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【スポットライト】vol.2 ロシアバレエの知識と情熱に溢れた 大川航矢・寺田翠

こんにちは。バレエメイト運営者の金田です。

バレエメイトが注目する方々にスポットを当ててご紹介する[スポットライト]。第2弾は、共に15歳でボリショイアカデミーへ留学し、2017年モスクワ国際コンクールで金賞を受賞された大川航矢さんと、同コンクールで銅賞を受賞された寺田翠さんをご紹介いたします。

現在はロシアのノヴォシビルスク歌劇場でソリストとしてご活躍中のお二人に話をお聞きしました。

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バレエを踊るうえで一番大切にしている事は?

本場ロシアの方々にも高く評価されている航矢さんと翠さんのバレエを踊るうえで一番大切にしている事は何でしょうか。

航矢さん) プロになって8年目のシーズンになりましたが、1番大事なことは変わっていません。それは、日々のレッスンをきちんと積み上げていくことです。
身体が資本のダンサーなのでレッスンが何より大事だと思っています。毎日身体の調子が良くなるように調整の意味も込めて[レッスンは100パーセント]でやるように心掛けています。お客様の前で踊る本番も好きですが、僕は毎日のレッスンが1番好きなのです。そして、常にリハーサルでは自己流にならず、先生に注意されたことなどを考えながら本番の準備をしています。
翠さん)大切にしているのは、[自分が何を踊っているのか正しく理解すること]です。ロシアではどの役にもマニュアルがあり、それを守って踊るという事がとても大事にされています。
振り付け家の意思やスタイルを無視して踊ってはいけないのです。それがロシアスタイルのアカデミックな所だと思うので、大切にしようと思っています。
翠さん)また、自己流にならず正しく踊ろうという事は心がけています。例えば1つのパにしてもバレエのいう正しさに基づいて行う、舞台は広く大きく使う、ポーズは止まる、ジャンプのパはちゃんと飛ぶ、脚をあげるパはあげる、上げなくて良いパはあげない、腕の位置、音を無視してバランスを取ったり回ったりしない、などです。
どれか1つでも疎かになるとアカデミックな部分が減り、クリアな美しい踊りから遠ざかってしまいます。そういった部分はこれからももっと気をつけて踊っていけたらと思っています。

日々のレッスンの重要さやメソッドの大切さを語るお二人。素晴らしい踊りの秘訣は、体に染みついたロシアスタイルの基礎があるからなんですね。

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モチベーションとメンタル

そのモチベーションの高さやプレッシャーに打ち勝つメンタルの強さは一体どこからくるのでしょうか?

航矢さん)練習で出来なかった事は本番でも出来ないと考えているので、だからこそ毎日のレッスンやリハーサルをちゃんとする事を心掛けているんです。
自分が納得できるぐらい練習が出来れば本番でパニックになることはあまりありません。ですが、練習のし過ぎは怪我の元となるのでリハーサルの時から本番を想定して少ない回数で集中してやるようにしています。

いつも本番を想定して普段から行動されていらっしゃり、プロ意識の高さに脱帽します。

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そんな航矢さんと翠さんに、プロになる前となってから、バレエに対する考え方や取り組み方の変化はあったのか、また、休日の過ごし方などを伺ってみました。

プロとしての責任

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翠さん)プロになる前は自分の踊りたい演目を好きな様に踊る事ができましたが、プロになってからはどんな役でもプロフェッショナルに踊らなくてはいけないと思うようになってきました。
また短い期間の練習で踊れるようにしなくてはいけなくなりました。学校時代は2、3ヶ月と長い期間練習する事ができましたが、プロになってからは2、3日で準備して本番というスケジュールです。本番当日にリハーサルをして出るという事も少なくありません。
休日は出かける事も無く、身体を休める事に費やします。家で日本のバラエティー番組を観たり、後は羽生結弦選手の演技を観たことでハマったフィギュアスケートを観て過ごしたりしています。
航矢さん)ただ好きなことをやっているのとは違い、責任が出てきました。ロシアではバレエアーティストは国家公務員になり国からお給料を頂いているので、お客様に喜んで頂けるようなパフォーマンスが出来るように頑張っています。
1週間に1度の休日では普段出来ない家の掃除をしたり、のんびりしているとあっという間に過ぎてしまいます。自主練習などには行かず、ゲームをして過ごしたり、少しバレエから離れて気持ちを休ませることも心掛けています。

普段はプロとしての責任感や緊張感を持ち、休日はバレエから離れてしっかり休む。ONとOFFがあることで心と体のバランスがしっかりと保たれているんですね!

