「TSは百合ですか?いいえ違います」第2話

和葉宅前。和葉が帰宅する。
和葉「ただいあぶしっ!」
ドアを開けた瞬間母にビンタされる和葉。
和葉「痛ってえな! 急に何すんだ母ちゃん!」
母「それはこちらのセリフだ! 折角いい雰囲気までいったのになんだあれは! 私が求めているのは唇と唇の接触! 頬にしても仕方ないのだよ!」
和葉「いい雰囲気って……まさか母ちゃん見てたのか?」
母「脳波を測れる装置にカメラとマイクがついていないとでも?」
和葉「プライバシー0かよ……」
夏姫(なつき)(和葉の妹)「お母さん、誰この人?」
後ろから出てきて言うツインテールのかなり小柄なぺったんこの少女(夏姫)。
母「ん? ああ、言ってなかったか。彼女は君の兄さ。ちょっと薬を盛らせてもらってね」
夏姫「ふーん。お兄ちゃんがお姉ちゃんに……ねぇ。お兄―――今はお姉ちゃんか。ちょっと頭下げて」
和葉「? なんだ?」
和葉が体をかがめると、
チュッ
夏姫が和葉の唇に自分の唇を軽く触れさせる。
和葉「!? 何してんだお前!」
夏姫「ファーストキスのプレゼント♡」
和葉「はぁ!? そんなこと兄貴にするんじゃないぞ! 大体お前俺の事嫌いじゃなかったのか!?」
夏姫「お兄ちゃんは嫌いだけど今のお姉ちゃんは好きかなー。なんだろう、見てるとドキドキしてくる感じ?」
母「まさか夏姫もフェロモンに!? ちょっと脳波を調べさせて―――」
和葉「ちょっと待った母ちゃん。夏姫は実験に巻き込まない約束だろ。その分俺を好き放題するって話になってたじゃねえか」
母「むう……仕方ない。とりあえず今の瞬間の脳波を解析するとしよう。和葉、夏姫、夕飯は部屋の前に置いておいてくれたまえ。一日分の脳波の解析作業で忙しくなりそうだ」
夏姫「和葉……?」
和葉「ああ、今の俺の名前だ。メシにするか。何食べたい?」
夏姫「たらこスパゲッティ!」
和葉「それは昨日食っただろ……そうだな、ハンバーグにするか」
夏姫「いいね! 私も手伝おっか?」
和葉「ん? おお、手伝ってくれ。珍しいな、夏姫が自分から手伝いを申し出るなんて」
―――
ポニーテールにしてタネをこねる和葉。その腕にべったりとくっつく夏姫。
和葉「お、おい夏姫……これじゃ作業が捗るどころか邪魔なんだが……」
夏姫「嬉しくないの? こんな可愛い妹に密着されて」
和葉「嫌われないのは嬉しいことだが、作業の邪魔されるのはちょっとな……」
夏姫「えー、そんなこと言っちゃうの? モテないよー」
和葉「それで結構。妹にモテてもしょうがねえだろ」
夏姫「むー。構って構って!」
和葉の服を引っ張る夏姫。
和葉「メシ作ったらな。ほら、形にするの手伝え」
夏姫「手汚れるからやだー」
和葉「手伝うって話は何だったんだよ……」
夏姫「お姉ちゃんとくっつくための口実?」
和葉「……そういうのは本人に言うもんじゃないぞ」
―――
腰に手を当て焼きあがったハンバーグを見る和葉。
和葉「さてと、出来上がりだ。食器の準備くらいはしてくれよな。俺は母ちゃんにメシ届けてくる」
夏姫「行ってらっしゃーい」
お盆を持って母の部屋の前に行く和葉。
和葉「母ちゃん? メシ持ってきたぞ。なるべく温かいうちに食えよー」
母「ありがとう。本当にできた娘だ」
扉越しに礼を言う母。
和葉「……」
母「ところであの子……桃奈といったか。君、彼女に惚れたね?」
和葉「んなっ!? ……脳波で分かったのか?」
赤面する和葉。
母「もちろん。だからこそだよ。何故キスをしない! 頬ではだめなのだよ頬では! 明日こそはキスしてくれたまえよ。当然! 唇に!」
和葉「……善処する。ところで、制服なんだけどさ、冬服買ってくんねえかな? 私服だと悪目立ちしちまって」
母「今のウチにそんな金があるとでも? あそこの制服は高いんだ」
