世界大会振り返り

日本に帰ってきて5日が経ちました。帰国翌日から受けていた大学の定期テストが全部終わったので世界大会の振り返りを書こうと思います。

結果

・総合優勝
・競技優勝
・スーパーチーム優勝
・OUTSTANDING INNOVATION AWARD

取れる賞は全部取りました!6年間ロボカップに全力で取り組んできた成果が出たので本当に嬉しかったです。

試合

スイス式トーナメント

(1試合目)
vs EMM-SOCCER (マカオ)
11 : 1 勝利
有名なチームで足回りはBLDCでした。
ボールを捕捉した時のプログラムが世界大会のコートに対応しきれずに試合に挑む形になりました。ボールがコートの端に行った時のシュート率が非常に悪かったので惜しいシーンがとても多くありました。

(2試合目)
vs TEAM FAST AND SMART (イラン)
12 : 10 勝利
とにかく安定した動きで確実に点を入れられました。
初戦の時もあったバグは少しマシにはなっていましたが、まだまだ動きが不安定でした。かなり詰められて途中負けるかと思っていましたが、なんとか耐えることができました。

(3試合目)
vs Team Faabs (ドイツ)
7 : 2 勝利
Jetsonが乗っていました。相手の動きも安定していて強かったですが、キーパーがゴールをよく守っていたので失点は少なかったです。この試合の途中でバクの根本的な原因に気づいてすぐに修正することができました。

(4試合目)
vs LovBot Titans (カナダ)
13 : 7 勝利
キッカー、ドリブラーが強力なチームでした。昨年の世界大会でもほぼ同じ機体で出場しており、かなり上位のチームでした。相手はボールを隠す戦略でしたが、ボールを隠される前にボールを捕捉して前に押し出していたので、隠されたままシュートされることはありませんでした。カーブシュートをしたボールが相手キーパーの捕捉エリアにちょうど入っていまい、キッカーで直接シュートを決められたのは見ていて面白かったです。

(5試合目)
vs Kictron Z CRO Team (クロアチア)
22 : 11 勝利
ボールを自陣側に押されてオウンゴールが多発してしまいました。相手のキーパーに隙が多かったので得点は多く取れましたが、途中で点数を追いつかれていた場面もありました。

(6試合目)
vs LNX Robots (スロバキア)
8 : 8 引き分け
ボールを隠す戦略+ゴールに向けた確実なキック+強いキーパーというとても強いチームでした。これに加えて前半で僕らのロボットがまともに動きませんでした。捕捉センサにコート横からの強い照明が入ってしまい、アタッカーがボールを全く追いかけませんでした。なんとかキーパーが失点を少なく抑えたので、後半で捕捉センサの閾値を調整して逆転することができましたが、ラスト10秒でキーパーが落ちてしまい得点を決められ引き分けとなってしまいました。

(7試合目)
vs Reset (台湾)
18 : 10 勝利
このチームは全チームの中で一番ボールを隠す動きが上手かったです。練習コートでもずっとその動きの調整をしていまいた。また、ドリブラーの吸引力も強かったのでボールを奪うことができずにコート端からシュートを決められてしまいました。

(8試合目)
vs Gloves (シンガポール)
36 : 3 勝利
相手も安定して動いていたのですが、ロボットの調整を詰めて頑張ったので約30秒ごとに得点を入れることができました。

決勝トーナメント

(準決勝)
vs Kictron Z CRO Team (クロアチア)
22 : 6 勝利
得点性能が良いチームが決勝トーナメントに来ることは分かっていたので、キーパーの調整を詰めました。スイス式で戦った時よりも相手も強くなっていましたが、キーパーの動きが少し良くなったので失点を抑えることができました。

(決勝)
vs LNX Robots (スロバキア)
14 : 7 勝利
スイス式では引き分けだったチームだったのですが、バグも全て直って世界大会のコートにもほぼ完全に適応した最善の状態で挑むことができたので勝つことができました。決勝だったので多くの方に見守られる中での試合だったので勝てて本当によかったです。

スーパーチーム

概要

4チームが1チームとなって大きいフィールドで試合をする競技でした。1日目のスイス式トーナメントの4試合をもとにチームが構成されていたのでチーム間のバランスは保たれていました。僕のチームは、僕たちと同じ4カメを搭載しているチームやとてもフレンドリーなイタリアのチームがいてとても楽しかったです。
オープンはスーパーチームが全部で5チームあり、スイス式トーナメントを得て4チームが決勝トーナメントに進めるという試合の構成でした。スイス式トーナメントの1戦目では負けてしまいましたが、それ以外の試合では全て勝利し優勝することができました。

優勝したスーパーチームの集合写真

通信モジュール

今年から、通信モジュールが導入されて審判が無線でロボットのstop/startを操作するというとても画期的なシステムが導入されました。SSLの試合を見ているようでとても面白かったです。このモジュールは昨年度のテクニカルチャレンジにあったそうで、今年スーパーチームで実用化されたそうです。また、来年度からは普通の試合にも導入されるという噂も聞きました。あくまで噂です。

