2024年7月13日フィンランド1人旅 【ナーンタリ→タンペレ】
5日目
目を覚ましても明るい事にも慣れてきた5日目の朝。外に出るとキンとした冷たい空気と強い日差しが当たる。4月の早朝ってこんな感じだよなと思いながら庭でタバコを吸う。朝露で歩いたところが足跡になっていた。見るとソールがツルツルになってきてる。ちょっと痛んでるなと思ってたVANSもよく見たら底に穴が空いてるしソールは剥がれているし、すっかりボロ靴になってきてる。
ランニングシューズを履かずに普段履いてるスニーカーで来たのはBECKのコユキが普段から履いているadidasの靴で海外を旅してライブをしていたから真似したくなった。指先のマメが痛い。
ヘイ、と声を掛けられて振り返るとスタッフ。
ブレックファスト?と聞かれて、予約してないと伝えると大丈夫!と。
マジかよ。と初めて宿泊先の飯を食う。
今のところチェーン店、スーパー、ラーメン屋ばかり行く自分。
バーとして使われていたロッジに入るなり、朝飯を出してくれた。美味い。フィンランド朝飯。そしてどんどん出てくる。特にフィンランドの郷土飯のパン。これが凄く美味かった。
モチモチしたパンに硬めのパンが巻かれている。小さいから一瞬で食べれてしまうが、これは最後の一口に取っておいた。コーヒー飲む?と頻繁に気にかけてくれるスタッフの母ちゃんらしき人。本当にありがとう。けど飯の量たくさんだからちょっと待ってて。どうやらここは朝食付きらしい。次々と子連れ世帯、老夫婦が入ってくる。一通り食べ終わり、スタッフに伝えたいことがあった。「地球の歩き方」のナーンタリのページを開いて渡し、「自分が旅の参考にしている本に、ここのホテルが掲載されてたよ。」
え!みたいな顔して両手で読み込み、そのコマを発見すると凄く嬉しそうに携帯で写真を撮っていた。
その間、「ここに日本人って泊まったことあるの?」と聞くとうーん、みたいな顔してた。
てっきりここに泊まって掲載する、またはされる依頼をしてるのかなと思ってたけど、存外そんなことはないのかもしれない。本当に嬉しそうだった。
多分彼はここのホテルが好きなんだと思う。
昨夜、サウナ後のシャワーを浴びて着替えて涼んでる時、ホテル敷地内の入り口から女の子の話し声が聞こえた。声の方を見るとスタッフの人と話していた。
そうだ、この時期はフィンランド人に取って毎日がイベントみたいなモノなんだ。丸一日極寒で夜の日もあるこの国の、日が沈まない明るい夏がイベントになってる時期。
そんな時に自分たち家族で経営しているホテルで1日中スタッフをする。彼はここの仕事が好きなんだろうなと思った。
次の街はタンペレとユバスキュラどっちがいいと思う?
と聞くと「タンペレ!」とのことでタンペレに決める。
ザッと教えてもらい、彼の写真を撮らせてもらった。
いいよ!みたいに笑う彼はかっこよかった。名前はなんていうの?と聞いたら「エリアス!」と答えてくれた。
やっぱり全然乾いてなかったTシャツを袋に詰めて荷物をまとめる。
帰り際まで見送ってくれるエリアスと握手をし「アリガトゴザイマス」と言われた。「You're welcome」と返す。
エリアスが着ていた服は黒Tシャツ。その胸に「shibuya scramble」と書かれていた。
この国に来て初めて街に名残を感じながら改めてトゥルクに戻る。次の行き先はタンペレ。
バス停に向かうまでにある道端に2つに割れたメガネが落ちてた。なぜ…?
