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祖父と母のチョコレートケーキ

関内に行ったからと、ホテルニューグランドのチョコレートケーキを母からもらった。
ラム酒が強く効いたその丸いケーキは、祖父がよく買ってきてくれたケーキだった。

認知症を患った祖父は肺炎を繰り返しては施設と病院を行き来している。
そんな祖父は自由ヶ丘に生まれたお坊ちゃんであり、若い頃はお洒落だったという。
結婚して母が生まれてからは横浜に居を移して仕事をしていたが、よく母にニューグランドのチョコレートケーキを買ってきてくれていたようだ。
あいにく母は甘いものが苦手であまり食べる機会が無かったようだが、僕が生まれてからも僕のために時折買ってきてくれていたことを覚えている。
お酒が強くてあんたも食べられなかったんだけどね。と、母は嬉々として語っていた。

お酒の入ったケーキを食べられるようになったのはいくつになってからだろう。久しぶりに食べたそのケーキはとても美味しかった。

認知症で寝たきりになった祖父にケーキの感想を伝えるのは難しいかもしれない。それでも祖父が虹の橋を渡る前に伝えなければいけないと思った。

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