何故戦うのか:ファシスト反乱に立ち向かう

原文掲載日:2021年4月20日
原文:https://roarmag.org/essays/why-we-fight-shane-burley/
著者:シェーン゠バーレイとローラ゠ジェディード

トランプがホワイトハウスから出ていき、極右は有力な協力者を失った--しかし、ファシストの暴力と白人至上主義は決して終わっていない。

シェーン゠バーレイはジャーナリスト・映画製作者・作家であり、ファシズムを10年間研究している。近著『何故戦うのか:ファシズム・レジスタンス・終末論克服に関する小論集』は、シャーロッツヴィル以後のオルタナ右翼の進化・バイデン政権下でこの運動がどこに向かうのかを省察している。これまでもこの伝染性の強い極右思想傾向には幾度も盛衰があった。この運動は、しばらくの間、欧米の脅威になり続けると思われる。私は幸運にも、シェーンと膝を交えて、戦いがトランプ以後に移行すると未来はどのようなものになるのか質問できた。


過去五年ほど、近代史で最も伝染性の強い極右思想傾向が出現しています。何故今なのでしょう?その信奉者は極右の何に魅かれているのでしょうか?

ある意味、これまでも、急激に加速した時代には様々な傾向が分裂し、あらゆる社会集団に--中産階級・ブルーカラー・農村・都会・大学に--その兆候が表れました。主流派政治組織内外への影響もあった。そして、白人社会のほとんどのレベルで、ファシストは一斉に共同して反乱を起こしました。

この理由は複雑ですが、それを左右しているのは、全て、現代新自由主義の現実的危機、そして白人性の文化的・感情的な内面的危機です。様々な階級条件は確かに情況に対する反乱を生み出せます。米国で一般組合員による労働運動が過去数年間急増したのを見ればいいでしょう。ただ同時に、資力と地位の喪失という認識も生み出すわけで、ここに「白人性の報い」が実際に関わってきます。白人性が持つ心情的内容--社会的優越性と白人の社会的ステータスの感情--が、人口の変化・公的価値観の転換に対する反発を突き動かしているからです。

白人性が脅威にさらされて顕在化する。その結果、他の物質的危機が白人性のレンズを通して再構成され、歪められる。そうすると、解決策は人種差別主義反乱運動だ。変化する社会情況に立ち向かい、階級闘争を人種の違いをはっきりさせた言説に戻そう、となるわけです。

とどのつまり、古い世界が死につつあり、何か別なものが旧世界に代わるべく戦っているのであり、白人至上主義は反革命の大規模な復興だと見なせます。国際主義を通じてこうした世界規模の問題に対処しなければならない以上、これは今後数年間増える一方でしょう。世界的な紛争と気候変動が国境を押し倒し、様々な政治的・経済的階級が自身の権力にしがみつく道を見つけようとするわけですから。

シャーロッツヴィルの「ユナイト゠ザ゠ライト」集会があったのはおよそ三年半前です。極右はあの大失敗以後、どのように変化し、再編したのでしょうか?

「ユナイト゠ザ゠ライト」集会がオルタナ右翼にとってどれほど壊滅的だったか、どれだけ大袈裟に言っても言い過ぎではありません。このおかげで、その後二年にわたり、大規模な演壇排除イベントが結集して、当初極右の成長を可能にした一番の理由を台無しにしたのですから。オルタナ右翼のような大規模なことは、以前は不可能でした。今は、マスメディアと小規模な独立系メディアが、ソーシャルメディアの形で一つのニュース゠ストリームになってしまう時代です。シャーロッツヴィル以前ならば、リチャード゠スペンサーは、メインストリームの有名人やニュースバリューのある人物と同じウェブサイト(ツイッター)にいたでしょう。つまり、オルタナ右翼の演壇は増える一方だったのです。

シャーロッツヴィルは、それがなければ注意を向けていなかった人々に、極右運動がどのようなものか証明しました。今や、反ファシストは、極右の演壇を排除するようテクノロジー企業に圧力を掛けられるようになった。彼等は実際に圧力を掛け、極右の公的存在をインターネットの裏ルートに追いやるほどにまでなった。

大衆反ファシズム運動も結成され、シャーロッツヴィル以後に大衆型の運動は拡大する一方です。以前は数百人が街頭に出ていたのが、今や、2020年の警察の人種差別暴力に対抗する大衆行動に見られるように、数万人です。反ファシズムの基盤は、以前から反ファシズム活動を行っていた公式組織を超えて成長しています。現在、大衆行動は変化し、あらゆる世代が街頭へ殺到できる程になっています。