その先のコンビニの横に、昨日まであったポイ捨てされてた酒缶が距離を縮めていた。
バスはすぐに来た。TURUK。もう見飽きた字面。そのバスに乗りまたトゥルクに向かう。
バスで行く方が安いが便は少ない。と言っても電車でも便が少ないし高い。
どうしようかなーと思いながら、街の中心地であるバス停の近くにあるインフォメーションまで動画を撮って歩く。やっと余裕が出来てきたのでInstagramのストーリーに載せようと思った。
この時の事を書きながら、今でも考え込んでしまう事が起こった。
信号待ち中にぐるっと一周動画を撮ってた。すると横断歩道の対面に手を振っているおばさんがいた。
もしかしてシャッターチャンスってやつなのかと思い携帯を止め、青信号になり歩いている時にカメラを構えるとファインダー越しに中指を立てられた。撮ると大きな声と物凄い形相でカメラを掴んできた。
え!とビックリすると、どうやら撮るなと伝えていたらしい。フィルムカメラで撮ったのでデータの確認が出来ないのを分かると、グッと握って、こちらに向かって何か叫んできた。
何を言ってるかはわからないが何を言おうとしてるのは分かる。取られたカメラを投げられるかと思いソーリー!とかごめんなさいと思わず日本語が出てしまうぐらい焦りながら謝る事しかできなかった。街の中心で人通りもあるところで、今まで向けられた事のない視線を感じた。後ろにいる人も止めようとしてくれたのがわかった。ひとしきり叫び終わったおばさんは、目の前から去っていった。
いつかはこうなる日が来るのではないかと思っていた。
知らない人に写真を撮られて、嫌な思いをする人のが多いのではと考える時はあった。
カメラを持ったら撮りたい。けど、関心の無い人からしたらただの隠し撮りで、物凄く一方的な記録方法だ。
だから普段カメラを滅多に持ち歩かない。撮っても怒られたらどうしようみたいな。思わず撮ってしまう時もあるけど、実はダメだよなって気持ちが薄れていってしまってたなと思った。
例えば撮りやすそうな人を狙って撮ってる自分がいないかとも思った。
所謂調子に乗ってた。
写真を撮ることの距離感について感じる瞬間がある。
相手に嫌な思いをさせてないか?と。
それが今回カタチになった。
勿論彼女にも悪いし、そして、今まで知り合ったフィンランドの人たち全員に恥ずかしい思いをさせてる気持ちがして物凄く反省した。
浮き足だたないように気を付けてたつもりだったんだけどな。
バスのインフォメーションは土日は休みだったから駅まで歩く。
どうしてもそわそわして、手に持ってたカメラを隠して周りをキョロキョロした。
すると突然街中で叫び声を挙げてるおじさん(今まで一回も見たことない)に出くわした。別の人に叫んでるらしくて、それまでは面白おかしく見てたかもしれないけどびくびくしてた。
駅に着いた。目的地の電車まであと2時間。料金もバスの倍。けど何でも良かった。次の行動に移りたかった。
駅の構内で足元の写真ばかり撮った。時々移動して、別の地面に立ってる自分を撮ったり、気晴らしでストーリーに足だけ写してる写真もあげた。
喉が渇いて水もないからスーパーまで歩いていると、パートナーと一緒に歩く盲目の人を何組か見かけた。どうやらウォーキングイベントをやってるらしい。
遠くからサックスの音がした。ジャズの路上ライブでも始まったのかと思ったら、特殊な車椅子に乗った人がロードバイクと共に大きな音でサックスを吹きまくり、その周りをロードバイクの集団が着いていく。手を挙げていると、そこのほとんどの人がHELLOとかHEYとか言いながら俺の前を走り去っていった。
あらゆる後悔が溢れてくる。
スーパーまで行ったけど酒を買う気にもなれなかった。
いつの間にか出発予定の10分前になり、構内に特急電車が入ってきた。周りの人も撮ってることを確認してから、iPhoneを構えて、「あなたのことは撮ってませんよ。」というポーズの意味も込めて上に上げた。撮ってすぐに引っ込めた。
携帯を構える事が罪のように感じながら電車に乗った。1シートに2席の通路側。景色は一才撮らない。雑誌に出ている小さくてカラフルな住宅なども車窓から流れていった。ほとんど緑だったけれど。
その間もずっと考え事をした。日本だったらすぐに誰かに相談できたかもしれない。ネットも繋げてたけど、わざわざ連絡して相談するとか、そういうことではない。立派な言い方だけど本当に一人ぼっちなので、ただただ自分と向き合って答えを出さなきゃと思った。
そして、自分の中で答えを出して、次の街の目標を決めた。
1時間半ぐらいして次の街のタンペレに着いた。町に降りた時、また今までとは違う街の雰囲気にワクワクしたけど、写真は撮らなかった。ヘルシンキは東京、トゥルクは名古屋、ナーンタリは湘南、タンペレは川崎みたいな街だ。川崎全く行ったことないけど。
駅構内に焼き飯の店があった。
炒飯か!米めっちゃ食いたい!
