだろう

曲がりくねった
いびつな坂に
連なるビルの死角
近くても
無自覚

否認
否認
否認

コンビニでお釣りを渡す手
満員電車のドアをふさぐ尻
エレベーターの階数表示にあつまる目

無視
無視
無視

どこからみても他人
集団かつ孤独

薄闇色の森林
コンクリートの血流にのって
代謝するわたし

気がつくとドアがある
開け方を知ってる
鍵もある

指先で探り当てるスイッチ
天井の照明が光を吐く
飲み残したマグカップ
湿気にすがる
洗濯物

帰らなくともよいものを
訪問者はまた服を脱ぐ

ここがどうやら
思考のねぐら

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