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琅琊榜 第十三章 荒园疑骸

2024年11月3日

「荒れた屋敷の疑惑の骸」
かな?

ドラマだと7話 廃園
ですが、霓凰と梅長蘇が元林府近くに行くシーンはありません。
このシーン、とっても良かったですけどねぇTT

※こちらの章も霓凰に関するドラマと違う展開があるので、
良かったら数行太字で始まり、数行太字で終わる間の部分は読まないように
お願いします(o_ _)o

この章は、前回から続き夏冬とのシーンから始まります。
2人とも郡主を思い、しばし黙り込みます。
天は暗く曇り、雪が降りそうな気配。

◎◎◎◎
暴風雨が来る前のような静けさは短いものだった。
この時、彼女は深呼吸をして、突然体を翻し
目の光は激しく燃え盛る炎のごとく、
まるで梅長蘇を巻き込むかのようだった。
口調は固く一層厳しさを増す
「この話を知っているならば、
私に教えて欲しい
その相思相愛の彼は
なぜ現れないのか⁈」
「なぜ現れないのか?」梅長蘇は凄惨に笑うと
顔は雪のように真っ白、ゆっくり目を閉じ
独り言のように言った。
「私に聞いても構わない・・・だが私が・・・どうして聞けると言うんだ?」
思い人はなぜ来ない?なぜ来ない?

すでに地獄に落ちた人間が、
まだこの世に生きているが故に、
苦痛に揉まれ、右に左に苦しむ。
ある人からすれば、
男女の相思相愛は水のごとく純粋で美しいもの。
しかし兄弟の友情の中でそれは貴重なものと言えるだろうか?
この世で最も瀟洒で俗世に捕らわれない人間が
何かの信念をもっていたとしたら、
半分でも友達に恥をかかせたくはないだろう。

情と言う一つの字は、
避けて通れず、
表面上はたとえ笑っていたとしても、
心の中に蓋をしても閉じ込めきれず、
彼の心を傷つけるだろう。

あの時、迎鳳楼で彼女が江左盟の宗主を見た時、
どれだけの言葉が口の端まで登りかけていたことか。
問いたくても問えない時の苦悩と同じ様に、
あの固く平常心を保とうと取り繕った表情で、
内心を押し殺そうとしても抑えきれない。

当初あの者を霓凰の元に遣わした時、
まさかこんな結果をもたらすとは予想だにしていなかった。
でも今このような澄んだ雪の様な、
真心に触れたとき、
自分は古いしきたりに捕らわれ、
彼らの障害に変わっていたのではないか?

林殊の運命は間違いだらけだ。
少年時代の愛情もない婚約の為に、
霓凰の時間をこんなにも無駄にしてしまった。
今の病体では長生きも出来ず、前途は多難。
更に女性の愛情を繋ぎとめる余力は半分もない・・・

だから茶を用意し、夏冬を待ち、
今ここでこうしている。
「夏大人」梅長蘇がもう一度目を開けた時、
目には安らかさと優しさがあり、
優しく夏冬を見つめ、
声も穏やかで落ち着いていた。
「蘇と郡主は深いお付き合いはありませんので、
直接お話できないこともあります。
ここにお茶を用意しお客様としてお引止めし、
物語まで聞いて頂きました。
どうか蘇の代わりにお伝え頂けませんでしょうか?
郡主はずっと迷われていますが、
直接私に彼の事を問われた事はありません。
ですが私は彼女の中の疑問を承知しております。
確かにあの者は江左盟の一員で、
これまで郡主の気持ちが分からなかったため、
間に誤解が生まれるのではないかと恐れて、
この者に多くを尋ねませんでした。
ですが郡主とお近づきになれましたので、
はっきりとしなければならない事が
分かって参りました。
そこで郡主にはご安心召されたい。
あの者の気持ちは郡主の気持ちに絶対に劣っておりません。
今はやらねばならぬ事があり、しばらく金陵に来られないのです。
郡主がもし蘇を信頼して下さるのならば、
あの者にしばらく時間を与えてやって頂ければ、嬉しく存じます。」

夏冬はこの話を聞き、一時反応が無かったが、
よくよく考えた後、眉根を寄せて言った。
「男たるもの、思い切った方が良い。
愛しているなら愛してる、
愛していないなら愛していない。
そんなに難しい話じゃない。
やらなきゃいけない事があったとしても、
金陵に来ることさえ無理なの?」

梅長蘇は多くの説明はしなかった。ただ淡々と言った。
「江湖の人間は、自分の思うままにいかないのです。
夏大人、どうかお許しください。」

夏冬は冷たく「ふん」と言い、そして言った。
「当然郡主と関係あるならば、
率直に話もできたことだし、
代わりに言っても差支えは無いわ。
けどその代わり彼にも伝言を頼みます。
相まみえた暁には、
この夏冬の門は簡単に超えられないとね」

梅長蘇は微笑して言った。
「郡主は夏大人という得難い友がおりますね」

この話を聞いて、夏冬は突然眼を冷たく変え、
冷え冷えと言った。
「彼女はまだ私の友達じゃない。
嫁いだあとに、この ’友達’ 二文字を考えてやってもいい」

「そうなのですか?」
梅長蘇はこの言葉になんら興味もなく、
ついでに言った。
「もしや当時失効したはずの婚約のことですか?
郡主の結婚が一日遅れたら、
その一日分林家の者になると。
でも夏大人にとって、
林家の者は貴方の不俱戴天の仇ではありませんか?」

