ばんどう通信(号外)スタッフ教育も料理と同じ 素材によって調理手順を変える
こんにちは、ばんどうです。
最近は料理に向き合う時間が大きく取れるようになってきました。
というのも、ここ一年くらいスタッフ関連のことを考えるのに時間を取られていたのがありました。
私の特性として
・思い通りにいかないことにぶつかったら、改善策・解決策を考えてしまう
・それも、その特定の「思い通りにいかないこと」一回を解決するのではなく一般化・抽象化した上で普遍的な解決策を考えてしまう
という癖がありまして、なかなかそこに時間を取られてしまっていたのです。
アルバイトの採用計画がスタートしてから10ヶ月が経ち、なんとなく自分の中で自店の採用・育成に関する方針が固まってきたのともうすぐ新一年生の募集を始めるにあたって、その辺りのことを自分自身への覚書を兼ねてここにまとめます。
アルバイトを社員並みの戦力に育てる
私の考えとして、アルバイトだろうと社員だろうと「良いスタッフ人は良いスタッフ」だし「ダメな奴はダメ」と思っています。
その上で、うちの規模だと社員を採用する場合1人しか採用できず、「ダメな奴だった時挽回ができない」「優秀だとしてもその人1人にお店のクオリティを依存することになるのはリスク」でしかないと考えているため「恒常的にアルバイトが他所の社員並みの能力を持つサービススタッフに育つような仕組み造りができればそれより強いことはない」と言う判断をしています。
また、人間の特性として「自分の周りの環境の平均になる」と言うものがあるため「この職場ではこれが当たり前なんだ」を構築することができれば、構築後の教育フローはさほど負担が重たくない、と考えたこともあります。
(社員の場合1人しか枠が取れないので、その人がやめた後はまたゼロから「環境」を作らないといけなくなってしまうので毎回負荷が重い)
採用してはいけない人がいる
しかしアルバイトという雇用形態において、人を根本から育成し直すことは不可能です。社員であったり師弟関係であれば突っ込めることも、アルバイトくらいの関係性であると強く指導した際には殆どの場合「辞めます」という反応しか返ってきません。
めちゃくちゃ大雑把に採用方針を言うと
「能力の高低ではなく、善悪によって採用の可否を決める」
「ただし忍耐力だけはいる」
なので、下記の人は採用してはいけない、または採用したとしても速やかに退職してもらう必要があります。
具体的に見ていきましょう。
・悪意のある人
これに関しては当たり前ですね
・ギヴァー、マッチャー、テイカー、のうちの「テイカー」
テイカー=「もらうのは当然として受け取るけど人に返すのは嫌」という人がいると、報奨制度や待遇・福利厚生などをどんなに良くしても何の意味もありません。ただただ「もらうのが当然」の範囲が広がっていくだけ。
言い換えると「感謝する心が薄い人」とも言えます。
・ストレス耐性の低すぎる人
うちの場合それなりの単価を頂くお店であるため、大学生が「いきなり即戦力」なんてことはまずありません。少なからず指導する必要があり、必要な指導に耐えられる程度のストレス耐性は必須となります。
・食べ物の好き嫌いが多すぎる人(アレルギーは除く)
うちの職場環境としての大きなアドバンテージとなりうるのが「まかない」なんですが、これが好き嫌いが多く、たとえば「ハンバーグとかオムライスみたいな子供が好きなものしか食べられません」という人にとってはまかないは「お腹がいっぱいになるもの」でしかありません。うちが提供できる価値が伝達ロスしているようなもので、福利厚生としての価値が本人にとっては低い。
また、そういう人であると料理に対する関心が高くなりづらく、「美味しいものを提供してお客様に感動してもらおう」というミッションが共有しづらいので基本的には見送ります。食べることが好きで、食に対する関心が高いと高評価です。
採用してはいけない人」に辞めてもらうための特殊ルール
下記ルールは面接時に伝えます。
