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「メガバンクぐだぐだ日記」

「メガバンクぐだぐだ日記・このたびの件、深くお詫び申しあげます」目黒冬弥著・三五館シンシャ2022年10月発行

著者は、バブル終結1990年頃入行メガバンク行員。関西吹田中央店をスタート、九州宮崎など地方で営業取引先担当、その後に預金課長となる。55歳役職定年間際の中間管理職である。

本書シリーズ第1作は「交通誘導員ヨレヨレ日記」だった。書店で見かけたときには「交通誘導員のおじさんの仕事日記とか、誰が読むのだろう?」と思いながら手に取った想い出がある。

実際はたくさんの人が「けっこうきつそうな、それでいて、誰にでもできそうにも見えて、高齢者が多い」仕事の内容に興味を持っていたらしく、「交通誘導員ヨレヨレ日記」は、ベストセラーになり、続編として、さまざまな「お仕事日記」が発表された。本書はそのメガバンク行員版。

現役銀行員によるメガバンクの内情。半沢直樹よりもリアルな出世競争と格差。支店長による生々しいハラスメント。こんな内容を知ると、誰も就職希望しなくなると心配する。営業担当と預金事務の確執、少し盛り過ぎに思える。

2011年ATMシステム障害の実態が描かれる。メガバンクがどこかわかる。この新システム開発プロジェクトには、四千数百億円が投じられた。東京スカイツリー7本分の建設費に相当する。それでもシステム障害は発生する。

日本企業の悪しき習慣として「減点主義」「事なかれ主義」「馬鹿な上司のために人生を台無しにされる」など。日本企業をだめにした習慣の羅列である。その内容に気が滅入る。本を売るがための誇張しすぎかもしれない。

後半での「ある事件の解決」や「事件を未然に防いだこと」「普段行っていることを見ている人はきちんと見てくれている」といった、明るい話題に、救われた思いがした。

著者は営業で優秀な成績は残せず、上司にも恵まれなかった。人間的にはよくできた人物に思える。銀行の犯人捜しが心配である。


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