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生活の建築知識.67

おはようございます。

住宅の改修と一括りに言っても、その内容はまちまちで、実施範囲もそれぞれ異なります。
全てを対象とすることもあれば、本当に一部分だけということもあります。
しかし、マンションなどの共用住宅だと実際には改修の対象と出来ない範囲があります。
今回はそれらの部分とその対処方法に関して説明していきます。

結論を言えば共用部です。
共用部扱いの部分とお伝えした方がわかりやすいかもしれません。
具体的な箇所としては、玄関扉・窓・バルコニー・共用配管・躯体となります。
これらの箇所は専有部ではなく、通常共用部のものとなっていますので、勝手に手を加えることは出来ません。

せっかく全ての改修を行い、仕上げも綺麗になったのに玄関扉が汚れていると相談を受けることは多々あります。
しかし残念ながら共用部には手を出せないと説明は行いますが、全く方法がないわけでもありません。
それは管理組合に許可を取ることです。
そして多くの場合、許可は得られます。
そのときに、管理組合から条件も出されると思います。
多くは2パターンあり、退去の際は原状回復をすることか、自己責任ということです。
原状回復はわかると思いますが、自身で元の状態に戻すか、同等とすることを言います。
自己責任に関しては責任を丸投げしているようですが、何かあっても責任は負いませんと言っているということです。
どうあれ、どちらも許可にはなりますのでこれで玄関扉を綺麗にすることが出来るわけですが、ここで注意点として、あくまで仕上げを綺麗にするくらいに留めることをおすすめします。
極端な場合、扉ごと交換を希望される方もいるかもしれませんが、共用住宅での玄関扉は防火の観点から一定の性能を求められます。
その仕様を変えてはいけませんし、もし変えてそれこそ何かあったときにトラブルの原因となります。
ですので、実施をお考えなら扉を塗装する・シートを貼るのような内容を考えると良いかと思います。

ちなみに窓とも共通する話で、扉や窓に枠が付いている場合がありますが、こちらは交換可能です。
しかしこれも注意が必要で、まず玄関扉の枠は鋼製のものがあり、その外側にさらに木製などの枠があります。
交換出来るのは鋼製枠の外側からとなります。
また、窓枠が躯体に直接埋まっている場合があります。
この時は設計者・施工業者と協議し、必要であると判断すれば管理組合とも相談することをおすすめします。

築年数が経過している建物ですと、窓ガラスが単板であり、断熱性能が低く結露などの原因ともあります。
可能であれば窓ガラスを交換したいと思われる方もいらっしゃいますが、やはりここも勝手には交換が出来ません。
また窓に関しては、玄関扉のような許可もおそらく下りないでしょうし、自ら実施はしない方が良いと思います。
理由としては、まず防火の観点からやはり仕様を変えられないことがあります。
そしてさらに共用住宅ですと、階数が高くなる可能性があることから窓ガラスに対する風圧を考慮している可能性があります。
それらのリスクを抱えてまで交換することはメリットが少ないかもしれません。
マンションによっては大規模改修などで窓サッシを交換、もしくはカバー工法で更新する予定がある場合がありますので、管理組合側の工事で対応することをおすすめしますし、事前に確認することが大切になります。

バルコニーにおいても勝手に工事することは基本的に禁止されています。
共用部だからという理由はもちろんですが、災害時の避難計画上妨げとなるような状態となることを防止するのが重要となるからです。
視線が気になるからと言って、囲いを作ってしまったり、物置などを設置して避難動線を遮ってもいけません。
バルコニーに関しては、取り外しが出来るデッキを設ける程度に留めてもらうことを是非おすすめします。
それ以上の何かであれば、必ず管理組合にご相談してください。

共用配管や躯体に対しては、何か手を加えようと思う方もいないかもしれませんが、いざ計画や工事をするとなると都合が悪いなと感じる時はあります。
配線・配管ルートが全くない場合や、上階の排水などが天井裏にあることもあり、天井高が上げられないということもあります。
しかしこれらに関しては、問答無用で手を加えられません。
これらを変えるには管理組合側の工事を必要としますので、どうしてという場合は相談する他ありません。

共用住宅ではその他様々な制約が必ずあり、不都合となることもありますが、一方でそれらを共同管理することが出来るメリットもあります。
美観の維持や安全性の確保を担保するために必要なシステムでもありますので、上手く活用しながら改修を計画していくことが大切ですので、前向きに捉えながら計画をして頂ければと思います。

では、また。

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