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月城莉奈を追いかけて、渋谷。キミに贈る朗読会 サトラレ The Reading Vol.8

こんにちは。ばんぶーおじさんです。


 「この人知ってるな〜」が「この人を見ていたい」「この人を応援してみたい」に変わる瞬間は唐突に訪れます。それはむっとした熱気がいくらか和らいだ、今日のような秋晴れの空のようなものです。「今日はシャツ一枚あると丁度いいな」ふと思う。誰かがそのシャツのような存在になったときが、ファンになった、推しになった、或いは恋に落ちたまさにその瞬間なのではないでしょうか。


※このブログは月城莉奈さんにひと目会いたくて、朗読劇に参加した竹のブログです。朗読劇の感想も含めて彼女を中心にできるだけ記憶、インプレッションに基づきお話させていただく為、言葉足らずや表現の差異はご容赦ください。


月城莉奈さんについて

 月城莉奈さんがスタイルキューブの所属になってごく初期に公開された動画がこちら。

 うーん。実に初々しい。月城莉奈の声ラブ、Youtubeでのゲーム配信、電撃ゲームライブのMCなどなど…。徐々に、「なんとなく見てみようか」という気持ちは、「(放送や配信がない週は)なにか物足りないな」という気持ちに、徐々に変わってきたのです。


 彼女はまたRinamooNという名義で歌を歌い、デビューもしています。

 みんな「りなむん」とか「りなちゃん」と呼んでいますが、僕は彼女の名字、「つきしろ」の響きが好きで、「月城ちゃん」と呼ばせてもらっています。心地よい透明な声、ゲーム中のイケイケな雰囲気とのギャップ、そうした「幅」の可能性が彼女の魅力です。

彼女のYoutubeチャンネル、そして「#つきしろ生放送」もぜひご覧ください。


 「キミに贈る朗読会 サトラレ The Reading Vol.8」への出演が発表されると、初めて人前に立って行う彼女の演技を見たいと思い、発表当日に飛行機を予約していました。RinamooNのTシャツを着て応援に行かないといけない。それは激しい衝動でした。

(これで君もりなむんランドのメンバーだ!)
実際に何人か着ている人をお見かけして嬉しかった


入場

 渋谷駅近郊の地下劇場。高校時代(演劇部の裏方をやっていた)を思い出してどこか懐かしさを感じていました。検温、消毒、特典のサイン入りポストカードを受け取り(月城ちゃんの初サインゲット!!)小綺麗なエントランス部分を抜け会場へ入ります。スツールが6つ。中央にはお立ち台。白の布がかけられ、空調の風で揺れています。客席の椅子も座り心地良く、小劇場らしい天井の低さ、舞台の近さもまた良い雰囲気でした。


A公演

 開演の合図とともに6人が入ってきます。文字通り初めて面と向かってその姿を見るものですから、僕も大層緊張しています(笑)。でも姿勢良く、上品にほほえみながらも堂々と前を見据えたその姿を見ると安心して、じっと耳を傾けることができました。

 「里見」(千春)は基本的に舞台の中央に常に立ちますが、その背後、A公演でお立ち台の上に立つ「心の声」は月城ちゃんでした。台に登る姿、目が上を向き、頭が上を向き、目が話しかけている相手を見つけ、最後に首が動き共演者の方を見つめるその姿・横顔に見惚れていました。そして彼女の声がふわっと里見役の声と重なり、耳に届くこと、目の前で観劇できることに、とても特別な気持ちになりました。


 本音や本音に基づく声音を進んで表に出す人はそういません。極めて人間的に「里見」を演じる千春さんに対して、背後から見下ろすような月城ちゃんの「心の声」は、複雑な模様をその声音に浮かべていました。例えば「脳天気なやつ」というセリフ。終演後のトークでも話がありましたが、この言葉一つとっても、自分よりも能力の劣る「石川」(社本悠)が大役を務めることの嫉妬心を顕にするニュアンスと、不器用なりに心から里見を応援してくれているその姿への照れ隠し、同僚への愛おしさを演じ分けていました。

 心の声は本音だから照れ隠しの必要はない…訳はありません。心の声は、表面に現れる声よりもっとストレートで、複雑で、揺れていて、素直じゃなく、暴れています。オペ中に転移を発見してしまう里見。おばあちゃん(杜野まこ)は助かるのか、徐々に張り詰めていく空気がついに限界を迎えるのは、心の声の「あっ……」っという消え入りそうな、吐息のような低い一声。空気を媒体にして僕らの耳を揺らし、心を揺らし、背筋を凍らせ、いろんな最悪の光景を頭を巡らせ、絶望の淵に追い込みました。「助けたい」何度も強く心の声が祈ってきただけに、その絶望は充分に絶望的でした。やるせなさにボコボコに殴られるような絶望に、「心の声」は正しく正確に僕らを突き落としました。


 A公演の名演と言えば杜野まこさんの「おばあちゃん」役でした。杜野さんは大変美しい方なのですが、声はまさにジブリなんかに出てくる「おばあちゃん」で、その声のイメージに、目の前に立つ杜野さんが本当にしわくちゃのおばあちゃんに見えてしまうほどでした。声の演技に視覚が騙されるているような不思議な感覚でした。

