部屋の隅に

出張先で泊まったのが、いわくありげの古びた旅館で、今田さんは入った途端に(ヤバい)と思った。

かといって、今から別の宿泊先を探すわけにもいかない。入り組んだ廊下の突き当たりの部屋に通されると、そこはテレビもなくて、寝るより他にすることがなかった。 

どれくらい眠ったろうか、バタバタバタという軽い足音で目が覚めた。二階を子供が走り回っている様子。(やっぱり)と思ったが、二階の客の子供かも知れない、と、無理矢理納得して寝ようとした。 

だが、眠れない。足音は二階から、階段、廊下、と、降りてくる。そして、いつの間にか今田さんの枕元にやってきた。 

「この人も連れてくの?」 

と声がして、今田さんが薄目を開けると、子供が今田さんの頭の方にすわって、顔をくっつけんばかりにのぞき込んでいる。

すると、 

「この人はいけないよ。ほら息をしているだろう?」 

と、右横から声がした。大人の男の人だ。そういわれたら急に胸が押しつけられるような感じで苦しくなり、今田さんはまた目をつぶった。 

息がつまる、と、思ったら、また急に楽になったので、今田さんは右横の男の人の方を見てみた。すると、着物に足袋の足だけが見えて、それが部屋の隅に歩いていくと、すぅーっと消えた。いつのまにか着物姿の女の人もいて、同じ隅に歩いていくと、またこれもすぅーっと消えた。そして子供も、同じ隅に消えていった。 

 朝になって、窓を開けると彼らの消えた方向の延長上に何かある。ぼろぼろになった地蔵堂だった。 

チェックアウトの時、宿の人が「大丈夫でした?」なんて言うんで 

「知ってて泊めたんだこいつら、と思って無視してやった。」 

と、今田さんは語った。 

 【完】  

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ご購入ありがとうございます!  

せっかくご購入いただいたのですが、続きが何もなくてすみません。 

この作品は、2006年の「超-1」と言うコンテストに応募したものです。ブログに公開されて批評される形式のものだったんですが、ブログは残っているのですけれど、作品は削除されていました。  

応募規定に、「著作権は著者にある」と書かれているし、もうブログにも載っていないのなら、自分の手元に戻してもいいのかなぁ、と、思い、noteに上げさせていただきました。

以上で、あとがきに代えさせていただきます。ご購入ありがとうございました。

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