入店すると5種類ぐらいメニューがあって、揚げ物が乗ってるチャーハンを頼んだ。
毎日ナナチキやLチキを食べてたのにこっちに来てからフライ系のモノを食べてない。
って思ったけど一昨日ケンタッキーのハンバーガー食べてました。すいません。
テーブルに届けられると中々ボリューミー。
久しぶりではないんだけど久しぶりの揚げ物うまい。米はなんかわからんかったけど海外の米だろということで別物として食う。美味かった。
とりあえず宿を取ろうと思い、サイトからすぐに予約した。16人相部屋で6800円ぐらい。シングルルームは高いな〜〜〜なんて思いながらも、おそらく選択肢最後になるかもと思い相部屋を予約。
駅から宿に行くまで、落書きやゴミの散乱が他の街よりも多かった。多分ここが今までで1番治安が悪い。道中、全身を布で隠してる子連れの女性が歩きながらサッと紙巻き煙草を巻いてすぐに火をつけてた。
宿に着くとスタッフの人と話してる日本人らしき人がカウンターにいた。英語で話してることを羨ましく思った。
自分の番になり、Google翻訳を起動した。
どうやらまだ予約の情報が反映されてないらしい。それまでロビーで待っていた。待ちながらも、ずっとさっきまでのことを引きずっていた。
割と間も無く呼ばれて、ルームキーカードを渡された。18号室。入ると真っ暗で、大量のベット。予約した時に残り一席と書いてあったから、ここに人が埋まるのかと気が遠くなる思いで部屋を彷徨くと、カウンターにいた日本人の方がいた。1週間はいかないけど、久しぶりに日本人と話した。
相部屋初めてなんですよね、ベッドってどうやって決めるんですか?
みたいな話をした。どうやらここは自由に決めていいという、珍しいシキタリらしい。
とりあえず目に着いた二段ベッドの上に荷物を置く。けど、すぐに下に置いた。
鍵のついたロッカーも無かったから下の引き出しにデカいバッグとNikonの一眼も入れた。初めて一眼を持ち歩かない日だった。
ホテルを出て、その通りは銀杏の匂いがした。なぜ・・・。
ムーミン博物館を横目にコンビニに入る。
初めて見るビールのシリーズがあった。
9ユーロ以上する。まぁ記念にと思って飲んだらクソ不味かった。
さらに歩くとラーメン屋があった。Noodleなんとか。入店。前までのも読んでくれた人ならわかるかもだけど、そういう病気だと思ってる。
メニューは
シーフード、ポーク、チキン、ビーガン?みたいなの。
カップヌードルかよ。ポークを頼んだ。
サイドメニューに寿司があった。一貫200円ぐらい。まぁちょっと高い回転寿司だろぐらいの気持ちでエビとサーモンを頼む。
どうやらここはビュッフェ形式で、キムチとかサラダとかライスとか取り放題らしい。
キムチだけ食べると美味かった。甘辛系。
寿司が届く。ちゃんとした米だった。
食べるとこれもちゃんと美味い。というかめちゃくちゃ美味い。特にサーモン。噛みごたえあって味もしっかりしてた。安い回転寿司で育ったせいか、なんか感動した。
そしてメインのラーメンが届く。クソ不味かった。
先述した決めてた事の一つが、身だしなみを整えることだった。
髭面で金髪で、ヨレた服の明らかな海外旅行者という異物に写真を撮られることは不愉快なのではないか。当たり前のことをしようと思った。
なので、服を買いに行った。めちゃくちゃ高い。
古着屋があった。まぁまぁする。でもこれを買おう。レジに持ってくとタッチ決済が弾かれる。
服が買えない…?
