旧校舎

重森さんが高校三年生のとき。清掃時間に彼女は、二階の教室の窓べで、黒板消しを叩いていた。 

そしたら、となりの教室が急に騒がしくなって、いきなり、一人の女生徒が飛び降りた。 

 「びっくりしたわ。」 

となりでは、こっくりさんをやっていたそうだ。 

突然その中の一人が、奇声をあげて暴れると、あいていた窓から飛び降りたんだと。 

幸い、下に植え込みがあったから、大事には至らなかった。 

そして学校からは、こっくりさん禁止が厳重に言い渡された。 

「先生が、この学校ではやっちゃいけない、って口をすべらせたんで。」 

やっぱり、と思った、と重森さんは言った。 

学校は、明治の始め頃に立てられたという二階建ての洋館。レンガに囲まれた建物が校舎だった。 

玄関は北向きで、入ると、窓枠・ドア・天井、全てが磨き抜かれた木の細工、どんなに天気が良くても、建物内は薄暗い。 

その窓枠や壁をよく見ると、無数の染みが残っている。よく見るとそこかしこの不思議な場所に染みがあった。 

うわさでは、二・二六事件で殺し合いがあったとか。 

階段の手すりには刃物の食い込んだような痕があった。だが、最古参の先生に聞いても言葉を濁して教えてくれない。 

その染みは「洗っても洗っても出てくるんだ」 

そう用務員さんから聞いた、と重森さんは話してくれた。

床には赤い絨毯がしかれていた。一年に一度は敷き直される。 

「なんでか、同じところにでろーんと染みができるんだって」 

他の色の絨毯だと赤い染みができるから、赤しか敷けないと言う。 

「薄暗くて、何かの気配があって、敏感な人にはしんどいとこだったと思う。」 

 そう言う重森さんも、かなり敏感な方だ。 

「一度ね、廊下に女学生がうつむいて佇んでいたの。何か様子が変だなーって、見てたのね。そしたら、向こうから人が歩いてきて、その女学生を通り抜けちゃったの。」 

 あ、と思ってぞっとしたそうだ。 

【完】   

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ご購入ありがとうございます!  

せっかくご購入いただいたのですが、続きが何もなくてすみません。 

この作品は、2006年の「超-1」と言うコンテストに応募したものです。 ブログに公開されて批評される形式のものだったんですが、ブログは残っているのですけれど、作品は削除されていました。  応募規定に、「著作権は著者にある」と書かれているし、もうブログにも載っていないのなら、自分の手元に戻してもいいのかなぁ、と、思い、noteに上げさせていただきました。

以上で、あとがきに代えさせていただきます。ご購入ありがとうございました。

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