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331日目 四畳半タイムマシンブルース

2022年 9月 30日 (金)

●華の金曜日です。みんなもっと調子に乗りましょう。

今日の最大の目標は、本日後悔の四畳半タイムマシンブルースを見ることだった。
特典の書下ろし小説は是が非にでも手に入れたかったし、小説版は既に読み終え夜は短しも見返してアジカンを聞く頻度も増え、四畳半世界への憧れのピークに達しつつある今、あとはこの張り詰めた気持ちを劇場で爆発させるだけ、と言うのが今日朝目覚めた自分の状態であった。

幸い、金曜日の授業は2限の英語のみとなっているため、自分に許された時間は存分にあった。
そこそこの時間に起き、バッチリ準備も済ませて大学へ。
今日はしっかり意識を保ったまま1時間半を乗り越え、授業が終わったと同時にスタートを切り、猛ダッシュで京都に向かう。
生憎17時からバイトの予定があるので、今日中に映画を見ようと思うと、どうしても大急ぎをする必要があった。
安全性とスピードを両方損なわない程度に帰り道をぶっ飛ばし、駅まで到着しそのまま電車で京都へ。
京都駅に到着し、ちょっぱやで映画館へ。
まだチケットすら購入していなかったので、本当にギリギリの到着となってしまった。顔面がビデオカメラになってしまった男が猛ダッシュしている映像が流れているあたりで劇場に入り、無事席に着くことができた。
バッチリ特典もゲットできたのでホクホクだ、映画も素晴らしく面白かった。

内容は事前に小説で読んでいたので把握していたのだが、やはり映像の良さはあるよなぁと改めて思った。

映画も見終わり、駅前の落とし物センターへ。
ずっと探していた、バイト先で使う社員カードが落とし物として届いていますと連絡が来たのが大体2週間ほど前、今日やっとその受け取りに行ってきた。
こんなに期間を空けた人間にも、職員さんは嫌な顔一つせず、清流のように美しい手際で手続きを済ませてくれる。
毎日毎日落とし物をした愚か者とばかり顔を合わせなければいけない仕事はなかなか大変なように思う。がんばってください。

そのまま本屋に行き、ずっと欲しかった四畳半タイムマシンブルースの単行本と出会ってしまい、映画を見て調子に乗っていたこともあり即購入。
あとは漫画を何冊かと、森見登美彦さんの小説を一冊だけ買った。
会計4500円だってさ、驚いたよね。

そのままバイトへ。
今日の忙しさは凄かった。過去一かもしれない。

そこまで仕事が多い方ではない自分ですらてんやわんやだったので、先輩たちの多忙ぶりは目を見張るものがあった。
金曜日でこの忙しさは凄い、京都人気出てきたんじゃない?

バイトの後は何をするでもなく帰宅。
ショボショボ晩御飯を食い今日はおしまいだ。




●こっからこっから。
四畳半タイムマシンブルース、面白かったです。
あとタイムマシンブルースなのね、これまでずっとタイムマシーンブルースって書いてた気がする。恥ずかしいからこっそり修正しチャオ。

以下ネタバレ。











本当に良かった。面白かった。これしか言えないかも。
褒めてばかりでもつまらないので、折角だし少し残念だったことでも書こう。
私が明石さんを送り火に誘うシーンにて、小説では世界の命運が自分に委ねられたプレッシャーと、そもそもの明石さんを誘うことのプレッシャーに追い詰められた私の長ったらしい独白が非常に面白く、かなり印象に残っていたシーンだったのが、映像になるとかなりヌルっとお誘いすることができていて、少し戸惑ってしまった。
小説の内容がほぼすべて詰め込まれていた映画だったので、尺が厳しいのは分かる。ただここの葛藤はもう少しでいいから見て見たかったなあと思ってしまう。
ちなみにこの文章を書くにあたって該当部分を読み返してみたが、ここの葛藤は大体1ページほどで済まされていた。自分の体感だともっと長いと思ってたな。

ここからストーリー追ってくから。

序盤、オズと私の何でもない掛け合いから映画が始まる。
小説版四畳半神話大系を最近読み終えた身としては、オズの存在がかなり尊いものに思えてくるから不思議だ。
二人のバカバカしいやり取りも輝いて見える、そこに突然現れ、核の違う輝きを放っていたのが、明石さんだ。

明石さんってあんなに可愛かったっけか。アニメで見たときもかなり魅力的に見えたが、映画版の明石さんはなんかもう凄い。映画の監督をしているときに髪を結んでいるのもいい、声も良い、喋り方も良い、縦縞ワンピースも非常に似合っている。
この作品の魅力の4割くらいは明石さんが占めているんじゃないかな、明石さんめっちゃ可愛かった。
こういうのは映像でないと楽しめない所だよなあと思う。
小説版の文字のセリフだけでも十分に良いキャラしていたのだが、映像と声が付いた明石さんの強さは天井知らずだろう

その後表れたもっさり星人改め田村君。
彼のもっさりした髪型が、非常に私と似ていた。ちなみにここでいう私とは映画の主人公である私のことであり、現在この文章を書いている自分のことを指しているわけではない。

映画のラストで、田村君は実は明石さんの息子であることが明かされるのだが、田村君の父であり明石さんの夫である人間が誰なのかは知らされない。
一体全体、田村君のお父さんであり明石さんの夫である人間は誰なんだ!