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ロシアバレエの魅力と真髄

さて、本場で培われてきたお二人の踊りのベースとなっているロシアスタイルですが、その魅力とはどういったところか教えてください。

翠さん)上半身の美しさでしょうか。空間を広く大きく使った動きは舞台の上で華やかに見えますし、表情豊かで繊細な手先だったりはロシアスタイルならではの魅力だと思います。
またロシア人の方は「踊りに魂があるか」をとても大切にします。日本的に言うと踊り心というものでしょうか。私もそういった部分に魅力を感じます。
航矢さん)ロシアバレエの魅力はなんといってもそのゴージャスでダイナミック、そして洗礼された動きだと思っています。空間を広く使い、ステージを隅から隅まで使い、魂でその役を演じきることがロシアバレエの真髄です!

「踊りに魂があるか」
深いですね!でも、魂を込めて踊るからこそ、観客を魅了することができるんですね。

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表現力をつけるには?

そんなロシアバレエ特有の表現力豊かな上半身の使い方が美しく、少女のように可憐に舞台の上で舞うお姿がとても印象的な翠さん。表現することや役を演じることは昔から得意だったのでしょうか。

翠さん)踊る事は昔から性に合っていた様で、舞台の上での非日常感が楽しかったのを覚えています。演じる事が得意だったわけでは無いのですが、小学生の頃から踊っている役について自分なりに解釈したり想像したりするのは好きでした。
練習していた役のノートを作って自分のイメージに合った絵や画像を見つけたりしたら印刷してノートに貼り付けたり。振り付けのこの部分はこういう気持ちで!とか、実は周りにこういう役の人が居てその人に踊るつもりで、、、とかそういった事をよく考えていました 笑

[役ノートと想像力]とても参考になります!目に見えない役の感情や雰囲気を絵や画像を使って視覚化し、自分に落とし込む作業を楽しみながらされていたのは素晴らしいですね。

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表現するのが苦手な子供たちへ

子供のころの翠さんのように踊ることは好きだけど、表現する事があまり得意ではないそんな子供たちに向けてアドバイスをお願いします!

翠さん)小さな頃は「表現しなくては」と無理に思わなくても良いのではないでしょうか。ただ、自分自身が楽しく踊ろうという気持ちだけはしっかり持っていて欲しいです。その気持ちが上手く外に出ず、自分の中だけで終わっていたとしても、小さな頃はそれで良いと思います。
普段の生活でいろんな経験をしてたくさんの人と触れ合って成長して、自分の意思を周りの人に伝えられる様になればきっと変わると思います。そして普段の生活から感受性豊かに過ごす事も大切かもしれません。本を読んだり、好きな音楽を探してみたり、そういった事もきっと表現する上で役立つと思います。

普段の生活の中での経験が人間性を高め、表現力にも活かされていくのですね!

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バレエダンサーとして生きていく事への不安

さて、現在ロシアのノヴォシビルスク歌劇場でソリストとしてご活躍中のお二人ですが、バレリーナとして生きていく事への不安はありましたか?また、厳しいプロの世界で活躍するために欠かせない事とは一体何なのでしょうか。

翠さん)私がプロになりたいと漠然と思い始めたのは11歳、12歳くらいからだったと思います。YAGPの日本予選に出た事で海外のバレエ学校やバレエ団の存在をより身近に感じた事がキッカケです。
その後留学してバレエ団の就職活動を始める頃は大変でしたが、元々楽観的な性格だったので何とかなるかなと思っていました。不安だったのはウクライナのバレエ団に入って踊っていた時期でした。
ウクライナが戦争になってしまって、辞めざるおえなくなった時でした。新しいバレエ団を見つけれるのか不安でしたね。
航矢さん)世界で活躍するために欠かせない事...とても難しい質問ですが...バレエは厳しい世界です。
色んな条件が必要ですが、[やはりバレエを頑張れる気持ち]気持ちがあったら困難は乗り越えることが出来ると思います!

