一路前行 EP2  その3

秋培扎西 我々はここ(卓乃湖)でおおよそ二か月駐在する。
隊員達には苦労を掛ける。
片づけたら出発だ。

身支度を整え、出発の準備を行う隊員達。

罗松龍多 可可西里保護監視員

カメラマン(?) 帰ったら何したい?

罗松龍多 シャワー浴びたい

施設内の戸締りをする秋培扎西

子カモシカを車に乗せる秋培扎西

秋培扎西 保護した子カモシカを保護ステーションへ連れて帰る。
体力が落ちてるから、適当な時期を待って野生に返す。

車は轍の後を一列に進む

家族と通話する秋培扎西

秋培扎西 出発したよ 今日の天気はまあま良いし、山も問題ない
道の状態もいいし、雨も降ってない 安心して
分かった バイバイ

頼瑗 誰と話してたの?

秋培扎西 義理の娘
  ※息子さんの妻のこと

頼瑗 ここ何日か夜ずっと雨降ってて、この道走りにくそうだけど

秋培扎西 どこも一緒だよ。いい事は伝えて、悪いことは言わない。
可可西里4・5万㎢の最も重要部分は外周の巡回をきちんと行う事。
中まで入ってくる必要はないんだ。我々も出来る限り来ないようにしてる。

ぬかるんだ道を走る車

車を停めて降りる秋培扎西

秋培扎西 また嵌ったたみたいだ。見てくる。

泥に嵌った車

頼瑗 これってよくあること?

秋培扎西 なんてことないよ、すぐに終わる

車中の保護した子カモシカを見る秋培扎西

別の車にベルトを掛け、牽引する
車を押す隊員達

隊員達 頑張れ、頑張れ

何とか脱出
 ※ちなみに、私の実家は雪が降ってよくタイヤが空転する車をみかけるんだけど、脱出するのに板とか毛布を使います。泥はダメなのかな?
とふと疑問に。あちこちぬかるんでるから意味ないのかな?

秋培扎西 なんてことない、ゆっくり行こう。焦らないで。
 ※慢慢来 (ゆっくり行こう)别着急(焦らないで・焦ることないよ)
 この中国語好きです。

隊員(疲れた様子)

頼瑗 疲れた?

隊員 疲れた

休む隊員達

寝転んでいる隊員 滑らないように気を付けて

頼瑗 疲れたでしょ?

子カモシカを囲んでいる隊員達
子カモシカの為にミルクを作っている

秋培扎西 自分達は食べなくてもいいけど、子カモシカには食事させないとね。多めにあげないと、朝少ししかあげられなかったから。
(車に)酔ったら困るし。

才索加(隊員) 帰宅の道は世界で一番美しい道。ほんとだよ。
もしかしたら今日の夜はここ(可可西里)で寝ることになるかも。
家に向かってるんだったら、満足だよ。
娘に会いたくて仕方ないんだ、本当に。
一か月近く会ってないから。

水溜まりで哺乳瓶を冷やす隊員たち

5人で保護した子カモシカにミルクをあげる

秋培扎西 飢え死にするところだったね
(この子たち)みんな思ってるよ、泥に嵌って僕たちに食事くれないって

出発

頼瑗 ここに属してると思う?

秋培扎西 あなただって属してるよ
 ※属于の翻訳が難しい・・・
我々は三尺の高さから飛び出ることはできない。みんなこの場所にいる。
 ※中国の一尺は1/3mだそうです。ちょうど1mってこと?
 ※ここの意味が分からないのですTT、なんとなくしか・・・
この時、天であり地であり全て可可西里の懐に抱かれて溶けて一体になれるんだ。
 
 

可可西里の風景
車の俯瞰

頼瑗 可可西里で孤独を感じることはある?

