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長期投資推奨「わが投資術」

「わが投資術・市場は誰に微笑むか」清原達郎著・講談社2024年3月発行

著者は1959年生まれ、野村證券を経て、タワー投資顧問の運用部長でもあるファンドマネージャー。2005年長者番付トップとなり、伝説の投資家と呼ばれた。本書は2024年引退記念の自叙伝である。

先日衆議院補欠選挙全敗、岸田政権の先行きが不安視される。岸田政権は昨年、資産所得倍増元年と名付け、NISA(少額投資非課税制度)IDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充を提案した。人生100年時代「貯蓄から投資への新資本主義」である。

ビジネス雑誌は「サラリーマンが投資でボロ儲け」の記事満載。円安、株価上昇で株式投資を推奨する。本書もビジネス書ベストセラー上位の本である。帯書きに「新NISAはやらなきゃ損という夢のような制度」と読者に呼びかける。

私も「必殺技の誘惑」に負け、本書を手に取った。内容は著者の自慢話、ファンドの戦記物語。具体的投資術は成長性ある割安小型株を長期保有して儲ける。当たり前の話。リスク回避で日経225指数ETF積立て投資を推奨。これだけで市場が微笑むだろうか?

最終章で日本株の将来は明るいと述べている。今後、日本の金利は上昇しないから株式投資すべきとある。日本企業は内需縮小で、経営統合が避けられず、寡占化が進む。同時に企業は自社株買い、配当志向を強めるからだと言う。

何のことはない。今の株価上昇は円安による海外投資家の日本株購入によるもの言っているのと同じ。日本企業の成長性が期待できず、株主優先、配当優先で、最も成長に必要なイノベーションに向けて投資をしないと言っているのだ。

従って、海外投資家は遠からず日本株から逃避する。シッペ返しを食らうのは個人投資家だろう。個人投資家もバカではない。新しいNISA投資の対象は世界株式など海外株式、債券に流れている。日本株式など国内資産からの逃避である。

巨額な政府債務を有する日本。マネタリズムの金融緩和で、世界は過剰資金供給状態にある。今後、金融マーケット暴落もありえない話ではない。その時、市場が微笑むのはショート取引主体のプロ海外投資家に対してではないだろうか?


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