「TSは百合ですか?いいえ違います」第3話
風巻「へ、変態ー!!!」
和葉「コレは不可抗力だろ! 俺は悪くない!」
風巻「この校則大違反変態め……こんないたいけな少女のはっ、初めてを奪うなど、我が校の生徒としてあるまじき振る舞いだ!」
赤面しながら言う風巻。
和葉「いやぁ、これはその……色々あってだな……」
ばつが悪そうに言う和葉。
風巻「ではその態度はなんだ! 非が無いなら堂々としろ!」
和葉「いや、俺に非があるつもりはないんだが、事情が事情で……」
夏姫「私のファーストキスを捧げたの。お姉ちゃんの事、大好きだから!」
更に周りがザワつく。
風巻「これは風紀……違反……?」
目を瞑り腕を組んで考え始める風巻。
和葉「桃奈」
桃奈の手首を握り、風巻から目線を外さずに言う和葉。
桃奈「な、何?」
少し顔を赤らめる桃菜。
和葉「分が悪い、逃げるぞ!」
桃奈の手を引き階段を駆け上がる和葉。
風巻は腕を組んだまま気づかない。
桃奈「わぁ! 待ってよ和葉ちゃん!」
キーンコーンカーンコーン
予鈴が鳴る。
和葉「やっべ、急いで教室行くぞ桃奈!」
桃奈「う、うん!」
―――
和葉「すいませーん遅れました!」
桃奈「すいませーん!」
先生「二人とも、一応遅刻ではないですが、時間に余裕は持つように」
和葉「気を付けます……」
先生「それでは朝のHRを始めます。―――」
和葉(唇、か……)
隣に座る桃奈の唇を見つめる和葉。
和葉(柔らかそうだな……だけどなぁ、フェロモンで誘惑してキスしてバイバイってのはなぁ……)
物思いにふける和葉。
桃奈「和葉ちゃん? 和葉ちゃーん!」
和葉が気が付くと桃奈が目の前に。
和葉「ぬおっ! 悪い、なんだ?」
桃奈「もうHR終わったよ!」
和葉「あ、ああ。次の授業はなんだっけ?」
桃奈「体育! 確か今日からバスケかな? 運動苦手だから嫌だなー」
和葉「バスケなら結構―――体育?」
桃奈「うん、体育。どうかしたの?」
和葉(……体育、着替え、俺は男。マズい。女の体で更衣室に入って後から男だったのがバレたら……最悪だ。なんとかして避けないと……体調不良を装うか。一旦はそれで凌ごう)
和葉「あー、なんだその。急に腹痛が。桃奈、先行っててくれ。俺は保健室行くから」
桃奈「大丈夫!? 私も行くよ!」
和葉「いや、大丈夫。一人で行ける」
桃奈「場所分かるの?」
和葉「……分からんな」
桃奈「じゃあ案内も兼ねて一緒に行くね!」
和葉「……仕方ないか。悪いな、桃奈」
桃奈「気にしないで!」
二人で教室を出る。
―――
桃奈「ここが保健室! こんにちはー! あれ? 先生いないね」
和葉「勝手に休むから、桃奈は授業行って大丈夫だぞ」
桃奈「ううん、ここにいる! 体調不良の時一人でいるのは嫌だもんね。先生来るまでは残るよ!」
和葉「そうか」(保健室に二人きり……キスのチャンス、ではあるが……)
母の声「ここでしないと一生このままだよ」
和葉「ッ!?」
周りをキョロキョロと見回す和葉。
桃奈「どうしたの?」
和葉「いや、なんでもない……」
母「ピアスから遠隔で話している。今だよ。さあ!」
和葉(確かにするなら丁度いいシチュエーションだ。登下校に夏姫がついてくる以上、二人きりになれる場面は限られる。桃奈には申し訳ないが―――)
和葉「なあ、桃奈」
桃奈「? なぁに?」
和葉「そのー、雰囲気も何も無くて悪いんだが、キス、してみないか?」
桃奈「ッ! して、くれるの……?」
桃奈の目がトロンと蕩ける。
和葉「……ああ」
二人の顔が近づいていく、
バーン!
