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バスルームの扉

旅に出ようかというときの躊躇と、風呂に入ろうかというときの躊躇には、似たものがあるでしょうか。

わたしは、風呂は、いつでも入りたいです。好きだし、抵抗はありません。でも、めんどくさいときもあります。眠いときです。あと、おなかがいっぱいのときです。それ以外のときは、だいたい風呂に入るのに抵抗ありません。あ、でも、風呂を出たばっかりで、汗をかききってふやけてるときも、しばらく入りたくないと思います。

旅に出るには、ほんのちょっとの勇気が要ることがありますね。その旅の素敵さときたら、かならずや旅に出たことを祝福し、はじめの一歩を踏み出した勇気を誉めたたえたくなるようなものに違いないのでしょうけれど、それでいてぬるま湯につかったままの心地よさときたら、たまらないのです。

湯から出る際のヒヤッとした感覚が、一体どれほど嫌なのでしょうか。実際、嫌ですけれど、ほんの一瞬で、すぐ慣れてしまうのは目に見えています。 ……いえ、湯気で見えていないのかもしれませんね。だから、最初の一歩はおっくうなのです。湯気さえなけりゃ、なんでもないのでしょう。ちょっと換気扇があるとか、うちわで吹き飛ばしてくれるだれかがいるとか、そうしたちょっとしたアシストひとつで、旅に踏み出る最初の一歩は、簡単になります。

旅に出ても、ゆずれない毎日のことは、持っていたいですね。わたしの場合は、どこへどんな旅に出ようとも、毎日何かしらの楽器をさわって、毎日何かしらの曲を歌っていたい……たとえ、宴の席を中座してでも、です。

世にも美しい光景だとか、遠く離れた地の人の輪に見出せるわたしの郷との共通点とか……そういったものを見つける旅もいいですね。

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