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大車輪11の記録 -前編-

先日公開した記事が読みづらかったので、書き直し。舞台裏の描写をたくさん追記したので、一度読んでくれた方もよろしければ・・

大車輪11、終了!

10月19日に大車輪11が開催され、終わってしまった。

しかし、僕は知っている。
イベントが終わった後に始まる平日の寂しさが、次のイベントに向かわせることを・・

当日はどんな雰囲気だったか、一言で表わすと【予想してなかった感情をめちゃくちゃくらう】イベントだった。

あの場に居合わせた方々は同じ気持ちではないだろうか。

この前編では当日のライブについては触れず、少し遠回りして、ライブイベント大車輪の在り方から書いていきたい。

誰の想像も及ばないブッキングをしたい

イベントの肝は会場とブッキングである。

僕は【当日の雰囲気が分かるようなイベント】は他の人に任せることにしている。
これは決して否定的な意味ではなく、むしろ、そういうイベントが多数ある現状に甘えさせてもらっている。
その中で、【自分ですら当日どうなるか予想できないイベント】をやっている。
頭の中に浮かんだ組み合わせでも「いつか誰かがやってくれそう」と思った瞬間に実現させないことにもしている。

そうは言っても、だ。
イベントを通して何のメッセージも伝えられない組み合わせでは、自己満足にもならない。そのバランスが難しくて楽しいところでもある。

今回もブッキングで悩んでいるとき、POLTAのベーシストである傑さんのツイートに心を救われた。いや、気持ちを跳ね上げられた。

今回の出演者を、オファーを受けてもらった順番に並べると、POLTA→ノンブラリ→神門さんだ。先に決まっていたのは女性ボーカルのバンド2組。

「2バンドとも歌詞が強いし女性だから、男性ボーカルで強い言葉を持った人が出れば、3組とも引き立ちそうだな・・」と考えたところでたどり着いた、ラッパーの神門さんという存在。

神門さんをブッキングしようとしたときの気持ちは忘れようがない。

「当日どうなるか全然想像できないけど、すごいことになったら本当にすごいことになる」という、活字になる前の衝動が、心の底から湧き上がってきたのだ。
この全面的な分からなさこそ大車輪だと確信し、神門さん宛にブッキングのメールを2日かけて書いた。(返事はなんと12分で来た)

そうして出揃った、POLTA、ノンブラリ、神門。
当日の雰囲気は一本の芯が通りつつ、心の色々なところを掴まれる日になったと思う。

僕自身はイベント11回目にして、当日の心のすべての動き方がとても瑞々しい日になった。
イベントが終わった帰り道に「こんなに素晴らしい日があっていいのだろうか?」という大きな活字が、頭の真ん中を堂々と通って流れていったくらいに。

そう思わせたのが、冒頭の【予想してなかった感情をめちゃくちゃくらう】に繋がる。

主催者が何を考えていたか、リハーサルからどんな風に過ごしていたかを中心に書いていきたい。

リハーサル開始

2008年のイベント1回目から続いている恒例行事がある。
それは、リハーサル中にソワソワして落ち着きがなくなることだ。今回も例に漏れようがなかったし、今後も継続する。カレー100杯賭けてもいい。

なぜそうなるのか。

ずばり、自分のイベントなのに自分は一番やることがないからだ。
むしろ当日タスクに追われている主催者はどうかと思う。吉祥寺NEPOのような環境の整っているホールレンタルに限っての話だが。

しかし、やることないなりにも、何かやろうとしてしまうのが主催者の心。
よしておけばいいのに、学習したはずなのに、繰り返してしまうのが主催者の常。いや、たぶん僕だけだ。主語が大きかった。

出演者のリハに立ち会ってる間、頭は無駄にフル回転している。

「どっしり座ってたほうがいいのかな?」と落ち着こうとするも、1分も持たない。
何か起こってるのに見逃してたらまずいよな~とか、もし行き届いてないのに余裕かましてたらイラつくよな~とか・・
基本的に、先に心配してもしょうもないことを心配して過ごしている。
出演者は僕と違って一番やることがあり、神経も使う時間だから、あまり無駄なことを話しかけるのもどうかと思うし。