その後いろいろあって銭湯のシーン。
羽貫さんが男湯の方に呼びかけてくるところが少し棒読み気味になっていることに気づいた。
この後の展開も全て知っているうえでそのシーンを見ると、後から都合を合わせるために言わされていた呼びかけだったからこそ、少し棒読み気味だったのだなと気づけるのだが、こういうのも文字だけでは伝わらない情報だ。


そこからタイムマシーンが発見され、ストーリーはどんどん進んでいく。

オズ、羽貫さん、樋口師匠の最悪の3人が過去に戻った後のメンバーでの会話のシーンがなんかよかった。

私と明石さんが、城ケ崎先輩を無視して二人だけでよろしくやっている所が特に。自分は私も明石さんも好きだし、その二人の組み合わせはもっと好きなのだ。好きなのだ。

田村君のゆるい感じと、城ケ崎先輩の高圧さと、私&明石さんの安心感と、相島先輩のガヤの相性がなんだか妙に良かった。
その後の宇宙消滅の答えを導き出すところは、少々展開が早すぎる気もしたが、そこから物語がどんどん盛り上がっていく感じが良い。

これまで不可解なキャラのすれ違いで終わっていたシーンにどんどん意味が生まれていく。色々な要素が上手いこと噛み合っていく感じがとても面白かった。

過去に戻った時の風呂場のシーン。
(過去)明石さんの映画をこき下ろす(過去)城ケ崎先輩に、あの映画は間違いなく傑作ですと強く言い放つ(過去)私の声を、女湯で(現在)羽貫さんと共に待機していた(現在)明石さんが聞き、少し嬉しそうな表情を浮かべていた所、ここがいっちゃん良かった。

この二人の関係性は本当に素晴らしい。見せ方が上手すぎるんだよな。

そして、ここで喜ぶ明石さんと言う映像は、ほぼ私視点のみで物語が進んでいく小説版では見られなかったシーンでもある。映像の恩恵がこんなところにも。

ここで女湯の様子がほんの少し写っていたのだが、声を出さずに羽貫さんに指示を出さなければいけない明石さんが、洗い場の鏡を曇らせてそこに字を書くことで指示を出していた場面が見られた。
小説版では見られないこういう細かいところを、映画で見せてくれるのは非常にありがたい。

ちなみに明石さんはしっかり体にバスタオルを巻いていたので、助平の皆様のご期待には沿えなさそうだ。そこはごめん。

その後古本市での(現在)オズと(現在)わたしの取っ組み合いのシーン。ここも小説版に比べてあっさりしていたが、私からオズへ、小説版では土下座までして強く語り掛けるシーンだったのが、映画では静かに語り掛けていたのが記憶に残っている。
いつもははっきりと突っかかって来る私の塩らしさに納得してしまうオズ、というのはなかなか納得がいくし、なかなかいいなとも思う。

あと感じた違いは、明石さんが羽貫さんと樋口師匠を見送るシーンで、リモコンが二人の手に渡ってしまった理由が変えられていたところだ。
小説では、ナチュラルに樋口師匠にリモコンをくれと頼まれた明石さんが、無意識にリモコンを渡していて、映画では羽貫さんが奪い取った、と言う風に変わっていた。
何で変わっていたんだろうか、まあどっちもそこまで違和感はないのでどっちもよかったんだけどね。



そして映画は終盤、ただ一人昨日に取り残された私が、ひたすら押し入れに隠れながら耐えることで、今日に帰って来ることが出来たのだが、それでいいのか?と映画内でも言われていたように、筋は通っているのだろうが、即座に納得はできないモヤモヤ感が非常に面白かった。

でもやっぱり私だけ少し多くの時間を過ごしていることにはなるよな。
明石さんたちが一瞬で昨日から今日に戻ってきているのに対し、私は何時間も耐え忍ぶことで昨日から今日に戻ってきているわけで、これを何度も繰り返せば私だけ他のメンバーよりも早く老衰する、と言うことになる、んだよな?


