「堕天の騎士」第2話

大型悪魔がまるで瞬間移動したかの如く高速で移動し、爪でシンジを貫く。

ライチ「キャアッ!」

カナタ「シンジさん!?」

立ちはだかる大型悪魔。

悪魔「グガアアアアアアアアア!」

カナタ「クソ悪魔が! 今すぐブチ殺してやる!」

激昂するカナタ。

ライチ「無理よ! ここは一旦退いて態勢を立て直さなきゃ! シンジさんが一撃でやられたんだもの!」

カナタ「ライチ姉、今すぐ全力で治療したとして、シンジさんは助かるのか?」

ライチ「分からない、けど可能性はある」

カナタ「じゃあ治療を。アイツは俺が殺る」

ライチ「無茶よ!」

カナタ「うるさい! 目の前で人を悪魔に殺されて退くなんてできない!」

槍を出し悪魔へ飛び掛かるカナタ。爪で防がれる。

カナタ「くっ!」

そのまま何度も攻撃するがことごとく防がれるカナタ。

カナタ(俺はまだ、無力なのか……!)

カナタが悔しがる一瞬、悪魔の目線がライチへと向かう。

カナタ「ッ! 危ないライチ姉!」

ライチを庇うカナタ。爪で貫かれる。

倒れるカナタ。

ライチ「カナタ君!? カナタ君!」

血まみれで倒れるカナタ。

ルシファー<あら、死んじゃった。でも、まだよ>

槍の宝石が強く光り、光を失う。そしてカナタの体が黒いオーラに包み込まれる。

ライチ「これは……瘴気……?」

立ち上がるカナタ。傷は癒えている。

カナタ「生き……てるのか?」

ルシファー<生命の支配者【ルーラー・オブ・ライフ】、私の能力【スキル】の一つ。相手を殺した際に命を奪い、三つまでストックできるの。そしてもう一つの能力も教えてあげる。半神半魔【デミゴット】。神の如き力を得られる能力よ。槍を自分の心臓に突き刺してみなさい>

カナタ(自分の心臓に、だと?)

ルシファー<まあまあ。物は試し。スペアはまだあるし、騙されたと思って。アレに勝つにはコレしかないわよ?>

カナタ(……分かった)

自分の胸に槍を突きさすカナタ。

カナタ「グウッ!」

ライチ「何してるのカナタ君!」

カナタの体が黒いオーラに包まれ、その姿は徐々に悪魔のそれに近づいていく。

ライチ「カナタ、君……?」

カナタ?「グギャアアアアア!」

咆哮するカナタ。

カナタ(頭の中が殺意に汚染される……! でも今は!)

カナタ「ギャアアアアアウ!」

今までとは比にならない速度で悪魔へと飛び掛かるカナタ。先ほどと同じように防ごうとする悪魔。しかし槍は爪を砕きそのまま悪魔の肩へと突き刺さる。

悪魔「ガアアアアア!」

肩を押さえカナタを睨む大型悪魔。

カナタ「おまエを……殺ス……!」

そう呟くと、一直線に悪魔へと迫り心臓を穿つカナタ。

悪魔「グア……ア……」

死体が黒く染まり、瘴気となって体が徐々に崩れていく。

カナタ(頭の中が侵食される……世界中全てのものを殺してしまいたい……!)

瘴気を全身で吸い込みながら咆哮するカナタ。

カナタ「ギャオオオオオオ!」

ライチ「カナタ君……なんだよね?」

ライチがそっと近づくと、

カナタ「近……づく……ナ……!」

槍を構えようとする右手を左手で抑えるカナタ。その手はガタガタと震えている。

そこに救援隊が駆け寄ってくる。

サエ「救援隊到着っと」

ジン「奇妙な悪魔ですね」

サエ「こんな悪魔見たことねえ。それにこりゃなんだ、悪魔が悪魔を殺ったのか?」

ライチ「カナタ君が突然自分の胸に槍を突きたてて……そしたらこんな姿に……」

ジン「あの落ちこぼれがこんな姿に? どこまでも迷惑をかける存在ですね」

本を構えるジン

ライチ「待って! きっと戻る、戻すから!」

ジン「ライチ先輩、下がってください。彼はもう、人じゃなくなっている」

ジンの本が光り始める。

サエ「ああ、あたしの守護天使はアレを今敵だと認識した。殺すしかないぜ」

斧を構えるサエ。

ライチ「待ってよ! 同じ騎士を目指して努力した仲間じゃない! そんな簡単に……!」

サエ「じゃあ聞くが、お前はあの暴走を止められるのか? 正直、殺してもいい、なんて言われてもあたしは難しい。生かして鎮めるなんざ、到底無理だ」

ジン「同感だな。彼のあの姿での戦闘能力は私たちのそれを遥かに超えている。全員でかかって五分といったところでしょう」

ライチ「私の守護精霊はまだカナタ君が人間だって言ってる。私個人としても、騎士としても、見捨てることはできない!」

ジン「ではどうするというのです? 私たちを止めようとでもしますか? 無理でしょう。先輩は優秀だが戦闘能力はないでしょう?」

ライチ「それは……」

カナタ「グギャアアアアアアアア!」

ジン「サエさん前衛は任せた。隙さえ作ってくれれば渾身のレーザーで頭を撃ち抜こう」

サエ「ハッ、アタシが頭を落とす。アンタは目眩ましでもしてな。さて、来るぜ」

カナタが跳躍。サエに向かって槍を突く。

ライチ「ダメ!」

それをライチが庇う

カナタ「グ……」

ピタリと動きを止めるカナタ。

ジン「ライチ先輩、どいてください! その位置じゃ巻き添えを食う!」

サエ「あたしが殺る。どきな」

手でライチを押しのけるサエ。

ライチ「お願いカナタ君……戻って……!」

カナタ「グウ……ライチ……ねエ……?」

カナタの両手から力が抜け、バタリと倒れる。そしてカナタの体が四肢の先端から徐々に人間に戻る。

サエ「ワーオ、マジで戻りやがった。本当に元人間だったんだな」

ジン「またいつ悪魔化するか分かりません。役に立つかは分かりませんが念のため縛っておきましょう」

紐を取り出しカナタの手足を縛るジン。

サエ「ところでそこに転がってるのは誰だ? 生きてんのか?」

ライチ「真実の騎士のシンジさんです。カナタ君が倒した悪魔にやられて……なんとか生きてはいるけど、瀕死の状態」

ジン「流石はライチ先輩。並みの花の騎士なら救えなかったでしょう」

ライチ「ともかく、早く病院に連れて行かないと。それと、カナタ君はどうなるのかな……?」

ジン「騎士協会に報告、処遇が決まるまでは厳重に監禁、でしょうね」

ライチ「そんな! カナタ君がいなかったら強い悪魔が町を襲ってたんだよ!?」

サエ「だからそれも含めてどうするか決める、っつーことだろ?」

ジン「そういうことです。サエさんにしては上出来ですね」

サエ「どういう意味だコラ!」

ライチ「まあ落ち着いて……サエちゃん、悪いんだけどシンジさんとカナタ君のこと運んでくれる?」

サエ「仕方ねぇなぁ。ライチにゃ無理だし、ジンなんかはもっと無理だからな」

ジン「……そうですね」


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