・挨拶・雑談がきちんとできない場合、研修期間が一生終わらない
「今の若い子は」という言い方はあまりしたくありませんが、挨拶雑談ができない子は一定数います。また、プライバシーだとかハラスメントだとかで「立場の上のものからの雑談が憚られる」風潮もありますが、挨拶と雑談は非常に重要であると位置付けています。
「君たちのプライベートだとか恋人がいるかだとか正直こっちも興味ない。ただ、それでもあえて聞くのは『雑談することそのものが<私はあなたと良好な関係性を、少なくとも仕事を円滑に進められる程度には築く意思がありますよ>という意思表明』に他ならないから。聞かれたくないことがあるなら自分でうまく話題を振りなさい」と。
挨拶・雑談は社会に出てお金を受け取る仕事をする者の必須スキルであり、それができないのは社会人以前なので本契約をするに値しない=一生研修期間のまま、という理屈ですね。
・警告3度で即解雇
「心無い仕事・悪意を伴う行為」をした場合、「警告」を出します。3度目の警告が出た瞬間解雇します。「その日」ではなく「その瞬間」で終了です。おそらく不当解雇に該当するので裁判してもらったらそちらが勝つと思いますが、それを踏まえた上で絶対にクビにします」
という割と重ためなルールがあります。「心無い仕事」というのは「知識が不足している」「技術が至らない」「不注意」は含みません。
「四角いテーブルを丸く拭いたら四隅は汚いままだよね。それは18年生きてきたら普通に誰でもわかることだよね」とか「業務上の報告で嘘をつく」とかですね。
現状、3度目の警告に至ったスタッフは今のところいません。
採用後のコミュニケーション指針を決める分類法
WHAT指向型かWHO指向型か
スタッフに教育をしていくにあたってのステップ1ですが、これは「信頼してもらうこと」です。そしてこれは私の体感での指標ですが、世の人はWhat指向かWho指向かに大きく2分できると思ってます。比率的には日本全体でWhat:Whoが2:8くらい、東京に関してはその比率が逆、名古屋みたいな地方都市はその中間、という感じでしょうか。
どういう分類かというと価値観において「重視するものの偏り」です。
遊びの予定を立てる際に
「AさんBさん遊びに行こう」と「人=Who」がまず確定し、その後「じゃあ何しよう」と人ありきで遊びの予定が決まり中身はなんでもいいタイプ。
「新しくできたテーマパークに行く人〜」と「目的=What」がまず確定し、その後に「誰か行く人いる?」と人が決まるパターンのタイプ。
相手がどちらのタイプかによって、信頼関係の構築方法が大きく異なります。
ちなみに、このwhat型、who型と言う話は以前日本に数社しかない種麹屋さんの社長さんがヒアリングして記事にしてくれたものに詳しいのでそちらもよければご覧ください。
Who型への信頼構築
信頼関係の構築法、と言っておきながら矛盾するようですが、このタイプに対してはざっくりいうとその人にとっての「信頼できる誰か」になることです。
具体的には
一つ目「うちに在籍し続ける限り、私はあなたの味方です。ミスや能力の至らなさによってあなたの人格を毀損することはありません」という姿勢を示し続けること。
二つ目、(能力や結果ではなく)努力や頑張りに対して、きちんと労うこと。
三つ目は「その人にとってクリティカルな部分を具体的かつ的確に褒めること」。「仕事できるね」は抽象的すぎてだめ。仕事遅い人に「早いね」も的確じゃないのでだめ。「グラスの拭き方覚えるの、今期入ったスタッフの中で一番早いよね」みたいに具体的かつ的確に褒める必要があります。
このタイプは、信頼関係の構築ができると「○○さんのためならなんでもやります!」という熱意をめちゃくちゃ見せてくれるようになります。
What型へ信頼構築
これもまた矛盾しますが、What型に対して信頼構築は正直あんまり重要じゃありません。それよりも関係構築初期において重要なのは