ラストシーン、鴨川デルタでの明石さんの、時間は一冊の本のようなものである、と言う考え方には非常に納得させられた。

タイムマシンで過去を変えてしまうことへの解釈は他にも様々見て来た。
例えばこの映画で言われていた、過去を変えると宇宙が終わる、と言う考えには少々納得できかねるところがあった。

のび太が父と母の出会いに干渉して存在が消えかかるという話も、何年か前のドラえもんにあったが、過去を変えることで戻ってきた現在に何らかの変化が起きている、と言うのはなんだか違和感が凄い。
タイムマシンを使って過去から現在に戻っている間にも自分の中での時間は進んでいるわけで、連続的な時間のどこかの一瞬で一人の人間の存在が消えるだとか、その上宇宙が消滅するなんていうのは、そんなわけないだろと思ってしまう。
のび太の例で言えば、どれだけ干渉しようと父と母の行動すべてをコントロールできるはずもなく、二人のそれぞれの時間が進んでいく中でのび太が生まれる可能性と言うのは高まりもするし下がりもするだろう。
そのたびにのび太の存在が消えたり現れたりするはずもないので、この考え方にはあまり同意できない。DJじゃないんだから。

あとは過去を変えても現在の自分には特に変化が起きず、パラレルワールドで何らかの変化が起きる、という考え。これもあまり飲み込めない。

そもそもパラレルワールドと言う考えから自分は納得していない。

自分は自分で一人であり、そこにパラレルもifも存在しないから。
昨日の自分も今日の自分も存在するが、それはどちらも同じ自分であり地続きの人間であり、別の人間ではないのだ。
タイムマシンがあってもそれは変わらず、今日の自分が昨日に行ったところで、それは違う時刻を生きていた同一人物が同時刻に存在するというだけで、昨日の自分も一日経てば昨日の自分にとっての昨日に行く、というだけの話だ。
何かわかりづらいのでまたドラえもんに頼るが、のび太の宿題を終わらせるために、ドラえもんが未来の色々な時刻のドラえもんを複数体連れて来て、協力して宿題を終わらせようとする、と言う話が合った。

誰か一人のドラえもんに視点を絞る。今日ドラとしよう。
今日ドラは未来の自分たちと協力して、何とか宿題を終わらせる。
全てが終わって今日ドラが寝ていると、今日ドラのところに、今日ドラから見て過去を生きるドラえもんがやってきて、今日ドラがやったのと同じように宿題を手伝わされる。
これが何度か繰り返されて、最後には何度も宿題を手伝わされることに嫌気が指して気が触れる、と言うオチだったのだが、この解釈がまさに自分の解釈なんだ。

ドラえもんが未来のドラえもんを集めて宿題を終わらせるが、一番未来から連れてきたドラえもんの頭がおかしくなっててんやわんや、という時間の流れが確定しているだけで、それ以外の時間の流れなど存在しない。
それが言いたい。

あと、変化するのがパラレルワールドだけ、と言うのは単純につまらない。
まだ宇宙消滅の方が面白いだろう。なのでパラレルワールド説はあまり好きではない。


つまりは時間の流れは一冊の本なんですよと。
過去も未来も何が起こるかはすべて決まっていて、自分たちはそれをなぞるだけなんだぞと。
決まったことなんか変えてやると思って行動に移しても、それも計算に入れられたうえで時間の流れは決定されているので、この考えに至った人間が絶望して自らの命を絶つ、という出来事が起きたとしても、それもあらかじめ定められているのだと。

なので過去に戻って都合を合わせようと努力をする必要などなく、時間の流れに身を任せるだけで何の問題もないのだ。
何らかのパワーが働いて納得のいく時間の流れに乗るか、それとも過去に何か大きな違和感があったかのどちらかに絶対に収束する。

しかし、話の流れから宇宙消滅を危惧した私と明石さんが奮闘する、という出来事もあらかじめ定められていたわけで、もしそこで二人が何の努力もせずただ乳繰り合っているだけだったら、定められた出来事とは異なる出来事が起こっていたはずだ。

しかしこれは、あそこでああしていればのifの話に過ぎないので、やはり定められた出来事が変わることはない。
なんならこの文章だってあらかじめ定められた文字列を自分がなぞっているだけで、例えばここで定められた時間の流れに抗おうと、ぺ。などと謎の一文字を刺し込んだとしても、その抵抗すらも定められていた時間の流れをなぞっているだけに過ぎない。

それでも未来のことは何もわからないから、私たちは自由だと言えるんだという明石さんの言葉はいい。
時間の流れはすべて決定されているという考え方は、人によっては嫌だと思う人もいるだろう。なにをしても定められた出来事をなぞるだけ、という絶望感は少し理解できる。

そんな暗い考えを、明るくプラスに変えられる明石さんが良いんだ。
ここは文字で読んでいる時にもやられてしまった。ダメだ明石さん良すぎる。

送り火どこで見物しますか?の明石さんの破壊力にとどめを刺され、成就した恋ほど語るに値しないものはない。で映画が締めくくられた。

美しすぎる。やっぱりこの終わらせ方いいよなあ。

いやー本当に良い映画だったな。京都でこの映画を見られるなんて、自分はなんて幸せ者なんだろうか。
恐らくもう一度劇場に見に行くので、この熱はまだまだ続きそうだ。

入場特典の小説でも読んで、小説をもう一度読み返すのもありかもしれない。

いやもう本当に最高でした。ありがとう。



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