夏姫「先生いますかー! 頭痛がするので休みに来ましたー!」
扉が勢いよく開け放たれ夏姫が大きな声で言う。
和葉「なっ、夏姫!?」
急いで顔を離し、何事もなかったかのようにする二人。
和葉「な、夏姫か。先生ならいないぞ。とりあえず休んでいったらどうだ?」
夏姫「ナニしようとしてたのかなー?」
桃奈「な、なんでもないよ!」
和葉「そ、そうだぞ! ただ休んでただけだ」
夏姫「ふーん。なんだか二人とも元気そうだね。授業戻ったら?」
和葉「お、おう。そうするよ」
そそくさと部屋を後にする二人。桃奈の背中にイーッとする夏姫。
教室へ戻ってくる二人。
和葉「……授業行くか?」
桃奈「……うん」
ションボリした顔で言う桃奈。
和葉「ていうかそもそも体育着持ってきて―――入ってるわ」
鞄を開けるとそこには体育着が。
桃奈「じゃあ更衣室行こっかー」
和葉「そうだな」(まだチャンスはある。更衣室に入るのは抵抗があるが、桃奈が着替える前にキスして適当な理由でその場を後にすれば……)
体育着を持って更衣室へ行く二人。
―――
桃奈「ここが更衣室! 着替えたものをロッカーに入れて、体育館へ行こ!」
和葉「桃奈、ちょっといいか?」
桃奈「? キャッ!」
桃奈に壁ドンする和葉。
和葉「続き、しよう」
桃奈「う、うん……」
目を瞑る桃奈。
夏姫「お姉ちゃん忘れ物ー!!!」
またしてもドアが勢いよく開かれ夏姫が飛び込んでくる。
慌てて身を引く和葉。
和葉「な、夏姫か。頭痛は治ったのか?」
夏姫「うん! はいヘアゴム! コレないと運動できないでしょ!」
ヘアゴムを手渡す夏姫。
和葉「お、おうありがとうな。頭痛が収まったなら授業に戻った方がいいんじゃないか?」
夏姫「うん、そうする! ……お姉ちゃん達がいかがわしいことしないか見届けてからね」
和葉「す、するかそんなこと!」
真っ赤になって反論する和葉。
桃奈は耳まで赤くして俯いている。
夏姫「ほら、さっさと着替えないと授業終わっちゃうよ」
和葉「わ、分かってるよ」
渋々桃奈に背を向けて着替え始める和葉。桃奈も着替えを始める。お互い無言が続く。
着替え終わる二人。
夏姫「それじゃ、体育館へ行ってらっしゃーい。」
そう言うと和葉にそっと近寄り、
夏姫「寄り道しちゃダメだよ」
と囁く。
和葉「す、するかンなこと!」
―――
体育教員「さて、今回の授業はここでおしまい。お疲れさまでした」
「「「ありがとうございましたー」」」
和葉(体育着に着替えるってことは終わったら当然制服に着替えなきゃだ……盲点だった……さっきのはギリセーフにしても今回はマズいぞ……そうだ!)
和葉は隣で座る桃奈に耳打ちする。
和葉「桃奈、体育倉庫で、続き」
桃奈は顔を真っ赤にして頷く。
そしてこっそり生徒の群れから抜け出す二人。体育倉庫の扉を開けると、
夏姫「ナニしようとしてんのー? こんなトコで」
夏姫がいた。
和葉「お前こそ授業はどうしたんだよ!」
夏姫「サボってる」
平然と言う夏姫
和葉「ダメだろ! ちゃんと出ろ!」
夏姫「お姉ちゃん達こそダメだと思うけどなー」
和葉「か、片付けすることの何が悪いってんだよ」
夏姫「ホントに片付けのつもりで来たのー?」
和葉「そ、そうだよ」
若干焦りの見える和葉。
夏姫「じゃ、先生に確認してこよーっと」
倉庫を出ようとする夏姫。
和葉「待て待て待て。悪かった俺が悪かった」
引き留める和葉。
夏姫「ごめんなさいのチューは?」
体育倉庫のドアを閉めながら言う夏姫。
和葉「は、はぁ? なんだそれ、するわけないだろ!」
夏姫「じゃーあー、色んなとこでお姉ちゃんたちがチューしようとしてたことバラしちゃおっかなー」
桃奈「ッ!」
それを聞いて耳まで真っ赤にする桃奈。
和葉「……分かったよ、一回だけな」
夏姫「やったー!」
跪いて夏姫の頬にキスしようとする和葉。
夏姫「ちがーう! チューするときは、お口に、でしょ?」
和葉「流石にそれは……」
夏姫「せんせーい! センパイ達が―――」
和葉「悪かった! する! するよ!」
夏姫とキスしようとする和葉。その時、
桃奈「……ズルい」
夏姫「何?」
桃奈「妹ちゃんだけズルいよ! 私だってキスしたいのに! 邪魔ばっかりして自分はするなんて! ううー!」
涙目になりながら怒る桃奈。
夏姫「だって、アタシは妹だもん! これくらいしてトーゼンでしょ! アンタこそ、出会って二日なのにお姉ちゃんとキスしようなんて身の程違いよ!」
桃奈「でも、和葉ちゃんからしようって言ってくれてるんだもん! 無理矢理させるそっちよりいいでしょ!」
ワーワー言い合う二人。
和葉「落ち着け二人とも。キスはヤメだ。俺はしばらく誰ともキスしない。あれだけ誘っといて何だが、やっぱりこういうのはもっと仲を深めてからすべきだと思うし、姉妹ですべきでもない。いいな?」
夏姫「むー」
ムスッとする夏姫。
桃奈「な、仲良くなったらしてくれるのかな……」
エヘエヘと笑いながら顔を赤くする桃奈。
和葉「ま、ともかく授業だ授業。行くぞ二人とも」
倉庫の扉を開こうとする和葉。すると、
風巻「風紀確認作業!」
風巻が扉の向こうから現れ、
ムチュッ
表から開けた風巻の唇と和葉の唇が重なってしまう。
和葉「ッ!?」
風巻「な、なななな……」
顔を赤くしてわなわなと震える風巻。
風巻「初めてを奪われたー!!!」
大声で叫びながら走り去る風巻。
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