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749日目 チェリーボム

2023年 11月 22日 (水)

●チェリーボム、聴きました。

戸惑った。
すごくいい曲だし、林さんのせつ菜ちゃんとしての初のソロ曲と言うことで込められた意味は強烈で、しかしそれを思わせないくらいにいつも通りのせつ菜ちゃんの力強さが感じられる素晴らしい出来だったのだが、果たしてこれはラブソングなのか?という戸惑いがあった。
歌詞を見ればまあラブソングではあるのだ。独り占めしたいだったり、世界中でたったひとりこんな気持ちにさせる人、だったりと特定の想い人を思わせる歌詞は度々出てくるのだが、しかしどうしてもこの曲、リリックビデオから、これまでのリリックビデオに感じてきたラブソング感を掴むことができていなかった。
そのためこの文章が書くのもずいぶん遅れてしまい、書くことのないまま迎えた先日の生放送。出演されていた林さんが私のラブソング編のせつ菜ちゃんの話をされているのを聞いて、自分の世界は晴れた。
というかそもそも生放送を見る前からこうすればよかったのだが、私のラブソング編を見返すことでこの曲の聞こえ方はもうまったく変わってくれた。

これまでのメンバーのラブソングを聴いてきたからか、自分はついお付き合いをしている、もしくは思いを寄せた特定の誰かがいてこそのラブソングだと考えてしまっていたが、そもそもその前提が間違っていた。この曲は、と言うかせつ菜ちゃんがラブソングを作る相手として狙いを定めたのは、自分を応戦してくれるファンのみんな、だったのだ。
やられた、ああそうだった。
この曲を歌っているのは優木せつ菜さんだった。

アイドルの方向性にも様々あると思う。
成長の過程を見せることでファンの目線を集めるアイドル。
ファンと近い距離、同じ目線に立って親近感を演出するアイドル。
そして完全無欠の存在として言葉通り偶像であり続けるアイドル。そしてせつ菜ちゃんはとことん、この偶像タイプのアイドルなんだなぁとこの曲を聴いて思わされた。

そもそも同好会内で彼女だけ芸名を使用して活動していることからも、彼女の異質さは際立っている。それだけでアイドルへの本気度が伺えるとまで言ってしまうと他のメンバーを不必要に貶すことになるので慎重になる必要があるが、少なくとも彼女にとってアイドル活動をすることが持つ意味が他のメンバーと大きく異なっているのは間違いないだろう。
優木せつ菜という人物は実際には存在しない人物である、というのが彼女の大きな性質の一つであることは確かであり、更に言うのであれば、優木せつ菜が存在することができるのは同好会でスクールアイドルとして活動している間のみなのだ。
そう考えると、”優木せつ菜”が作るラブソングが向いている先として応援してくれるファンのみんな、という答えが出るのは至極当然のことなのかもしれない。
他のメンバーとは違って彼女だけはスクールアイドルのためだけに生み出された存在であるからこそ、まっすぐにファンへ向けたラブソングを歌えるのだとしたら、この唯一無二さは本当に大きな彼女のストロングポイントだと思う。

そう思ってこの曲を振り返ってみると、一見特定の誰かに向けられているようで、しかしこの曲が作られた経緯を踏まえて聴くとまた聴こえ方が変わってくるよう、上手いこと言葉が並べられているような気がして面白い。

特に意味が変わったなと感じた所は、手を伸ばせばすぐな距離 こんなに遠く感じるの のところだった。
特定の誰かが相手だと考えれば、距離が近い人への想いを近すぎるが故に隠してしまうもどかしい様が浮かぶ。
アイドルが自分を応援してくれるファンのみんなに向けているのだと考えれば、客席からそう遠くない位置でパフォーマンスをしているはずの自分とそんな自分をすぐそこで応援してくれているファンの心理的な距離を歌っているようにも聞こえてくる。

せつ菜ちゃんのファン層には、そのカリスマ性故にかなり熱狂的と言うか、彼女を遥か高みにいる孤高の存在として扱うタイプのファンが多い気がしている。
副会長あたりがいい例だが、そんな状況がこの歌詞に繋がったのかなと思うとせつ菜ちゃんなりの、実力者なりの苦悩みたいなものが見てとれて、それが非常に興味深い。
だからと言って彼女がもっとファンと距離の近いアイドルになりたいと思っているとは思わないし、今のカリスマ的な見られ方にもそれはそれで満足しているんだろうが、そこに甘えることなくもっとたくさんのやり方で、自分を応援してくれるファンのみんなと関わり合えるようもがく姿は本当に素晴らしい。

ここまで一貫して、絶えずアイドルであり続けようと全力な子が自分に向けてラブソングを歌ってくれるなんて、彼女のファンの心情を思うだけで身震いがしてくる。
凄い子だ、凄いアイドルだ。
優木せつ菜の凄さを思い知らされた。


そして林さんのせつ菜としての最初のソロ曲というところに触れないわけにもいかないだろう。自分がリアルタイムで初めて追っているソロ曲と言う部分もあるんだろうが、それでもやはりこれまでの5つとはかなり違った曲だな、という感想はあった。それは決して歌声だけの違いではなくて、曲の感じにとても新しさというか、これまでとはまた違ったせつ菜を見せますよという意志を強く感じた。楠木さんのせつ菜ちゃんの影を追うだけに終わらせず、ここからまた新しいせつ菜ちゃんを見せようとしてくれているのが本当にありがたい。

これだけテンポの速い曲を歌えてしまう林さんは凄いし、あと林さんはせつ菜ちゃんの力強さを何倍にもこちらに伝えてくれるのが良い。そんな彼女の優木せつ菜としての初のソロ曲、チェリーボムをみんな聞こう。こんな文章読んでる暇があったらまず聞こう。

あとこの曲にはやる鼓動、という歌詞が出てくるので当然リリックビデオにも文字としてここの歌詞が出てくるのだが、この部分に凄く林さんの存在を空目してしまった。
下の名前に入っている鼓の文字と、あとはやまるという愛称とはやるの部分がとても被る。
意図的ではまあないだろうが、なんか面白かったので最後に書いておこう。


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