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桜の葉と妄想
サクラの葉の突起物
サクラの葉をひとつ取って見てみよう。
虫がついているのか、あるいは病気か……葉の付け根に1つか2つ豆状のコブのようなものが付いていることに気が付くだろう。
これは虫でも病気でもなく、「蜜腺」というれっきとした器官なのだ。
ここで蜜腺について説明しよう。
蜜腺とは蜜を分泌する器官・組織のことで、花にこの蜜腺があると蝶や蜂などの昆虫が餌に寄ってくる「花の蜜」ができる。
こうして集まった虫に受粉の手伝いをさせるのだ。
サクラの葉の蜜腺ももちろん蜜を分泌しているので、舐めてみると甘さを感じるらしい。(実際に試してみる勇気はないが……)
挿し木に成功した我が家の桜の苗。
蜜腺の役割
サクラの葉のコブが蜜腺だということがわかったところで別の疑問が湧き上がるだろう。
なぜ葉に蜜腺を持つのか――サクラの花にも蜜腺を持っているにも関わらず――という疑問である。
実はサクラの葉の蜜腺には外敵から身を守る効果があると考えられている。
サクラにとっての外敵とは、葉を食べたり樹液を吸い取ろうとする昆虫だ。
これらの「害虫」を駆除するために、葉の蜜におびき寄せられたアリを利用しているとされている。アリたちが蜜を集める最中に見つけた虫を餌として持ち帰ったり、攻撃することでサクラは外敵を排除するのだ。
余談
ここまでの話で、サクラという植物はほかの動物をうまく利用することに長けた生物であると言えるだろう。
他に利用されている動物はいないだろうか?
サクラと関わりの深い生き物、人間もまたサクラに利用されているのではないかと妄想をしてみる。
植物を鑑賞する行事は紅葉狩りやウメの花見と様々あるが、規模と人の集まり方はサクラが抜きん出ている。桜並木や花見のための施設が作られていることからもわかるだろう。
花の美しさにまんまと釣られてサクラの繁栄に手を貸しているとは考えられないだろうか。
花見の場面を思い浮かべてもらいたい。
サクラは日当たりが良く、比較的開けた場所に植えられている。これは人間がサクラを鑑賞しやすくするためにそうした場所を選んでいるのだが、植物のサクラにしてみれば、日光や栄養を取りあうライバルの少ない場所を苦労せずに獲得できる、という非常に大きなメリットがあるのだ。
夜のサクラを夜桜と呼んで、昼夜を問わず木の下に集まった人が宴会を開いたならば、まだ柔らかい新芽や花を狙う野鳥が寄り付きにくくなり、外敵の撃退を知らぬ間に手伝っていたことになる。
古くからサクラには不思議な力があるとされ、度々妖怪のように扱われることもある。あながち間違ってはいないのかもしれない。
信じるか信じないかはあなた次第……。
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