『社会福祉政策研究 : 社会福祉経営論ノート 増補版』 三浦文夫著

ほとんど目次だけ。この本を読む今日的な意味はほとんどないと思う。


第1部 社会福祉経営論の基礎理論

第1章 社会福祉の政策と実践――社会福祉研究の1つの視点――

第1節 社会福祉の政策と実践の歴史的流れ

第2節 社会福祉の2つの分析視角


第2章 社会福祉の概念

第1節 社会保障と社会福祉

(1)社会保障と社会福祉の用語

・・・

この概念・内容の相違は、まず社会保障と社会福祉の範囲をどのように捉えるかということに現れてくる。わが国では、この2つの言葉はまず憲法第25条第2項のなかにみることができる。すなわち、

「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」

というのがそれである。もっとも、ここで使用されている用語は必ずしもそれぞれの範囲・内容を厳密に規定したものではないが、しかし、そこでは社会福祉・社会保障・公衆衛生が並置されていることに注意しておかなければならない。

しかし、その後の政策・制度の動きをみると、この用語は次第に普及すうりょうになってきているが、それとともに、その内容・範囲は変わってきている。例えば1950年に公にされた社会保障制度審議会の「社会保障制度に関する勧告」では、社会保障をつぎのようにして規定している。

「社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、脂肪、老齢、失業、母子その他困窮の原因に対し、保健的方法又は直公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もってすべての国民が文化的社会の成員たるに価する生活を営むことができるようにすることをいうのである」

と。つまり、この規定によると社会保障制度というのは、社会保険、国家扶助(公的あるいは社会扶助)、社会福祉、公衆衛生・医療の4部門を含むものとしているのであり、社会保障は社会福祉を含む上位概念として取扱われているのである。

これに対して諸外国では社会保障をより限定し、経済ないし所得保障と同意義に使用する場合が多い。たとえば上記したILOの『社会保障への途』では、「社会保障は、社会がしかるべき組織を通じて、その構成員がさらされている一定の危険に対して与える保障である」として、さらにその内容については、

「国のすべての政策は社会保障になんらかの関係をもっているが、病気の予防や治療のための給付や、収入が得られなくなったときに扶助し、収入の得られる活動にもどすための給付を、人びとに支給するような気候だけを社会保障サービスとみることが便利である」

としているのである。この捉え方は社会保障を医療と所得の保障に限定しようとするものである。このILOの規定は、1942年のものであり、社会保障がいまだ制度的に確率することの少なかった時期の規定である点に留意しておく必要があるが、しかしここで触れられている基本的な考え方は、イギリスのベバリッジ報告(1942年)をはじめILOのフィラデルフィヤ宣言(1942年)につながり、今日までも貫かれているのである。

この故もあってイギリス社会保障の体系を明らかにしたベバリッジ報告にあっても、社会保障は限定された内容をもって規定されている。たとえば、W・ベバリッジはイギリス社会保障計画を確立するに当たって、3つの指導原理を明らかにしているが、その第2原則で社会保障の目指すべき攻撃目標は5つの巨人(疾病、無知、窮乏、陋隘(ろうあい)、無為)のうちで窮乏であるとしている。そして彼は社会保障の範囲をつぎのように述べている。

「ここでいう社会保障とは、失業、疾病もしくは災害によって収入が中絶された場合にこれに代わるための、また老齢による退職や本人以外の者の死亡による扶養の喪失に備えるための、さにまた出生、死亡および結婚などに関連する特別の支出をまかなうための、所得の保障を意味する」

と。そしてこの前提として、児童手当・保健サービス、完全雇用の施策を措定しているのである。

このようにILOあるいはベバリッジ・プランなどによると、社会保障は(医療を例外とするが)所得保障というところにその範囲を限定し、したがってその範囲も自ずから社会(メモ者注:所得の間違い?)保障および公的扶助とされることになり、わが国のそれとは明らかに異なったものとなっている。

このように社会保障の内容は国によって異なり、このため社会福祉に対して、それは上位概念とされたり、あるいは、並置概念とされる場合もみられるのである。したがって社会保障に対して社会福祉についても広狭2通りの概念が出てくることになる。たとえば、上記の社会保障制度審議会の1950年勧告では社会福祉は社会保障の下位概念として、社会保険、国家扶助、公衆衛生・医療とならんで規定されることになる。そして、より厳密には、このように限定された社会福祉は制度的に社会福祉事業法にのっとり、社会福祉事業と称することも多い。そして、このように限定された社会福祉として、上記の社会保障審議会は、

「社会福祉とは、国家扶助の適用をうけているもの、身体障碍者、児童その他救護育成を要するものが、自立してその自力を発揮できるよう、必要な生活指導、厚生指導その他援護育成を行うこと」