秋培扎西 ないよ 人間自体が自然の一部だから
でも町に戻ったら貴方はただ貴方

胡歌  可可西里に入ることが許された人は(可可西里に)選ばれた人なんだと思う。(可可西里が)このチームを選んで(可可西里は)秋培扎西を選んだ。この保護監視隊員たちを。(可可西里は)知ってるんだ。彼らがこの土地を愛している人間だって。

ボランティアと書かれた赤い腕章をして双眼鏡を覗く胡歌

胡歌 残念なのは我々は(可可西里に)選ばれなかったという事。
もし今の自分じゃなかったら、選んでくれたのかもしれない。
もしかしたら別の身分で、または違う方法で入らせてくれたかもしれない。

胡歌・陳龍 側に立ち

胡歌 今日(カモシカ)多いね

劉涛 ここにいるのよ 卓乃湖から母カモシカが子供を連れて戻って来てるの。今日は一日中ここに居て道を渡ろうとしてるの。
だから私たちここで待って、車を通行止めにして渡らせてあげるの。


警察が道路を通行止めにする

警察 本当は朝8時前後に渡らせたかったんだけど大きい車が通って
クラクションを鳴らしたから、(カモシカの群れ)が驚いてあっちに戻って行っちゃったんだ。

胡歌 君たちの経験から判断すると(カモシカたち)は渡れると思う?

警察 もうすぐ渡るんじゃないかな

胡歌 すぐか

胡歌は双眼鏡を覗き
陳龍は望遠レンズが付いたカメラを覗き
待つ

劉涛はスマホでカモシカの群れを確認している

スマホで撮影された映像
カモシカの群れが道路を渡る

深夜1時、15時間かけて隊員たちが無事に
国道109号線の索南達傑保護ステーションに戻った

秋培扎西 みんなお疲れさま

秋培扎西の肩にはカタが掛けられている。
 
子カモシカ一匹ずつカタを掛け、
保護ステーションの中へ

外は雨

朝、雨が止んだ

保護ステーションの部屋

頼瑗 先に短いけど映像見てみましょう
これは卓乃湖から持ってきた映像。
内容はどんな感じか、どんな物語があるのか
見てみましょう。

撮影隊、秋培扎西と隊員たち
皆で録画された映像を見る

映像内

頼瑗 この美しい風景を見て、何を考えてるの?

秋培扎西 静謐
山の上から俯瞰して見た時、毎回そんな心境になるよ。
1980年代から90年年代、殺戮が一番酷かった時、
特に密猟が激しかった時、この一帯は全部人だった。

見入る3人

保護ステーションで保護された子カモシカ


劉涛(映像みながら) 母カモシカとはぐれた子カモシカ達?

秋培扎西 そう

映像内


車を押す隊員達

隊員達 頑張れ、頑張れ

何とか脱出
 

子カモシカを囲んでいる隊員達
子カモシカの為にミルクを作っている

秋培扎西 自分達は食べなくてもいいけど、子カモシカには食事させないとね。

映像見ながら微笑む胡歌

映像

雷鳴。
激しい雨の中、車を運転する秋培扎西
後方に車を牽引しながら走る

秋培扎西 落雷 雨降り 

頼瑗 心臓が喉から飛び出そうな感覚よ
本当に怖い

秋培扎西 なに怖がってるんだ 俺たちが一緒だろ

頼瑗 そうね

映像をみる頼瑗、微笑む

秋培扎西 発電機が焼き切れた?

雨の中修理する隊員

電話する秋培扎西

秋培扎西 すぐ着くすぐ着くあと1キロ

相手 一キロで索南達傑保護ステーション?

秋培扎西 んー、(国道109)道路まで

相手 騙してるでしょ。走りにくそうだよ

秋培扎西 走りやすいよ、ただゆっくりなだけ。
子カモシカいるからね 泣かないで

隊員 懐中電灯ある?懐中電灯

秋培扎西 明日の夜には戻るから
みんな元気だよ うんうん

頼瑗 いい事は報告して悪いことは言わない

頼瑗 心中の一番きれいな明かりってなに?

秋培扎西 車のライト

頼瑗 みんな寒くないの?

雨の中給油する隊員達

隊員 寒いよ

隊員達(チベット語で何かを叫ぶ)

頼瑗 何て言ったの?訳して!意味が分からないわ

秋培扎西 今日の夜索南達傑ステーションか不凍泉(ステーション)で休むか、それとも急いで家に帰るか聞いたんだ。
家に帰る方にみんな手を挙げたんだよ

ニコっとする胡歌

劉涛も嬉しそうに隊員たちを見る

映像内の隊員たちの声 家に帰るぞー!
家に帰ろう 出発!

頼瑗 治った?龍龍?