和葉「……分かったよ」
はぁ、とため息をついて部屋から離れる和葉。
―――
朝、夏姫の部屋の前にて。エプロン姿の和葉。
和葉「おーい夏姫。早く起きねえと遅刻するぞー」
夏姫「はーい!」
部屋から出てくる夏姫。なんと夏姫は和葉と同じ学校の制服を着ていた。
和葉「なっ、お前その服どこで!? というか俺と同じトコ行くつもりか!?」
夏姫「んー? いやほら、丁度飛び級の話が来てたから、高校に飛び級することにしたの! 制服は無理言って用意してもらった! 元々飛び級したらお金とかいろいろ免除してもらう予定だったから、タダで貰っちゃった!」
和葉「お前が通ってたのって……」
夏姫「華山(かやま)大学付属中学! お姉ちゃんのトコと同じ系列だよ! 知らなかった?」
和葉「女子校に通ってたのは知ってたが……」
夏姫「お母さんが所属してるのも華山大学だよー。だからお姉ちゃんもスムーズに転校できたんじゃない?」
和葉「そういうことか……」
夏姫「てことで今日からは一緒に登校だね、お姉ちゃん! 朝ごはん何?」
和葉「トーストと目玉焼き」
夏姫「オッケー! 早く食べて一緒に行こ!」
―――
駅から出てくる和葉と夏姫。夏姫は和葉の腕にべったりとくっついている。
夏姫「高校かー。面白いといいけどなー」
和葉「どうだろうな。勉強は相変わらずお前にとっちゃ退屈だと思うぞ」
夏姫「そりゃそうだよー。天才だもーん」
和葉(これで本当に頭がいいから扱いに困る……母ちゃんの血か……)
二人の後ろを走る人影。
桃奈「和葉ちゃーん! おっはよー!」
相変わらずの巨乳突撃を和葉にする桃奈。
和葉「ぬおっ! おお、おはよう桃奈」
少し赤くなりながら挨拶をする和葉。
(桃奈の唇のアップ)
夏姫「お姉ちゃん、この女誰?」
不機嫌そうに言う夏姫。
和葉「クラスメイトの桃奈だ。ヤンキーっぽい俺にも普通に接してくれる今のところ唯一の存在なんだ」
夏姫「ふーん」
夏姫は和葉に抱き着く桃奈と和葉の間に入り、
夏姫「お姉ちゃんは私のだからね!」
と和葉の腕に抱き着く。
桃奈「お姉ちゃん……ってことは和葉ちゃんの妹さん? 妹さんいたんだね! 1年生?」
夏姫「そう! 13歳だけどね! 飛び級したの!」
桃奈「えーすごーい! 頭いいんだね!」
夏姫「そうだよ! お母さんと同じ天才なんだから!」
桃奈「お母さんは何してるの?」
和葉「大学の教授。授業は適当で評価悪いけど研究の成績が良いおかげでなんとかなってる。給料も勝手にやってる研究にあててるからいつまで経っても貯金が増えない」
桃奈「えーすごーい! 和葉ちゃんも頭いいの?」
和葉「俺は大したことないよ。勉強すればそこそこできるって程度で、とても夏姫とか母ちゃんには敵わん」
桃奈「できるだけ偉いよー。私勉強苦手だから今度教えてね!」
和葉「いいけど……マジで大したことないぞ?」
桃奈「大丈夫! あっ! 今度私の友達も入れて勉強会しようよ!」
和葉「うーん……その友達が嫌がらなければいいけど……」
夏姫「……」
ムスッとした顔で話を聞く夏姫。
話している間に学校につく。
和葉「さて、それじゃあ授業しっかり出るんだぞ、夏姫。じゃあな」
靴を履き替えながら言う和葉。
夏姫「アタシの初めてを奪っておいて、アタシがいない間にその女とイチャイチャしてばっかしてたらダメだからね!」
ザワつく周り。
和葉「おまっ、言い方ってもんがあるだろ! 大体アレはお前から―――」
どこからともなく風巻が走ってくる。
風巻「風紀の乱れを発見!!!」
和葉にドロップキックする風巻。
和葉「危ねっ!」
和葉が身を逸らして避けると丁度和葉の顔に風巻のお尻が当たる。
和葉「むぐっ!」
風巻「へ、変態ー!!!」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?