これは、反ファシズムを大衆が有効な原理として意識したこと、そして、白人ナショナリストに何の反対もなく組織を作らせると何が起こるか認めたことが交じり合った結果です。今、白人ナショナリストが、シャーロッツヴィルで行ったようなイベントを行って、町から逃げ出さないでいるなどほぼ無理です。2017年とは情況が全く異なっており、一般大衆には、こうした本物の脅威に対して行動を起こす用意が以前よりもできています。

極右が目立つようになり、右翼政党に有害な影響を行使するようになると、左翼にいる多くの人達は、ファシストの蠢動を遅くしたり止めたりするために様々な戦術を使います。どの戦術が特に効果的なのでしょう?また、歴史のゴミ箱に捨てるべきものはありますか?

私が思うに、最も有効な戦術は、彼等が何を達成しようとしているのか、何故達成しようとしているのかを見事なほど明らかにする戦術です。例えば、シャーロッツヴィル以後の大規模な演壇剥奪は、オルタナ右翼組織の新メンバーを減らし、最終的に「アイデンティティ゠エヴロパ」などのグループを潰しました。組織を作って、彼等の演壇を剥奪するようテクノロジー企業に圧力を掛けに行く。これは結果を出すことに集中したのであり、その背後には実証済みの論理がありました。

極右人物の情報暴露について言えば、この戦術は、こうした人物を孤立させる上で非常に有効です。白人至上主義運動内部でのその人の能力に異議を唱え、それほど熱心ではない人々が参加しないようにさせます。それほど有効ではない戦術は、何の文脈もなく、整理もせずに大量の情報をまき散らすやり方です。特に、その情報があまり信頼できないと有効ではありません。この種の活動を有意義なものにするためには、情報について極度に高い基準を持たねばなりません。その評価を非の打ち所がないものにし続ければ、人々はその情報を信じ、有意義なものとして扱うようになります。

同様に、極右人物の個人情報は、その人物が何故脅威なのか・自分達と他者を守るために地域の人々に何ができるのかを反ファシストがはっきり説明しなければ使い物になりません。組織が情報を発信し、その後に具体的な目標を持った具体的運動を行う際、例えば、コンサート会場にネオナチ゠バンドとの関係を断ち切るようにさせたり、雇用主にオルタナ右翼の人物と手を切るようにさせたりする際に、この方法が有効だと証明されています。しかし、それには、情報を精査し、実行可能な計画を作りつつ、民衆とのコミュニケーションを実際に行わねばなりません。その時に課題となるのが、本当に恐ろしい人達がこんなにもいるのだと人々が圧倒されてしまうことです。多くのオーガナイザーは、急を要する情況になると、コミュニケーションに時間を取れなくなってしまうのだと思います。

また、有効だと証明されているのは、既存組織や運動を使って、もっと大きな反ファシズム運動を増やすことです。労働組合・テナント組合・移民人権組織・環境保護グループ、これらは皆、極右と対決するために協働し、連合を結成する上で役割を持っています。大規模な対抗デモでファシストが公共の場に出て来られないようにする時には特にそうです。人がどのような資源を既に持っているのか、既にどのような組織に属しているのか、どのような優れたスキル・観点・考えを持っているのかに目を向ける方が、誰もが一つの組織化モデルに従ってくれると期待するよりも良いのです。

全体的に言えば、反ファシストを信じるべきだと思います。反ファシストの多くが、この種の組織作りをトランプ以前から長年行っていて、大抵、どうすれば戦略が有効になるか知っています。

1月6日は、またしても極右にとって紛れもないPRの大失敗でした。この運動は再び混乱の窮地に陥っています。バイデンはトランプに決定的勝利を収め、民主党が現在、政府の立法部門と行政部門を統治しています。多くの人は、脅威は過ぎ去ったと考えているようです。同感ですか?

