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まぶしいかげ

今よりもっと全然仕事なんてなくて、続けていくのが精一杯だったころ、「お金、ないんでしょ」と渡してくれた大入袋を開けると油性マジックで「がんばりや。」と書いた500円玉がひとつ、転がり出てきた。

成長を見てもらいたい、と思う相手が遠くにいることもある。

人は別れる時、記憶に関してだけはどうして荷物を取り違えたみたいになるんだろう。

相手がしてくれたことばかり、自分の手元に残る。相手が持って行った荷物の中に、自分がしたことがいくつ入ってるか、知ることは出来ない。

だから感謝ぐらい、餞別だと思って、目をつぶって、もうどこにいるのかわからなくても、だいたいここらへんだと思う方角にむかって、勝手に、やけくそで、投じたい。

水の底に深く沈んで二度ときらっとひかることのない思いだとしても。

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