この話は無意識に出たようだったが、
夏大冬が耳にした時、
体は固くなり、まつ毛は激しく動いた。
梅長蘇がこの話を知っていたとしても不思議では無かった。
当年の事案は朝廷によって故意にその存在を薄められたが、
大勢の人間が巻き込まれた大事件は
江左盟の調査力を以ってすれば容易に分かること。
何の障害もない。
彼女を震撼とさせたのは、
この話を聞いた時の自分の感覚だ。
心の中に突然沸き上がる抑えきれない感情の奔流だった。
たとえ12年余りの月日が経ったとはいえ、
夢の中で涙を流さなくなってて久しいが、
それまでに多くの時間の修練を必要とした。
それでもまだ完全に癒された訳ではない。
この優秀で優雅な書生の簡単な「林家」の二文字に
未だに心の中に血の滴るような痛みと、
骨に刻まれた恨みを引き出され、
黒髪のなかの一房の白髪は永遠に鮮明に輝き、
どの時でも、どこに居ても無視することは出来ない。

梅長蘇は彼女から視線を外した。
彼女から突然現れた脆弱な一面を見るに耐えなかったからだ。
掌鏡使である夏冬は強者の中の強者。
しかし彼女の誇りある身分の仮面をはぎ取った時、
現れたのはあの悲惨な悲劇によって残された悲憤の未亡人の一人だった。

覚えているのは、彼女が嫁いだ時の事。
若く美しく、生き生きとしており、
花嫁の赤い布を取り去り、
古いしきたりに捕らわれず新居から出て
酒から夫を守った。
明るい蝋燭の下の美しい二人は、
一人は赤焰軍の名将、一人は懸鏡司の優れた門徒。
堂上の師長は笑って祝福し、
軍の仲間は慶賀を表し、
この時から朝から晩までお互いに支え合う。
この幸福は長く続くものだと思っていたが、
たった七年の間しか続かなかったなど、
誰が想像しただろうか。
全ては灰に帰し、
まるで古道の傍らで二人の別れを見るかのように、
十二年間の未亡人と再会するとは。
◎◎◎◎
ちょっと長めに訳してみました。
結婚式の事が描かれていたので、つい長くなりました。
梅長蘇と夏冬のやり取り、とても良いです。
ドラマの夏冬も大好きですが、
原作の夏冬も大好きです。
霓凰より気性が激しいですけど、
でも同じように毅然としていて、
何よりカッコいい!!
中性的なイメージなのに
麗しいなんて、ずるくない?(笑

もう一つ、夏冬と霓凰に関する描写です。
◎◎◎◎
梅長蘇は心の中で分かっていた。
この世でもし誰かが霓凰に不利なことを行ったら、
最初に立ち上がるのは夏冬だ。
例え彼女が嫁いでいようといまいと、
彼女が林家の者であろうとなかろうと、
彼女に一番近い友は夏冬だ。
戦場で結ばれた友情は、
この世で最も簡単に変化することのない友情なのだ。
◎◎◎◎

夏冬は梅長蘇が帝位争いにくみするのを良く思っていません。
また、昔の事案の件に絡み、靖王を避けています。
これはドラマと同じです。
梅長蘇はさりげなく、靖王が旗下に入ったら皇太子、
誉王ともどちらに入るにせよ、
おおいに助かるのでは?
とカマを掛けますが、夏冬は大笑いして靖王の性格からして、
どちらの旗下にも入らないだろうと言います。
梅長蘇は暗に靖王は懸鏡司の調査対象になっていない事を確認しました。

◎◎◎◎
相変わらずの靖王だが、
かつて赤焰小帥のよき友であった。
今は梅長蘇が全力で支持する未来の主君だ。
江左盟の宗主は静かで深い目の色で、
光を一掃してしまった暗い、雪の降りそうな天空を望み、
厚い雲の間に見える一筋の細い光を見つめた。
靖王の為に、持てる力を全て使う。
雲南穆府には本来それほど気に掛けなくても良いが、
ここにきて重要になったのは、掌鏡使の夏冬だ。
◎◎◎◎

この後に、やっと聂鋒が出て来ました。
赤焰軍前鋒大将、聂鋒。

追記:ここで聂鋒が出て来ますが、
夏冬の結婚相手は聂鋒ではない様です。
聂家の誰かの様ですが、誰かは書いてありません。

2024年11月21日 

梅長蘇は夏冬の傷の具合を聞き、
夏冬は大した傷ではないのですぐ治る、と言います。
飛流に負けたと認め、これからも鍛錬を続けていくと言います。
そして、皇帝に逆らうと懸鏡司が動くから
と忠告のような、
脅しのような言葉を告げて帰ります。
夏冬が戻ったため、慶国公の事案は動き出します。

ある日、梅長蘇は景睿、豫津、謝弼と出かけ、
購入したと言う屋敷へ向かいます。
これがドラマ部分の廃園の一部です。
ドラマ通り、荒れ果てた屋敷です。
豫津が古井戸に落ちかけ、玉佩を落としてしまうのも同じ。
景睿が回収しに古井戸に入り、骨を発見するのも同じ。
すぐに京兆伊衙門へ知らせに行きます。
ここでこの章は終わり。
本格的な廃園事案は次章になります。


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ばなな
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