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【今日コレ受けvol.027】ライブとは

「会場の外にある大きなモニターでショーを見ていた」と言った。そして、幕間の休憩時間になった時、「僕、後半も外で見ようと思う」と言う。

「ええ? せっかくこんなにいい席なのに? チケットめっちゃ高かったのにー」
と、私が言うと、
「でも、外のモニターで見ると、みんなの顔までよく見える」
と、主張する。
(中略)
「ママ、一緒に見たかったなあ」
と拗ねると
「ん? 僕も全部見てたよ」
と言う。うんまあ、そうか。たしかに一緒に見たのかもしれない。ライブとは……と、やや混乱しながら玄関の扉を開ける。

家に着くと息子はすぐにiPadでYouTubeを立ち上げる。

ライブとは【さとゆみの今日もコレカラ/027】

ライブとは…。
朝起きてすぐにこのエッセイを読んで、別の原稿を書きながらずっと考えていた。

「一度でも会場で観てもらえれば、この競技の面白さを感じていただけると思います」
スポーツ関係者がしばしば口にする言葉だ。私もそう信じてきた。なぜなら、自分自身がそうだったから。

初めてスタジアムに足を踏み入れたとき、ボールを蹴る音に感動した。正確にいえば、お腹にドシンドシンと響く振動に。それはテレビ観戦では感じられないものだった。

だけどそれは、私が小さい頃から五感を使った遊びをしてきたからかもしれない、と思う。3歳くらいからスマホやタブレットに当たり前のように触れてきて、視覚刺激から喜びの多くを得てきた世代にとっては、聴覚、触覚、嗅覚よりも「よく見える」ということの方がワクワクする体験である可能性はある。

この仮説が正しければ、ライブ・エンターテインメントの価値は根底から揺さぶられる。長い時間かけて検証していきたい難題をもらった。ありがたい。

ライブって…、なんなんだろうねえ。


毎朝7時に更新、24時間限定のショートエッセイCORECOLOR編集長「さとゆみの今日もコレカラ」。「朝ドラ受け」のように、その日の「今日もコレカラ」を受けてそれぞれが自由に書く「遊び」です。

ライブとは【さとゆみの今日もコレカラ/027】


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