秋培扎西 治ったよ 隊員たちは家に帰りたいんだよ
帰りたい、帰りたい
歌を歌ってあげるよ

頼瑗 歌って

秋培扎西 「英雄が馬に乗った場所」っていう歌

頼瑗 いいね

秋培扎西 可可西里は英雄が馬に乗った場所なんだ

頼瑗 確かにみんな英雄だと思う

秋培扎西 それは君から見たらね 僕たちの家で根っこなんだ
♪陽光は母の歌のように大地を温め
陽光は高原の上に飛んできた羽を挿す
ここは英雄が馬に乗った場所
古くからの牧歌は雨風の中を漂い
千年の待望は夢ではない
ここは英雄が馬に乗った場所♪

ここで映像は終了

陳龍、涙を拭いている

胡歌 細かい事に気が付いたんだけど、車のドアを閉める時、
バンって勢いよく閉めないで、ゆっくり押して閉めたよね
子カモシカが驚かないように

秋培扎西 そう。気を付けないとね
(子カモシカ)の最後は必ず自然に返すから
その間自分たちが余計な事をするわけにはいかない
自然界で生き延びていく力がない時には少し補助してあげる
ほんの短い時間一緒にいるだけ。
この自然保護区が出来てからチベットカモシカの保護を中心としている。
可可西里自然保護区の管理以外にも、殺戮を防ぎ、密猟の阻止も始めた。

胡歌 あの子カモシカの目を見た時、生まれたばかりの娘にとても似てると思ったよ。だからすごく感動した。
  ※パパの顔!
陳龍 この映像の中で話している事は多くないけど感動したよ。
話している事は本物で、話すこと全てに心を掴まれて、胸を打たれた。
(頼瑗に向かって)声を聞いてて思ったけど、あの日の夜はとっても怖かったんじゃない?

頼瑗 本当に怖かった

陳龍 声が震えてたもんね

頼瑗 本当に怖かった

陳龍 でもあと1キロって聞いたとき、僕には本当に1キロだったか分からないけど、(秋培扎西)あの話を聞いたとき、心が温まったよ。
そうじゃない?龍龍

龍龍(恥ずかしそうに) うん

劉涛 毎回出発する時にあなた達は家族になんて言うの?

秋培扎西 致し方ない だってこの道を選んだからには
辞めるのは簡単だけど でも継続するのは難しい
時々とても葛藤がある。葛藤してる。
でも自分でこれと決めたならば・・・
実はこの話はこの番組の最後に言おうと思ってたんだけど、
今少し興奮してるから言うよ
我々が行っていることは実は贖罪の過程なんだ
この贖罪は人類が自然にしたことに対して。
危険だろうが困難だろうが家庭だろうが構っていられない
可可西里に居る時、人生の中で一番時間が掛かったのは
24時間で200m(しか進めなかった)。
報道を見た人に言われるんだけど、道路が見えて
携帯も圏内でじゃあなんで行かないのか?って
そう、確かにそう。でも車に子カモシカがいる。
車は我々の命綱。保護した子カモシカを失いたくはない。

胡歌 さっき、辞める方が継続するより簡単って言ってたよね
最初のころは僕もそう思ってた。
でも一定の期間やってみたら、辞めることの方が継続より難しいと
思ったよ。

秋培扎西 叔父(索南達傑)が犠牲になったのは40歳。
親父(扎巴多傑)が死んだのは45歳の時。
自分は今41歳。
可可西里に来ると決めた当時、45歳までは絶対生きようと気合をいれたんだ。

頼瑗 この子達よく見るとみんな若いけど、才索加、90何年に来たの?

才索加 1996年

頼瑗 1996年。白玛は?

白玛 僕も1996年

頼瑗 あなたも1996年。龍龍は?

龍龍 1995年

頼瑗 才仁?

才仁 1999年

頼瑗 1999年 当時なんで保護隊に入ろうと思ったか聞いてもいい?

龍龍 この仕事が好きだから

微笑む劉涛

胡歌(劉涛に向かって) 龍兄と一緒に座ろう

劉涛 今日の午後歌を探したの みんなに捧げるに相応しい歌を。

胡歌 たぶん音外しちゃうと思うけど

陳龍 たしかに(笑)

胡歌、劉涛 スマホ見ながら
陳龍は楽器を持って

歌う3人
♪雲に向かって あの山の方
海の中 
どこに向かって歩いたらいいんだろう
日没前 

あまりに音を外すので

劉涛 もう一回!なんだか違う気がする

笑う3人

劉涛 これはダメでしょ(笑

胡歌 実は寸劇を演じてるだけだから(笑

笑う3人

秋培扎西 気にしないよ

陳龍 もう良いでしょ?