と規定しているのである(この社会福祉の概念については第2章を参照)。

これに対して、社会福祉をより広義に取扱う場合も少なくない。たとえば、わが国でも古くは竹中勝男は社会福祉をもって一種の目的概念として考え、

「社会事業を中心としてこれに接続する社会政策及び社会保障制度が、扶助、保護、保健、保障のごときそれぞれの方法によって実現しようとする具体的目標に共通する1つの上位概念」

と述べているのである。この引用で注意しておきたいことは、上記の狭義の社会福祉(事業)に相当するものを、社会事業と呼んでいることである。このような捉え方はわが国では必ずしも支配的なものとはなっていないが、諸外国の文献をみると逆に社会福祉は比較的広く理解されているようである。

すなわち社会福祉に相当する用語は国によってまちまちであるが、アメリカでは social welfare と呼ばれることが多く、イギリスでは social services とされる例も少なくない。そして、これらの用語はいずれも広義に使用され、その内容としては社会保障、社会事業(またはソーシャル・サービス)のほかに住宅、公衆衛生、医療サービス等を含むことが多いし、さらにこのほかに教育、雇用等のサービスを含む例も決して珍しいものではない。

・・・

(2)社会保障制度の体系

(3)社会保障と社会福祉


第2節 社会福祉の概念について

(1)社会福祉の広義の理解

(2)社会福祉の限定的理解

(3)社会福祉概念の拡大


第3節 実定法からみたわが国の社会福祉事業の範囲



第3章 社会福祉経営論の枠組と社会福祉の政策目標

第1節 社会福祉経営論の研究課題

第2節 社会福祉経営論の枠組

第3節 社会福祉の政策目的


第4章 社会福祉におけるニードについて

第1節 社会福祉のニードとはなにか

第2節 社会福祉ニードの種類とその分類について

第3節 社会福祉ニードの測定

第4節 社会福祉ニードの確定


第5章 社会福祉におけるサービス――ニード充足の方法――

第1節 ニード充足の一般的モデル

第2節 サービスの2つの形態と方法

(1)現金給付(cash benefit)と現物給付(kind benefit)

(2)現金給付の形態

(3)現物給付の諸形態

(4)普遍主義的サービスと選別主義的サービス

(5)在宅福祉サービスと施設福祉サービス

(6)社会福祉サービスの運営の公準


第6章 福祉資源の調達・配分――社会福祉サービスの供給体制――

第1節 社会福祉における公私の機能(役割)分担

第2節 社会福祉の公私機能分担と福祉サービス供給組織の関係

第3節 福祉サービスの供給組織の概念枠組み




第2部 わが国における社会福祉政策の諸課題――社会福祉経営論との係わりにおいて――

第7章 対人福祉サービスの今後の方向

第1節 戦後の社会福祉政策の展開

第2節 社会福祉の展望

第3節 社会福祉政策:政策の方向

第4節 社会福祉政策・・在宅福祉サービスの概念と内容


第8章 社会福祉の現代的課題

第1節 最近の社会福祉の展開――福祉充実と福祉見直し――

第2節 社会福祉ニードの変化

第3節 これからの社会福祉サービスのあり方を考えるために

第4節 要約――2つの福祉見直し――


第9章 臨調と社会福祉

第1節 臨調答申と社会福祉

第2節 社会福祉のパラダイムをどう考えるか


第10章 社会福祉「改革」の行方――総合的アプローチの必要――

第1節 社会福祉を根本から見直す時期に

第2節 「改革」をめぐる3つの流れ

第3節 非公共的な福祉供給システムが登場

第4節 病院とホームを統合した中間施設を提言


第11章 普遍主義的福祉体制と社会福祉ミニマムについて

第1節 社会福祉における救貧的選別主義からの離脱と普遍主義的社会福祉

第2節 普遍主義的社会福祉体制と社会福祉ミニマム

第3節 普遍主義的サービスと費用負担

第4節 普遍主義的サービスと公的責任の在り方について


第12章 社会福祉改革の戦略的課題――複合的福祉供給システムについて

第1節 はじめに

第2節 社会福祉における公私機能分担の再検討の意義

第3節 社会福祉の公私機能分担と福祉供給組織

第4節 福祉供給システムの国際比較

第5節 わが国の社会福祉と福祉供給システム・パターンの特徴――とくにボランティア活動を手がかりにして――

第6節 社会福祉改革の行方


第13章 社会福祉政策研究の回顧と課題――制度「改革」の視点から――

第1節 はじめに

第2節 戦後社会福祉制度の基本的枠組の形成

第3節 社会福祉政策研究の歴史的展開

第4節 最近の社会福祉政策の展開と政策研究の動向と課題


第14章 社会福祉改革の必然性と若干の課題

第1節 はじめに

第2節 「51年報告」の時代的背景

第3節 「51年報告」以降の動き

第4節 社会福祉の制度改革の必要性と経緯

第5節 制度改革のための2つの基本的課題

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