「正しいこと・筋の通ったことを言うこと」「筋の通らないことを言わないこと」
です。基本的にこのタイプは「その人そのものを尊敬する」と言うリスペクトの仕方をあまりしないというか「その人の出した結果を尊敬する」「言動を尊敬する(ちなみにですがこのタイプ相手に言行不一致は絶対にしてはいけません)」みたいなタイプなので信頼構築は初手ではなく中盤以降に「勝手に信頼されてる」みたいな状況になり、そしてそれが理想です。
間違えると
what型、Who型を間違えてコミュニケーション構築を始めると基本的には「私のことをわかってくれない」と信頼関係を構築できず、当たり前ではありますがその後の教育や指導が全く響かなくなります。
input outputの偏り
信頼関係を構築したら、ようやく本格的な教育に入れるのですがその際に重要となるのがもう一つの分類。ここまでのコミュニケーションを重ねながら見極めるしか無いんですが、これも私の主観でしかありませんが大体の人がインプットとアウトプットの方法にロジックを多めに使っているのか感覚を多めに使っているのか、偏りがあると思っています。基本的にはほとんどの人が
ロジックin ロジックout
感覚in 感覚out
のいずれかで、1〜2割くらいのマイノリティとして
ロジックin 感覚out
感覚in ロジックout
とインプットアウトプットの間に「ねじれ」がある人がいます。(繰り返しますがあくまで体感)
基本的にアウト側はその人の喋り方で露骨に偏っていることが多いので割と見分けがつきやすいのですが、イン側はよくよく観察しながらコミュニケーションしていないと見分けにくいことが多いです。「ねじれ」タイプがマイノリティなだけに「論理的に話す子だから論理的に伝えたら伝わるだろう」と安易に考えてしまいやすい、という落とし穴ですね。
ちなみに、指を組むとどちらが上か、腕を組むとどちらが上か、でインとアウトの右脳左脳がわかる、みたいな俗説ありますが私はあれ全く当てにならないと思ってます。
ロジックin ロジックout
基本的にこのタイプは「見て覚えろ」が苦手です。そして何かの習得には「理解」を必要とします。なので教える際には原理原則や本質・きそからきちんと論理立てて説明したほうが覚えがよいです。また、口頭よりも文字情報で伝達する方が理解しやすいことが多いので、一度ペーパーマニュアル、というかもう少し抽象度の高い「クレド・行動指針」のようなものを作って渡しておくと勝手に習得してくれます。
ただ、先にも書きましたが「理解してから習得」がセットになっているというかこの順番が不可逆であることが多いので新しいことを覚えるのは早くなかったりします。
ただ、理解を伴って習得をしているので一度仕事を覚えると応用が効く、アレンジができる、というタイプが多い気がします。
ちなみに私は多分このタイプです。
感覚in 感覚out
先と真逆で「見て覚える・やって覚える」が得意というか逆に言葉や文字で説明されても「結局は何?」となることが多いタイプです。習得に必要なのは「実践」ですね。
技術習得はめちゃくちゃ早いですが、「過去に実践したことしかできない」ことが多いというかアレンジやそこから発展した仕事を自分から創り出すのは苦手な印象です。
教えたり指示をしたりするときは、話を長くすればするほど逆効果です。
信頼関係を構築さえできていれば「これをやれ」で充分、というかそれがベストです。
私の妻はコレですね。
ロジックin 感覚out
もう一つのタイプもそうなのですが「ねじれ」タイプの特徴として「感覚にねじれがあることに自覚がない」ことが多いです。「自覚がない」というのは「現在地のわからないカーナビ」みたいなものなので、行きたい場所に辿り着けないというか「仕事のクオリティが日によってブレやすい」です。そしてマイノリティであることも合わさり、生きづらさを感じやすいとも言えます。まずはそこを自覚させることが第一ステップかと。