自分のいる国でまさか戦争が起きるなんて...想像すらできません。過酷な状況に不安な気持ちを抱えながらも、バレエに対する深い情熱や野心を持ち歩んでこられたからこその「今」があるのですね。

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お二人が考えるこれからの未来

翠さん)時々SNSを通じて、若い子供達から悩みや相談を受ける事がありました。バレエの技術的な悩みから進路の事についてだったり、様々です。
例えば「あるパを練習しているけど、どこをどう気をつければ良いのか、正しい動きがわからない。間違った筋肉の使い方をしている様な気がする」などです。そういった相談を受けて「指導すること」について考え始めました。
航矢さん) 子供達に教えるという事はとても重大な責任があると感じています。彼等の人生を左右したり、将来の可能性にかかってくるのですから、間違った事は教えられない、と今まで思ってきました。
けれど今、ロシアで踊って学んできた事を伝えたいという気持ちが強くなりました。いつかバレエ教室を持ち、子供たちに教えるのが夢です。

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では最後の質問になりますが、お二人がプロを目指す子供達に伝えたい想いをお聞かせください。

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プロを目指す子供たちへ

翠さん)バレエは厳しい世界だと思います。努力が報われないと感じ、やるせない気持ちになる事もあると思います。ただどんな時も逃げずに、日々している事を変わらず続けてください。自分の納得が行くまで続けられた事は将来の自分の支えになると思います。
航矢さん)バレエが好きだという気持ちをいつも感じながらレッスンに励んでください。舞台で踊る時は失敗を恐れずに練習してきたことを信じて楽しんで踊ってください。バレエが好きな気持ち、熱意があればそれだけ上達することが出来ると思います。そして先生に注意されたことを考えながらレッスンやリハーサルをすることです。ただ身体を動かすだけではバレエは上手にならないので、頭で考えた事を身体に伝えていくようなイメージで練習しましょう!

常にプロ意識を持ち、バレエと真摯に向き合う航矢さんと翠さん。ロシアスタイルを守り「魂」で踊るお二人だからこそ、本場ロシアでも高く評価され沢山の観客を魅了し続けていらっしゃるんですね。

今後の更なるご活躍がとても楽しみなお二人!これからも素敵な踊りを届けてください!

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プロフィール

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大川 航矢 Kouya ŌKAWA
ロシア国立ノボシビルスク歌劇場 ソリスト
アカネバレエ教室でバレエを始める。15歳でボリショイバレエアカデミーに留学、 ユーリ・ヴァシュチェンコ、アンドレイ・スミルノフに師事。
2008年 カザフスタン国際バレエコンクール アルマトイ 14ー15歳の部 金賞。
2009年 モスクワ国際バレエコンクール ジュニア部門 銅賞。 
2011年 ウクライナ国立オデッサ歌劇場に入団。
2012年 ペルミ国際バレエコンクール アラベスク 金賞。ソチ国際バレエコンクール 金賞。
2014年 ロシア国立カザン歌劇場に入団。
2016年 ロシア国営テレビ番組、Big Balletに出演。クラスノヤルスク国際バレエコンクール 金賞。
2017年 モスクワ国際バレエコンクールシニア部門 金賞。
2017年 文化庁長官表彰受賞。
2018年 ノヴォシビルスク国立歌劇場 入団。

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寺田 翠 Midori TERADA
ロシア国立ノヴォシビルスクオペラ劇場 ソリスト
1995年田中バレエアートにてバレエを始め、田中俊行に師事。
2004年 YAGP 日本予選 金賞受賞。
2008年 モスクワ国立バレエアカデミーに留学、イリーナ・プロコフィエバに師事。
2011年 ウクライナ国立オデッサ歌劇場入団。
2014年 カザン国立カザン歌劇場に入団 ソリスト。
2012年 ペルミ国際バレエコンクール、銀賞、ガリーナ・ウラノワ賞、ワシリーエフ、マクシーモワ賞受賞。ソチ国際バレエコンクール 銀賞受賞。
2016年 ロシア国営テレビ番組 Big Ballet 2016に出演。
2016年 クラスノヤルスク国際バレエコンクール 金賞受賞。
2017年 モスクワ国際バレエコンクール シニア女性部門 銅賞受賞。
2017年 文化庁長官表彰 受賞。
2018年ロシア国立ノヴォシビルスクオペラ劇場に入団。

※こちらの記事はバレエメイトのホームページにて2019年5月に書かれたものを一部編集して掲載しております。


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