劉涛 良いよ

最初から始める3人

♪雲に向かって 山は彼方
海の中 
どこに向かって歩いたらいいんだろう
神よ あなたはどこに居るの?
山よ 恐れてる
海よ 連れては行けない
終わりは本当に在るのか♪

胡歌 「雲に向かって」と言う歌です
我々は今、雲に一番近い可可西里に居て、
可愛いあなた方に出会った。敬意を表したいと思います。

秋培扎西(手を合わせて謝意を伝える)

劉涛 美しい可可西里に、あなた方のような勇者が
居て命と山川雲海を守っている。

陳龍 現在の可可西里にはもう銃声はしない。
永遠に同じことが起きないと信じているよ。
敬意を表します。この土地にかつて居た命たちと
今居る命たちへ。扎西の徳だ!
  
秋培扎西(手を合わせて)ありがとう

ハイタッチする3人

胡歌 テレビに出てる俳優の歌唱力がこんなだって知らなかったでしょ?(爆笑

一同大爆笑

劉涛 ドレミファすら合ってない!
じゃ、

陳龍 次は君たちね

秋培扎西たち
♪澄んだ空を仰ぎ見たら
古い歌を思い出した
それは母が太陽に捧げた歌
空に暗雲が立ち込めていても
あなたのその白い形は敬虔な心を照らし♪

劉涛 バイバイ!ありがとう!
ハグしましょ!

秋培扎西とハグする劉涛

秋培扎西 気を付けて

劉涛 分かったわ

秋培扎西(ボランティアの腕章を返そうとした胡歌に)
これはあげるよ
可可西里に一度来たら一生可可西里に情が残る

胡歌(秋培扎西と握手)ハグしよう
体を大切にね

秋培扎西 道中ご無事で

劉涛 この二日間とても嬉しかったのは、素晴らしい人たちと出会えたこと。
彼らの精神は骨に刻まれて、頑強で、惜しみなど一切ない。

バックに3人が歌った原曲が流れる

胡歌 僕らは行くべきかどうか

陳龍 龍龍!(ハグ)
素朴で誠実で 本当に心を打たれた。
あまりない事だから

ここからは3人の映像

隊員 ここを愛してる 可可西里も、チベットカモシカも

胡歌 青海という場所に来て帰る時、毎回内側から外側にむかって
洗い清められた感覚になる。
僕はここ数日街から離れて自然が支配するこの場所に来た。
あなたも自然の中にその身を置いたとき初めて、
人は自然の中の何者なのか、何の種属か、内面でなにかしら引き起こされ考え始めるんじゃないかな?

帰路の途中、運転している陳龍が歌い始める。3人の歌声。


胡歌 ナレーション
卓乃湖の過去と現在はすべてここに漂っている
人類と自然の交流について語る時、
前進と後退
殺戮と保護
過去と現在
ここに収束する
漂う死と新しい命
私たちと一緒に
光を追いかけて
時間の中を旅しよう
自分の目で見て
耳で聞いて
かつての姿を見てみよう
遠く過ぎ去った鳴き声を聞いたとき
未来で何をしてはいけないか
気が付くだろう
誰もがみな過去と一緒に前に向かって歩いていく
ここは我々を振り返らせる
考えよう
人類は自然界の中で
いかに前進後退するか
他の生命と距離を保ち
共生共栄を図る

思い出は残して 痕跡は残さない



美しい風景は 門を閉じたりしない
空 荒野 海と人生
道には歩く子供 明るくて単純
小鹿のように 星を仰ぎ見る
どうか旅路の黄昏にある私と変わって欲しい
波と雲
起こったすべての事 出会い 生存
空には太陽、月と星
地には異郷人もなく
みな呼吸も荒く走り回り お互いを愛し 支えあう
命は生となる
道には熱い涙と純真があり
砕けた傷跡を抱きしめる
(※ここの胡歌がとても良いですね^^
怖がらないで クジラが遠くで歌ってる
灯台の歌声
少しの愛で貴方と旅する

空には太陽、月と星
地には異郷人もなく
みな呼吸も荒く走り回り お互いを愛し 支えあう
世界には優しい霊魂が
深夜 蛍火のように舞う
空に人がなくとも 谷に明かりがなくとも 恐れはしない
ただ知り人を探し続ける
少しの愛で貴方と旅する
短い時間愛した貴方朽ちない旅
   ※歌の訳は本当に難しい!この歌は特に。



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