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雀士作家・色川武大が見る人生の真実

「うらおもて人生録」色川武大著・毎日新聞社昭和59年11月発行。

著者は1929年東京生まれ、阿佐田哲也の筆名で麻雀小説「麻雀放浪記」の代表作がある。色川武大の名で作家、エッセイスト、雀士。1989年山形県一関市で心筋梗塞、心臓破裂で60歳死去した。

本書は昭和58年8月から1年間、毎日新聞日曜版に連載されたエッセイの単行本。若者向けの人生論である。

若くして博打の世界に身を投じ、その風貌と相まって無頼に生きた。アウトローの人生の後半は意外に平穏を得ていたのかもしれない。劣等生への「愛」がある。

博打と運の話題が中心。ギアが上がり、「プロは持続が第一」「生きているだけで運をロスしている」「9勝6敗を目標にせよ」「実人生で避けなければいけないのは負け星ではなく怪我」等と、壮絶な戦中・戦後を生きた体験からつかんだセオリーが語られる。

祖父は島津家流れの小学校校長を務めた文部官僚。父は海軍大佐の職業軍人。著者は父44歳のとき生まれた長男。終戦で旧制中学中退し、かつぎ屋、ヤミ屋、博徒と職を転々とする。まさに麻雀放浪記のようなバクチ修行の半生である。

「怠け者になるな!働き者になれ!」と人はいう。しかしこの世に怠け者はいないと著者はいう。働かないのは、働くためのツボにはまっていないだけ。ツボにはまれば、誰でも働く。そこに育てる意味がある。

競馬レースに例え「劣等生は先頭より半歩前を走れ!」という。最後は負けても良い。優等生はブッチギリ先頭で走ろうとする。又は最後の直線で一気に抜き返そうとする。劣等生は集団の中におれば、コケる。劣等生は他人より少し違った生き方が最も良い。

本書は劣等生に対する限りない愛と応援歌が詰まった人生指導書。今年4月10日は著者が死去して35年。古い本だが、読書後の感想は爽やかである。

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