とんでもない。逆に、そもそも、ファシスト反乱をもたらした諸条件全てはこれまでと何も変わっていません。収入格差の拡大・労働者階級の死・世界中で行われる軍事介入と暴力・急速に進む気候変動・警察暴力の異常発生率。ジョー゠バイデンと民主党は颯爽と要職入りしましたが、こうしたことに何の解決策も持っていません。

極右は今後、少しばかり後衛寄りの運動への転換、歴史的に極右が行ってきた堂々巡りゲームをするでしょう。トランプ政権下の四年間、相当数の極右はホワイトハウスに同盟者がいると感じていましたが、ファシズム運動の大多数はトランプを裏切り者だと見ていました。これは、白人ナショナリズムの歴史的軌道から外れてはいません。ロナルド゠レーガンが実質的に米国の極右クーデターを演出していた時でさえ、それを構成していた白人至上主義運動は急増していたものの、連邦政府は既に敵(シオニスト占領政府)に占領されているという考えに基づいて、テロ行為と民兵による攻撃に向かっていました。トランプ政権直前に、リチャード゠スペンサー等のオルタナ右翼指導者達は、改良がどうして不可能なのかについて講演会を開催しました。彼等は崩壊か革命を、もしくは崩壊と革命を待っていたのです。

彼等は常にこの用意をしています。しかし、もっと懸念すべきことがあります。基本的なコンセンサス゠リアリティを不安定にする「選挙泥棒を止めろ」レトリックを使って大衆向けの急進化イベントが行われ、数百万人が一種の陰謀理論に支えられた加速主義の洗礼を受けました。彼等の国家概念は、悪魔崇拝者と人身売買に関する千年王国的レトリックで固められている。つまり、イデオロギーに動かせられながらも、絶望的物語に基づいた衝動的暴力のように見える行為に私達は主として関わっているのです。こうした時代に私達は突入しています。

本当に危険な時代です。古い安全弁のいくつかが破壊され、トランプが創り出した危機が本当に暴れ出し得る時代です。私は著書でこのことについても論じました。まさに私達が終末に生きているのだと実感させます。聖書を信仰しない何らかの勢力がそれを予測したり引き起こしたりしたからではなく、黙示録を信じて現実のものにしようとするからです。

近著のタイトルは、ファシズムの終焉は可能だと示唆しています。私達はファシズムを永久に粉砕できると思いますか?もしそうなら、世界はどのようなものになるでしょうか?

満足のいく答えではないかもしれませんが、私達は、現代社会の現実の基本的前提と構造に目を向けねばなりません。ファシズムは、世界の他の場所に内在する不平等と支配を徹底的に露骨に体現しています。それは、奴隷制・帝国主義・植民地主義の歴史に基づいています。こうした不平等を悪化させるのが、階級・白人至上主義・密接に連動する抑圧制度です。危機におけるこのシステムが、ファシズムです。この危機は絶えず繰り返すわけですから、危機を止める方法は社会構成の中心を再構築することしかありません。

でも、私は、実際、ここに途轍もない希望を持つべきだと思っています。極右は終末論を創り出していますが、同時に、私達はその終末論と共に生きている。実のところ、思いやりと生存の行為には新しい世界が宿っている。昨年、世界中で大衆が抵抗行動を行っていましたが、同時に、相互扶助ネットワークが半自発的に--もちろん、完全に自発的ではなく、そのためには本当に長期にわたる組織作りが必要になります--出現し、世界規模のパンデミックと森林火災の危機の最中に民衆の本当のニーズを満たしていました。権力に挑戦する私達の能力は、大きくなる一方です。そうする中で、私達は実際に、このシステムと対決するために何を行うべきかだけでなく、新世界がどのようになるのかの片鱗を実際に生きています。

私達は自分達自身を信じなければなりません。このことを上手くやる方法を既に知っています。毎日、大なり小なりこれを行っているのです。

シェーン゠バーレイ著『戦う理由:ファシズム・レジスタンス・終末論克服に関する小論集』は AK Press から出版されている。

シェーン゠バーレイは、米国オレゴン州ポートランドに拠点を置く作家・映画制作者。近著は『何故戦うのか:ファシズム・レジスタンス・終末論克服に関する小論集』(AK Press、2021年)。彼は、Al Jazeera・The Baffler・Jacobin, Truthout・NBC News・The Daily Beast・Haaretz・the Oregon Historical Quarterly に寄稿している。彼は、『奴らを通すな!:ファシズムとレジスタンスに関する独立ジャーナリズム』を制作した。

ローラ゠ジェディードは、米国オレゴン州ポートランドに拠点を置くジャーナリスト。極右・抗議行動の取材・労働問題に重点を置いている。彼女の記事は、Truthout・Willamette Week・Portland Monthly 等で読める。

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