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和人と彼女と時々父さん(2022リメイク)

「うわっまた来てる!?」
働いている先輩の喫茶店で、オレが思わず声を上げてしまった。
「誰よー?」
「父さんだよ!ね、イワタ!父さんが来た!」
「え、ウィルさんですか!?うわあ…!」
半ば慌てるようにしてオレとイワタは店の奥に隠れた。
喫茶店に現れる魔の手。それは先輩がいない時を狙ってのことだった。
正直先輩に絶対的に勝てる人はいないと思っている。

「イワタさんも大変ね。すごいチカラを持ってるばかりに」
すっかり気に入ったのかメイド服を召したベルーチェことベルが、ため息をつきながら言うと店のドアが開かれた。
「あら、いらっしゃい。ウィルさん。お仕事は?」
「やあベルちゃん。まだ有給休暇中さ。イワタ君を知らないかい?」
「今日は来てないわ。だいたい毎日来る人じゃないもの。それよりウィルさん!サービスするわよ!」
「ホントに?そりゃあ良かった。お金なくってさぁ~」
ウインクをするベルと父さんが楽しく盛り上がっている合間に、オレはイワタにローブを渡した。
透明化するローブ。先輩が自宅からイワタのためにと、取ってきたものだ。
オレには気づいてない父さん。けれどこの父さん、もしかしたら――。
「やだなあ。僕は研究したいけど…その…人は対象外だからね。魔物は研究したいけど、人までは研究したくないな。ママと息子さえ見てれば十分だからね!」
と父さんの大きな声が裏方までに届いた。
父さんは自分のために嘘をついたりはするけど、平気で人を騙したり、陥れたりはしない。少なくとも母さんやオレが生きてる時にはしないと思う。
――これはオレの父さんだ。恐れている異次元の父さんではなかった。
家族が大好きな父さんは、オレ達が悲しむ姿を一番苦手としているからだ。
「……本当、なんですかね?」
不安になっているイワタが尋ねた。
「じゃあもし嘘だったらさ、父さんを思い切り殴っていいよ?母さんもきっと認めてくれるさ。それにあの父さんはマッドサイエンティストじゃないみたいだ」
イワタは黙って頷いてはため息をついた。
「ま、今日はベルに任せてお帰り頂こうよ」
自分の唇に右手で人差し指を当てれば、イワタは微笑んでいた。

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