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記憶の中のロックフェス

初めて行ったフジロックは、ハイロウズとフーファイターズを観に行った2005年。

大自然な中のフェスに慣れてなくて、とりあえず色んなステージを見て回ったり、思っていた以上に移動に時間がかかったり、雨が降ったり止んだりでとにかくクタクタになった。

漠然と楽しかった興奮した記憶のみで、どんなライブだったのか、何の曲をやったのか、ほとんど覚えていないのが悲しい。

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ハイロウズのライブの時は小雨が降っていた。カッパを着るか脱ぐかのタイミングに気を取られて、ライブの内容より「雨、やだったなー」という記憶の方が強い。

ひとつだけ覚えているのが、「千年メダル」を聴けたのが嬉しかったこと。あのイントロが鳴った瞬間の胸のときめき。大好きな曲をフジロックで聴けた、ただそれだけで行って良かったと思える。

今でも「千年メダル」を聴くと、フジロックの光景が目に浮かぶ。ヒロトやマーシーの姿はほんのちょっとしか見えなくて、会場に遥か広がる大勢の観客に埋もれて、その熱気に負けまいと精一杯ジャンプしたあの時のことを。

その日はキャンプも宿も取ってなくて、徹夜してそのまま朝帰るという鬼スケジュールを組んでしまう若者だった。無謀なくせに体力がなかった。夜中に疲れ果て、雨のあとなのでその辺に寝転がることも出来ず、夜も人気と明かりがあった麓のPALACE OF WONDERというエリアの端っこで、友達とぼんやり膝を抱えて朝を待った。

2005年の頃は音楽に対しての視野も狭く、当時は退屈なバンドだと思っていてコールドプレイのライブを見逃してしまったこと、今回はまあいいかと疲れていて清志郎さんのライブを見逃してしまったことが、今になってものすごく悔やまれる。

フジロックに行って、コールドプレイを見ないでどうする!清志郎を見ないでどうする!疲れてる場合じゃねえぞ!当時の自分に問い詰めたい。その後、コールドプレイはサマソニで、清志郎さんはカウントダウン・ジャパンで見られたので良しとしよう。

初めて行ったサマソニは、やはりハイロウズを観に行った2003年。

洋楽をそれほど深く聴いていたわけではない自分にとって、ハイロウズがフェスへの第一歩を踏み出させてくれたのだ。

この年のサマソニが生まれて初めてのフェスで、気になる洋楽バンドの曲を片っ端から聴いてバッチリ予習して行った。タイムテーブルを眺めながら、目一杯ライブを見る予定を立てた。

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そして当日、初めてのフェスに舞い上がり、ギリギリのスケジュールで移動時間を見誤り、肝心のハイロウズの時間に間に合わないという事態に!ダッシュでステージに向かうも、アリーナに行くには一旦スタンド席に上がってから下りないと行けない…というややこしい入場経路に阻まれ、すでにライブは始まっていた。

記憶の中で鳴っているのは「青春」!わあああちょっと待ってくれー!とそのままの勢いでアリーナの後方ブロックへなだれ込んだ。前方ブロックは満員で入場規制されていた。もっと前で見たかったなと後悔している余裕もないくらい、押し寄せてくる強烈な人波と熱気。ウエストバッグをぎこちなく抱えながら、楽しくて嬉しくて夢中になって飛び跳ねた。最高の「青春」だった。

たぶんサマソニだったと思うけど、「いかすぜOK」の〈最後の最後の最後の最後はきっと笑っちゃう〉で楽しすぎて笑いが止まらなくなり、にやにやしているところで友達と目が合ってお互いに照れ笑い。

なんという平和な光景。激しいけどピースフルだ。フジロックの時もそうだった。ハイロウズの曲に漂うあのロックンロールな幸福感。見渡したら、みんなが笑っているあの空間。いてもたってもいられなくなるあの衝動。世界がひっくり返るようなあの感じ。ミッシェルの「ジェニー」もそういう感じの曲だったな。

夏が似合いすぎるハイロウズ。サマソニで、夏フェスで「夏なんだな」を聴けたのは一生の思い出だ。フジロックで、2005年の時もやったらしい「日曜日よりの使者」を思い出せないのは一生の不覚だ。

先日のフジロックのライブ配信で流れたのは、2002年の「日曜日よりの使者」だった。日曜日にこの曲が聴ける幸せを噛み締めながら、画面の向こうのフジロックを疑似体験。ヒロトがギターを弾きながら歌う姿が今となっては新鮮で、めちゃくちゃカッコ良くて、惚れ惚れと見入ってしまう。

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ただただ楽しいイメージの「日曜日よりの使者」だが、ヒロトは終始、真剣な表情だった。こんなに必死な顔で歌っていたのか。過去にもライブ映像は見たことあるはずなのに、改めて見て感動してしまった。観客の中には涙ぐんでいる人もいた。いつの時代になっても人の心を揺さぶり続ける曲だ。

フジロックの印象は、降ったり止んだりの雨。
サマソニの印象は、真夏の溶けるような暑さ。
サマソニはその後、10年近く毎年観に行った。
フジロックは遠いので、なかなか行けない。

フジロックやライジングのライブ配信を見ていて記憶が甦り、なんてことない思い出話を書いている。そういえば、ライジングにもクロマニヨンズを観に行った。

今思えば、超インドアの内気な人間がフェスのために遥か苗場や石狩まで行くというのは、なかなか奇跡的な出来事だった。そのきっかけはハイロウズであり、クロマニヨンズだった。

ヒロトとマーシーは、どこまでも遠く連れていってくれる、日曜日よりの使者だ。

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ライブやフェスは、それに行くために生きようと思える、とてつもない原動力だ。

またフェスに行ける日が来ることを願って。

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