このタイプはいわゆるブレはあるものの「しごでき」になりやすいタイプで、論理でインして感覚でアウトする=人生において「文字情報を実際の行動や身体感覚に置き換える」作業を恒常的にし続けているタイプと言えるので仕事を覚えるのはめちゃくちゃ早いです。
ただ、論理in論理outと同様に習得に「理解」は必須です。
教える側の注意点としては「めちゃくちゃ器用そうに見えるので、丁寧な指導や理解を促す教えをすっ飛ばして指示だけ出してしまう」ことをしてしまいがちなので、基本的には前情報としての「論理・基礎」は提示し続けるべきです。
あと、人に何かを教えるのは死ぬほど下手であることが多いので後輩の指導に当たらせる際は注意が必要です。
感覚in ロジックout
私個人としてはこのタイプの部下が一番相性が悪い、というか今のところ対応を確立しきれていないところがあります。
このタイプの場合「習得に必要なのは理解」と本人が自己認識をしている場合がありますが、実際の場合「習得に理解は不要」で「必須なのは納得」です。
「理解をしてても納得できなければやりたくない」「厳密には理解をしていなくても納得できれば(本人的にはそれを理解と自認していることがある)やる」という感じで習得が「できるかできないか」ではなく「したいかしたくないか」が強く影響します。
なので指示を出したり教育をしたりする場合、
・ある程度、理由・目的や本質などを伝える必要がある
・ただし、それが論理的な説明の仕方だと「理解」には至っていないことが多い
・だからと言ってその工程を飛ばすと「納得」が得られないので前ふりは必須
・論理inタイプと違い、それだけだと「話はわかるけど、それでどうしたらいいかわからない」となるので、上記前振りをきちんとした上で「端的かつ具体的な(数値化できると尚良い)行動」として指示を出す
必要があります。
具体例として
うちのアルバイトスタッフが成長する過程で、誰もが通る道に
客席のケアを放置(または失念というか意識から消えて)して洗い物を一生懸命してしまう
という問題があります。
うちの店の場合、基本的には1回転しかしないため「使ったお皿を洗わないとお皿が足りなくなる」という事態はあり得ません。
なので、洗い物は営業中にする意味ってほとんどないのです。
(少しあるとしたら「自分たちが少し早く帰れるかも」くらいなのですが、それも営業終了後にまとめて洗ったほうが作業にスケールメリットが効くので圧倒的に効率が良く、営業中に洗い物をした時としてない時で片付けの終わる時間は実はそんなに変わらない)
まあしかし、ある程度複雑な要素のある客席のケアと違って洗い物って「目の前に洗い物がある。洗おう」と考えなくてもできる作業なので思考を放棄すると洗い物についつい行ってしまいます。
なのでうちでは他にやるべきことがあるにも関わらず、洗い物をしてしまう行為を「悪魔の囁き」「原則能力の不足で罪に問うことはないが、唯一重罪とする無能」と定義しています。
これを改善するための要望を出す際
ロジックin ロジックout
上記に書いたことを、口頭で伝えるか、なんなら上の文章をそのまま読ませれば基本的にはOKです。
感覚in 感覚out
「営業中は洗い物は1枚たりとも洗わなくていい」
「客席をもっと見よう」
と指示を出す
ロジックin 感覚out
ロジックinロジックアウトと基本的には同じ対応です。
感覚in ロジックout
ロジックinタイプにする話をした上で
「洗い物をするな」
(洗わなくていい、ではなく禁止命令として出す)
「客席を見る回数を今の3倍に増やせ」
(もっと見よう、だと伝わらない)
という感じです。伝わりますでしょうか??
まとめ
具体的な教育内容よりも「相手に合わせてどう伝えるか」が重要かと思うので、その辺の知見を自分への忘備録兼ねてまとめてみました。また追記するかもしれませんがとりあえずは以上です!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?