ボール認識難しい

ビッグフィールドで直径42mmのゴルフボールをカメラで認識させるのは本当に難しかったです。というか不可能でした。対策として、ボールが見つからなかったらコート中を動き回ってボールを探すという方法を取りました。なので2試合目からは主にCrescent(Re)のロボットが得点を決めていました。

テクニカルチャレンジ

3つのテクニカルチャレンジに参加しました。

vs SSLチーム

1つ目は、SSL divisionAの強豪チームであるTIGERs Mannheim vs ジュニアオープン連合チームというものです。流石に本来の性能のTIGERsさんと戦えば悲惨な結果になるので、キッカーの威力を下げる・スピードを下げるなどのハンデがもらえました。ジュニアの機体には写真にもあるようにコート上に取り付けられているビジョンから認識できるトップマーカーをつける必要がありました。

ジュニアの機体はローカルカメラのみでのボール認識というのが不利だったのとTIGARsさんがハンデありでも強すぎたので普通に負けました。
Crescent(Re)のロボットは最大スピードでコート上を爆走していました。(急停止して一度横転しました。)
下の51:30あたりからTIGERsさんのロボットを3台ほど抜いてドリブルしながらゴール付近までボールを運ぶことができました。ここがこのチャレンジのベストシーンです。

この試合後にTIGERsさんの機体を見せていただきましたが、本当にかっこいい以外の言葉がでできませんでした。(語彙力)

ライトvsオープン & 通信モジュール

2つ目と3つ目は、ライトウェイトリーグのチームと通信モジュールを搭載して試合をしました。元々、ライトvsオープンと、通信モジュールを使用した普通の試合という別々のチャレンジでしたが、2つ同時にすることができました。通信モジュールはスーパーチームと同じく審判がstop/startをするというもので、ボタンの押しミスやフライングが発生しないので良いシステムだと思いました。
ライトのチームはアルテミスと試合をさせてもらいました。本来は色付きのIRボールを使用するのですが、幸い僕たちのロボットには赤外線センサが8個乗っていたので普通に追いかけることができました。アルテミスが強くて負けました。とにかく楽しかったです。

その他

・チップキックチャレンジ
・キッカーパワー怪物化チャレンジ
・ゴールシュート成功率チャレンジ
などのチャレンジがありました。後から聞いた話ですが、どれか一つを達成できれば満点がもらえたそうです。

ポスターセッション

会場の廊下に貼ったポスターの前に立って1時間ひたすら英語でロボットの説明をしました。これも賑わい具合が総合成績に入っていたみたいです。ありがたいことにCrescent(Re)のポスターまわりは1時間ずっと人だかりができていました。1時間ずっと質問をしてくださるカナダチームのメンターの方とはとても仲良くなれました。その方からお願いされたので、ロボットの解体ショーも行いました。

インタビュー

3つのチームが合同で狭い部屋の中でそれぞれ5分間のプレゼンと質疑応答という内容でした。僕たちは英語が流暢ではないということもあり、ちゃんと練習をしたので5分ぴったりで終わらせることができました。また、運営に申告して通訳の方を付けていただいたのですが、なんとか自分で英語を喋ってやり過ごせました。他のチームのプレゼンにも積極的に質問できたので良かったです。

情報発信のすゝめ

大変嬉しいことに世界大会では多くの方が僕の存在をすでに知っておられました。Xでの情報発信やGitHub、GrabCADでのデータ公開、Youtubeでロボットの動画投稿をしていて良かったと実感しました。特にYoutubeは世界共通で人気のあるサービスなので、「チャンネル登録してるよ」と声を変えられることが一番多かったです。その中でも、4カメにインスピレーションを得て同じ4カメのロボットを作ったというオランダの現地チームの方が技術者としてとても嬉しかったです。

まとめ

約6年間ロボカップジュニアに参加し、今回世界大会優勝を果たすことができて本当に嬉しいです。また、試合の結果だけではなく世界各国の若きエンジニアの方々と繋がれたりしたことは今後の僕の人生においてもとても重要な経験になったの思います。
全体的にとてもレベルが高かった大会だったと思います。これは試合で勝てるレベルが高いという面ももちろんありますが、当たり前のようにシングルボードコンピューターを載せていたり、ソレノイドを自作していたり、BLDCを足回りに使用していたり、4カメにしていたり(僕らのチーム以外にも)と個性あふれるロボットしかいませんでした。

ここからは本当に個人的な見解になるのですが、一度コロナウイルスの影響で世代間の技術引き継ぎができずに途切れた技術も多くあったと思います。しかしそれが良い方向に働き、それぞれのチームが自分たちのロボットを自分たちがしたいように自由に作っているように思います。ロボカップジュニア全体的に見たら一度折れてしまった長い1本の技術の枝がそこから新たにもっと大きな枝に成長していっているという表現です。今後のロボカップジュニアの発展が本当に楽しみです。僕もこの発展に貢献できるように自分のできることはしようと思っています。

謝辞

両親、顧問の先生、偉大な先輩方、スポンサー様、ロボット制作に関わってくださった全ての方々に感謝を申し上げます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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