見出し画像

【ボタンとランプ編】公共建築工事標準に準拠した制御盤製作の主な仕様について・2

下記の記事の続きです。書式等は同じです。

はじめに

ボタン(押ボタンスイッチ)とランプ(表示灯)に関する規格は、国や業界による独自の慣行がそれぞれ強固に存在するため十分に統一されておらず、厳密に規格に沿った設計をしようとするのは難しい状況である。例えば、国際規格であるIEC 60073に準拠したボタンの色を選ぼうとすると、運転ボタンは白、停止ボタンは黒となるが、この色別を採用している制御盤は現状極めて少ない。標準仕様書にも、ボタンやランプの色、配置に関する仕様は規定されておらず、それぞれ関連する規格に依存する形になっている。

標準仕様書が参照する主な規格

第1部で示した規格、JSIA 113『キャビネット形動力制御盤』およびIEC 60204-1『機械類の安全性―機械の電気装置―第1部:一般要求事項』のほか、以下の規格を主に参照している。

IEC 60447『マンマシンインタフェース (MMI) −操作の基準』

標準仕様書はIDT(内容一致)規格であるJIS C 0447を参照している。

IEC 60073『表示装置(表示部)及び操作機器(操作部)のための色及び補助手段に関する規準』

標準仕様書はIDT(内容一致)規格であるJIS C 0448を参照している。

ボタンの配置

詳細は《JIS C 0447 (IEC 60447)・5.2 図3》を参照

ボタンの配置は、「結果を増大させる操作機器(操作部)」(この場合、運転ボタン)を、あるいはとする。《JIS C 0447 (IEC 60447)・5.1.2》
上下配置の場合に運転が上になるのは慣行にも沿っているが、左右配置では運転を左とすることも多いので注意が必要になる。

ボタンの色

詳細は《JIS B 9960-1 (IEC 60204-1)・10.2.1》《JSIA 113・8(c) 表9》を参照。

は,非常停止及び非常スイッチングオフ用アクチュエータ(非常時の使用を想定した電源断路器を含む。)に使用しなければならない。アクチュエータのすぐ背後の色は黄としなければならない。赤のアクチュエータと黄の背景との組合せは,非常操作機器だけに用いなければならない。

《JIS B 9960-1 (IEC 60204-1)・10.2.1》

IECは赤色のボタンを非常停止以外の用途に用いることを推奨しないため、現在広く採用されている運転(緑)、停止(赤)の色分けは非推奨となる。また、《JSIA 113・8(c)》の場合のように赤い停止ボタンと赤い非常停止ボタンが並ぶと混同が起きやすいとして、専用銘板などによって非常停止ボタンの背景に黄色を配置し注意を促すことを規定している。(上記の図はIDECのHNAV-27を取り付けたところを表している。)JSIAはIECの推奨を採用していないが、ボタンの色については規定によらなくてもよい旨の注記を設けている。《JSIA 113・8(c) 表9》

ランプの色

標準仕様書は、ランプ(表示灯)について、LEDを用いることと、400V回路の場合に変圧器を設けることの他は規定していない。《公2・1.12.6(16)》

ランプ色のダブル・スタンダード

JSIAの規定は特定の監視機能に特定の色を割り当てる規定のみのため、比較的明瞭である。しかし、IEC/JISの規定は「人体及び/又は環境の安全に関して」「工程の状態に関して」「装置の状態に関して」の3種に規定が分かれており複雑である。慣用的には、IEC/JISに乗っ取った場合停止を赤としたものが多いが、これはJSIAを採用したものとは逆になってしまう。そして、このようなダブル・スタンダードが定着してしまっており、どちらかに統一される見込みのない状況である。IEC/JISは先述の通り赤色を非常停止が必要な状況以外で用いることを推奨しないため、その考え方に従うと、表6の適用により、運転も停止も共に白となる。しかし、このパターンを採用したものは現状稀である。なお、故障灯の色もIEC/JISでは黄色、JSIAでは「橙(オレンジ色)」と微妙に異なる。

照光式ボタンの色

JSIAの規定によると、運転ランプは赤、運転ボタンは緑、と機能名と色が逆になってしまうが、照光式ボタンの場合は、ランプ色の規定に従う。《JSIA 113・8(c) 表9》。

IEC/JISの規定は、厳密にはより複雑であるが、JSIAの場合と違って機能名と色がボタン・ランプ間で逆になるようなことがないので、それらの色指定の場合と同じと考えて差し支えない。《JIS C 0448・6.2.2》

結局

規定と規定が真っ向から逆になっている場合もあり、実際の製作でもどれかの規定にきちんと従うというよりは、顧客との取り決めによって個別に判断することになっている。しかし、これでは標準化に関する基本的な考え方に沿わないので、今後の見直しが期待される。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?