 田中音緒さん演じる「小松」のモノローグは、客席一人ひとりに語りかけるように目を配っており、観客に小松の心情を追体験させる素晴らしい語りでした。目を見てその優しくもかちりとした声音で話されると目玉から脳に向かって言葉がズズズッと脳みそに押し沈められていく感覚です。

 社本悠さん演じる「石川」は精神的緩急があり、振り回すような喋り口、元気のある掛け声がこの物語の中では一際に救いでありました。石川はずっと石川でいてほしいな。おわりには石川に対して素直に好感をもっていました。

 飯塚麻結さん演じる「東先生」は冷静で知的な大人の女性医師です。実は容姿・演技と役柄が一番マッチしているなと内心思っていまして、。里見の扱いに苦悩する演技は自身のホンモノの悩みのように彼女の目元に影を落としていました。

 千春さん演じる「里見」は主人公にしては特徴が少ない「一般人」だと感じていましたが、それ故にサトラレであることが彼女の特異性を際立たせており、心の声や周りの人物、B公演で描かれる里見の「揺れ」を引き立たせているのでないでしょうか。


B公演

さて、B公演はサトラレでありながら医師を続け名医となった里見(田中音緒)…のお話です。おばあちゃんの死を乗り越え、医師として多くの命を救ってきた里見。配役チェンジがありまして、月城ちゃんは幼女花音ちゃん、花音ちゃんのお母さんの千弦と2人を演じます。子供らしい屈託の無さ、少し甘ったるく、伸びのある良い声色。でも口が滑り、物語は急転直下の展開を迎えます。「ごめんなさい…!ごめんなさい…!」「うるさい!!」それまでの和やかな雰囲気を木っ端微塵に吹き飛ばす嗚咽と怒号の応酬は迫真の演技と言えましょう。あまりの雰囲気に飲まれて私までビクッと怯えてしまいました。

 B公演の名演は田中音緒さんでした。A公演までの穏やかな、ともすれば登場人物中最も普通な人だった里見が、人が変わったように(いや、実際キャストは変わっていますが…)呪詛の言葉を吐き出し狂い出す、堕ちていく演技には、観客の僕のバランスまで崩されていくようでした。彼女がダウナーにキマってぼそぼそと吐き出す言葉は、骨から順番に体内を凍らせていくように、私の自由を奪っていきます。札束を蒔くところとか、突拍子がなかったのでちょっと?が浮かんだところでしたが、それくらい急転直下に彼女が堕ちていき、誰の対応も追いつかない、という異常事態・混乱と取れました。というか、B公演の田中さんすごすぎてほかなんも思い出せねえんですが…。結果的にサトラレでなくなった里見はだからといってそう簡単に立ち直ることもできませんでしたが、里見は花音ちゃんの「またお母さんが悪くなったら先生が治してね」の言葉に、生き続けることを選びました。

 里見が花音ちゃんを抱きしめるシーン、良かったですね…(これだけはどうしても言いたかった)

 自分以外のサトラレを初めて目撃した里見…のシーンは、コミカルで明るいエピローグですが、イケメン音瀬先輩(月城莉奈)と音瀬先輩に恋する女の子あずさ(千春)と心の声(社本悠)でめちゃくちゃでした笑(褒め言葉)。それくらいのカンフルがあって初めて、あのダウナーからは立ち直れたのかもしれません。割と本気で。チャラしろ(チャラくてイケメンなつきしろ)はどちらかと言うと、普段僕らが目にしている月城ちゃんに近くて「なんだか妙に馴染んでるなあ」と笑いながら見ていました。社本さんの心の声のアドリブは神がかってましたね。舞台裏話トークでそこに触れたのがとても良かったです。


 原作コミックスはもちろん存じ上げておりますが、台を用いて主人公と心の声を重ねたりする演出で、サトラレは実に朗読劇に向いている作品だなと思いました。語り口にモノローグ・独白を多様していること、医療がテーマということで、”噛みやすいセリフ”のオンパレードでした。これはきっとやり甲斐のある、或いはチャレンジングな脚本だなあと笑。キャストの皆さんの経歴は実に様々ですが、その中で一人ひとりがキャラクターに没頭し、達成感を重ね、1公演ずつ形を変えていく、生きている舞台に久しぶりに触れることができたのはとても良い体験でした。


エピローグ

さて僕は九州へ帰ります。彼女を追いかけて訪れた地(渋谷なんてそうそう来ないからね)、出会った物語、声優さん。明日からまた仕事、僕の日常は帰ってくるけれど、月城ちゃんをきっかけになにか動き出す…かもしれません。人生が豊かになるきっかけなら、いくつあってもいいでしょう?

月城ちゃんの初舞台、目の前の彼女の演技に、所作に胸が跳ねた。

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秋晴れの空に飛行機の音。ほんのちょっと期待して見上げた空に、どこまでも伸びていく飛行機雲が、どや、と言わんばかりに僕を見下ろしている。

ね?


(了)

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