恐らくだけど、海外旅行あるあるの、着込んだ服で行くはフィンランドでは必要ないと思う。
とりあえずスーパーで髭剃りと整髪料を買った。
これは日本とあまり変わらなかった。
ちなみに野菜はめっちゃ高い。あとニンジンは細い。
マンションみたいな建物を抜けて工場地帯が見えてくる。そこの歩道を抜けていくと湖に出た。
湖面を見ると、なんかコーヒーみたいな色してるような…と思いながら水面を見ると魚が泳いでいた。後で言われたけど、多分これは藻とのこと。
そこをさらに道沿いに歩くと、ビーチみたいな場所についた。そこにいた人たちが思い思いに過ごしてる。水着で横になったり、読書したりゴロゴロしたり。こういう時も携帯をいじってる人がいない。
湖の辺りに飛び込み台みたいなところがあった。小学生、中学生ぐらいの子供たちがそこから飛び込んでる。
その周りを大人が海水浴、いや湖水浴していた。
時刻は20:30。青空が広がってる。所謂リゾートな雰囲気を眺めてると、ある女性が自転車を止めてちょっと離れたところに座った。水着を既に着ていて、その場で服を脱いで湖を緩く泳いでいた。その後、湖から上がり、タオルで体を拭き、編み物をやり出した。違和感を感じつつ、でも、何故かその姿に妙に感動した。水着は無い。上野のコインランドリーに置きっぱなしにしてしまったからだ。けど、下着でもいいかなと迷う。迷いに迷って服を脱いだ。下着一丁姿で湖に足をつけて見る。飛び込んでる子供達の真横で手すりを下って。物凄く冷たかった。夏なのにこんな冷たいのかよ。手すり待ちしていたおばちゃんと対面になるカタチになり「very cold」と伝えた。おばちゃんは笑いながら「15!15!」と伝えてきた。15℃ね。いわき健康センターの水風呂と同じぐらいね。だったら任せとけ。肩まで浸かってみる。凄く冷たい。寒さに歪む顔を見ておばちゃんとその友達はニコニコした後普通に入って泳ぎを楽しんでいた。子供達や、そこで泳ぐ人たちとちょっとだけ同じ目線になれたような、そんな気持ちになれた。
岩場で考えたことがあった。けどどうしよう。
本当にお願いするのか。それこそ迷惑ではないか。
そんな考えがぐるぐる回って結構な時間がかかった。
目の前にいたカップルの男に話しかけた。
「あそこの高台から俺が飛ぶからこのカメラで納めてくれない?」
「sure!!」
快諾してくれたなら飛ぶぞ。やったる。
高台から飛ぶ子供たちの順番にそれとなく並んで、一旦下を眺める。怖い。けど俺は小浜育ちだ。夏は防波堤飛びまくってたんだ。けど、あれって飛び始める最初が1番怖いんだよな。
高台から下を眺める俺を見ていた中学生ぐらいの人が俺を見て笑いかけた。
オッケーやってやるよ。
ちょっと後ろに下がり、思い切って飛び込んだ。
めちゃくちゃ冷たい。そして、耳と鼻が痛い。目を瞑ったまま水面から顔を上げる。思ったよりも飛んでいた。ここは底が深かった。
必死に陸まで泳ぎ、そのカップルのところまで行った。
「kiitos!!」と伝えると何か笑いながら言ってた。
何言ってるかは一才分からなかったけど、楽しそうだった。
そしてすぐ
「あなた達のことを撮らせて欲しい。」
と伝えた。男は快諾し、ん?みたいな顔を女はしたけど、どうやらあまり伝わってなくて、男が一言言ったらこっちを笑って見てくれたところを撮る。
決めてたことの一つ、そこにいる人たちに受け入れてもらうことだった。
ちょっとは近づけたかな。
