オムニホイールの設計


はじめに

ロボカップジュニアのサッカー競技において自作のオムニホイールが一般化しています。実際に私も3Dプリンタで作成したオムニホイールをずっと使用しています。いくつものオムニホイールを設計してきて、どのような構造、部品のものがより性能が良くなるのかを自分なりに導き出すことができたのでまとめようと思います。
また、最後にはRCJのサッカー競技ではほぼ使用不可能なサイズのオムニホイールの紹介もしようと思います。

本編

サイドホイールの選定

多くのオムニホイールには、シリコンゴムがサイドホイールに使用されています。しかし、高出力のモーターを使用するサッカー競技においてはすぐに摩耗してしまい、定期的な交換が必要です。サイドホイールの交換はかなり時間のかかる作業だと思うので、なるべく控えたいところです。
そこでウレタンゴムが活躍します。ウレタンゴムは、シリコンゴムと比べ耐摩耗性に優れています。摩擦や摩耗を受ける動的用途ではウレタンゴムが適していると言えます。
しかし、ここで問題になってくるのが入手場所とコストです。ウレタンチューブはシリコンチューブのようにホームセンターには売っていません。私はmisumiで取り扱われているウレタンチューブを購入しました。下のURLのようなカスタムでは、200mmで1500円程度と安いものではありませんが、交換が不要なことを考えたら納得のいく価格だと思います。
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/110300272940/?ProductCode=AXFL-D10-L200-V4-B

A50やA70はゴムの硬度を表す単位で、値が小さいほど柔らかいです。RCJの用途であればサイドホイールの厚さや直径などを考慮して、50か70のどちらかを選べば良いと思います。

ここまではウレタンチューブを前提で話していましたが、CNCやレーザーカッターがある場合はウレタンシートを買った方が値段的にはかなり得です。私がウレタンシートにしなかった理由は、黒色のウレタンシートが見つからず、自然色である黄色が車検に引っかかりそうだと判断したからです。https://www.monotaro.com/g/01012875/

サイドホイールの加工

ウレタンチューブを3Dプリンタで作った治具を使ってカッターナイフで切ります。カッターナイフで切るときに、加えた圧力でウレタンチューブが変形しずらいような治具である必要があります。私が作った治具は下の写真のものです。3DP部品の隙間にカッターナイフを入れて切ります。かなり高精度で切ることができました。

カットしたウレタンチューブの内径と同じ外径のジュラコンスペーサー(3DP部品でも代用可能)を入れ、ワッシャーで挟むことでサイドホイールの完成です。平行ピンを軸にサイドホイールが回転します。

オムニホイールの設計

Fusion360という3DCADで設計しました。以下の動画は、タイムラインを再生したものです。大まかな流れはこれを見てもらうのが早いと思います。

設計する上で特に気を付けた点は3つあります。
1つ目は、サイドホイールとシャーシ間のクリアランスです。サイドホイールが滑らかに回転するように、3Dプリンタ印刷時の精度なども考慮して何回も試作を繰り返す必要がありました。クリアランスが小さいとサイドホイールが回転せず、大きいとがたつきが出てしまいます。バランスの取れたクリアランスを0.1mm刻みで確認しました。

2つ目は、自由回転方向の滑らかさです。上から見た時にサイドホイールがオムニシャーシからなるべく出るような形状が望ましいです。具体的に言うと、下の図の2本の赤線の距離は一定離れている必要があります。

サイドホイールはカーペットに数mm食い込むことを想定し、その状態でシャーシがカーペットと接触していたら自由回転方向の摩擦が生まれてしまい、効率が落ちてしまいます。これは、サイドホイールの数を限界まで増やす、デュアルオムニホイールにすることでも対策することもできます。

3つ目は、耐久性です。オムニホイールで一番負荷がかかる部分は、おそらくこの赤丸で示した部分だと思われます。

そこで、下の写真のように、サイドホイールにシャーシを沿わせるような設計にすることで、少しでも赤丸部分の強度が保たれています。

実物写真と設計データ

言葉で説明してもあまりよく分からなかったと思うので、実物の写真と設計データを掲載しておきます。設計データはダウンロード可能になっています。

番外編(巨大オムニ)

部品が余っていたので直径が100mmのオムニホイールを作ってみました。内歯車が付いているので、ギアボックスを介さずに減速して回すことができます。使用予定はないので、今は部屋のインテリアとして活躍しています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。何か質問があればX(@bambi_rcj)までお願いします。


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