リハーサルは出演者によってやり方が全然違うのも面白い。

1組目だったPOLTAは、音のバランスの微調整が見事だった。
僕が「今いい音になったな」と思ったところから更に3段階くらい良くなって、2013年に出てもらったときからの違いに嬉しくなった。
あとこれは僕の勝手な予想だが、尾苗さん的には、本番のサプライズで取っておきたかった某曲があったと思っている。
それを傑さんがリハでやると言い始めたときの、尾苗さんの「え、それやっちゃうの・・」感が、なんかめっちゃPOLTAでむしろ得した気分になった。

ノンブラリはリハでも曲を通しでやるから、思いっきり見入ってしまう。リスナーは僕だけ。なんて贅沢な時間だろう。
しかし曲に入り込みすぎて、泣きそうになるのをギリギリで堪えた・・新曲めちゃくちゃいいし・・ということをメンバーに伝えたら「いや早い早い!」と苦笑されたのも良い思い出。

神門さんは本番へ向けての集中力と妥協のなさと、全方位への気遣いを兼ねていて圧倒された。そしてリスナー的立場では、この日に初めてやる新曲を世界で初めて聴いてしまえたというヤバさ・・

既にこの時点でキリがない。でももう少し。

神門さんはこの日が初対面だった。
リハから本番に向けて全神経を集中させているのが、数メートル離れていても分かる。
ひとりの人間として少しでも打ち解けたい。それなのに、話しかけようとする言葉がすべて余計なことに思えて、なかなか気の利いたことを言えずにいた。

そんな心情の中、リハでワンコーラスだけやった新曲の歌詞で「うわ、これはすごいパンチラインだ・・!」とグラッときた部分があった。
何とか口を開いてそのことを伝えると、神門さんは「ほんまですか!それは良かったです、ありがとうございます」と優しく返してくれて、僕も少し肩の力が抜けた。
(この一瞬のやりとりが、後のちょっとしたドラマになるとは思ってもいなかった)

無事に全出演者のリハが終わり、開場までは30分。

口の中がパサパサでも、物販を置くスペースを伝えたり、誰かにだけ行き渡っていない情報がないか気にかけながら場内をウロウロ徘徊する。
NEPOはB1Fのライブスペースと、1Fの受付・飲食スペースがある。出演者の皆さまも思い思いのところでくつろいでいる。

そんな中でB1Fステージ裏の控え室を覗くと、POLTAの傑さんとサポートドラムのちーさーさんは端っこでギュッと固まり、音もたてずに過ごしていた。会話している様子もない。
ライブ中のMCでの振る舞いや歌詞の内容は、キャラでも架空でもなくて、本当にああいう人たちだよ!それが僕は大好きなんだよ!
・・ということをPOLTAファンの方々にはお伝えしたい。皆さんもそんなところが好きなんですよね。きっと。

でも、そんなリアルすみっこがかりのお二人には「やることないのにすごくソワソワしちゃって・・」と打ち明けやすかった。
二人とも似たような経験があり、「分かるよ」と笑いながら同意してくれてホッとするひととき。
ああ、僕もこっち側だな~、ずっとここにいたらどんなに安らかなことか・・と思ったけど今日は主催者。ステージに立たないけど主催者だ。

尾苗さんも夕食をとりに控え室に戻ってきたり、本番1組目のノンブラリのメンバーたちも徐々に集まってきて、控え室の人口密度がにわかに上がり始めた。
僕は「出番控えた奴のみ控えに残れ!」という神門さんのラップを思い出し、出番がないのでウロウロを再開した。

間もなくして開場すると、ここから終わるまでが本当に早い。
準備期間が7ヵ月、お客さん入ってからの本番は3時間という驚きのバランス。

後編に続く・・

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