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811日目 変な人

2024年 1月 24日 (水)

A「いやー、今日は電車が遅延しちゃって、遅刻しちゃいそうになっちゃいましたよ」

B「間に合って良かったね。やっぱり混んでた?」

A「めっちゃ混んでましたよ。もう身動きも取れませんでした」

B「それは大変そうだね。僕なら絶対無理だろうなあ」

A「ああ、先輩、体弱いですもんね」

B「そうそう、だから満員電車に乗れる人は尊敬するよ」

A「まあちょっと狭いってだけで大したことはしてないですけどね」

B「電車と言えば、この前電車に乗ってたら変な人がいたんだ」

A「へぇ、どんな人なんですか?」

B「この前、京浜東北線に乗ってたら隣に座ってきた人がぶつぶつ喋ってたんだよ」

A「ぶつぶつ喋ってる、ですか。確かに少し怪しいですね」

B「そうでしょ。これがまた傑作なんだけどさ」

A「はあ、聞かせてくださいよ」

B「その人は一人のはずなのに、ずっと誰かに話しかけてるみたいな口ぶりだったんだ。その人は凄く自転車が好きみたいで、自分の愛車がどれだけ素晴らしいものかをずっと誰かに語り掛けてるみたいなんだよ。ボディのこんなところが素晴らしいとか、ペダルもものすごく軽くて漕ぎやすいとか、あまりに愛おしすぎて一秒たりともそばを離れたくないとかそんなことをずっと言ってるんだよね」

A「へぇ、そんなに愛の深い人がいるんですね。不審ではありますけど、良い人そうじゃないですか?」

B「そこなんだよ、語ってる内容は良いのに何でずっと独り言言ってるんだろうなぁと思ってずっとその人のことをこっそり見てたら、その人、実は耳につけたイヤホンで誰かと通話してたんだよね。独り言じゃなくて誰かと電話してたんだよ。いやーとんだ勘違いだったね」

A「ははは、それはやっちゃいましたね。でもその人もだいぶ紛らわしい人ですけど」

B「ほんとだよ、大体電車の中で通話するのはちょっとマナーがよくないしね」

A「確かにそうですね……でもその話、なんか変じゃないですか?」

B「変?その人が変ってこと?」

A「いや、その人は自転車が大好きなんですよね」

B「まあ、その人の言うことを信じるならそう言うことになるね」

A「大好き過ぎてそばを離れたくないくらい自転車が好きなのに、なんでその人は電車を使ってるんですか?」

B「言われてみれば……確かに不思議な話だね」

A「そうですよね。自転車を使えないくらい遠くへ行くつもりだったんでしょうか?」

B「でも、その人は4駅くらいしか電車に乗ってなかったんだよね。その人が乗って来た駅も降りた駅も乗り換えがある駅じゃなかったからそんなに大移動をしていたとは思えないよ」

A「そうなるとより不思議ですね……その人、かなり怪しいですよ」

B「どういうことだろう……」

A「はっ!わかりましたよ」

B「え?」

A「その人がなぜ電車に乗っていたか、分かったんです」

B「ほんと?なんでなの?」

A「先輩、電車に乗るときに必ずすることってないですか?」

B「必ずすることか……電車はあんまり乗る機会がないけど、たまに乗るときは、そうだな……ああ、優先席に座らせてもらうようにしてるかな。ご存じの通り僕はあんまり体が強くないからね」

A「そこですよ。そのぶつぶつ喋ってた人は先輩の隣に座って来たんですよね?つまりその人は優先席に座っていた、ということは足かなんかを怪我してたんじゃないですか?」

B「なるほどね、足を怪我してたから自転車を漕げなかったんだ」

A「そう言うことですね。それなら納得いきます」

B「は~。僕の話を聞いただけでよくわかったね。すごいよ」

A「まあ、最近ミステリー小説よく読んでるんで。これくらいなんてことないですよ」

B「凄いなあ。僕もミステリー小説を読んでみようかなあ」

A「いいですね、オススメあるんで色々教えますよ。じゃあ本屋行きましょうか」

B「いいね!」



●何もしていない一日。


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