なんかスッキリした気持ちになって、体が乾くまで湖を眺めてそこを離れた。
近くにスケートパークがあった。
数人いた中に、物凄く上手い人が1人いた。
スケボーって見るだけでめちゃくちゃ楽しいよね。ただ楽しむ人たちも見てて良いけど、次々トリックを決めるその人が最高だった。
思わず流していた曲を変えて、中学生の時に聞いていたメロディックパンクに変えた。MXPX。
物凄く撮りたかったけど、眺めるだけにした。
ホテルまでの帰り際、適当に歩いていると川沿いに着いた。
ここでもトゥルクと同じように大学生ぐらいの人たちが多く遊んでた。けど、一つ違ったのはその中を縫って進むようにパトカーが見回りしてた。
ホテルに戻り、着替えた。
ライブハウスに行くのだ。
前もって調べることがライブハウスぐらいしか無い自分からしたら、この国のライブハウスは全然検索しても出てこなかった。
ライブハウス>>>>>喫煙所>>>>ムーミン。
例えばユーチューバーで調べても行った人がいないから、ローカル過ぎたのかもしれない。
では何故知れたのか。地下歩道の壁に貼ったフライヤーからマップで調べて、場所を調べた。
フェスなどはいくつか知れたけど、そこで有名なトップオブトップは興味がない。
ライブハウスで遊んでるその街とバンドとライブハウスを知りたかった。
そう考えると自分はローカルなことしかしてない。
サッと着替えてホテルから歩いて10分しないぐらいの所へ歩く。
一応ホテルの人にライブハウスはどこにあるのか聞いたら、四つ紹介された。「その中で治安が1番ヤバイのはどれ?」と聞いたらなんとも言えない顔をしていたので、割と現地の人からしたらどこでもそんなもんなんだろうみたいなもんだと思った。
というのも、その内の1つの前を通る時に、ライブハウスの前にいた集団が煙草らしきモノを回し吸いしてて、明らかに煙草では無い匂いだったから大麻だと思ったし、すれ違う人も同じ匂いがした。これから行くところも、壁はラクガキだらけの階段を降りた先にあるライブハウス。レビューで「治安が悪い」と言われるところだ。こういう文化に縁のない人が行ったら近付かないだろうけど、自分は「これこれ!」となった。
イキってるわけではなくて、界隈では隅の方でもバンドマンだ。カルチャーに惹かれて育ったのだ。
ラクガキだらけの壁をなぞって入り口まで行って、受付の人と話した。Google翻訳で。
チケットは8ユーロ。日本円だと1500円ぐらいだ。イベント自体は3マン。フライヤーの場所と違かったけど、全然良い。
外の看板にはもう出順と、大体の時間が掲載された紙が立て看板に貼ってあった。
チケ代もカード決済。iPhoneでタッチするも、弾かれてしまった。ここもそういうパターンか〜〜。
今思えば、弾かれてしまう場所が街のバスや古着屋など、規模がデカくない所を扱う店ではvisaのタッチ決済が使えなかった。
もう現金が全くない。
もし、もし万が一、日本から来た奴がこの街のライブハウスに来たぜ的な面白い扱いされたらワンチャン入れるのでは、とズルい考えはよぎった。いや、正直それをちょっと期待していた自分もいる。
チケット弾かれた〜の会話のグルーヴのままスタッフと話していると、ネルシャツを着た男が来た。その男は俺のことを一瞥した後にスタッフの人と話し、ほう、と見た後ユーロ札を出してくれた。チケ代を奢ってくれたのだ。いや悪いよ!って言いながら心ではマジありがとうと思ったのはここだけの話。
その男のおかげで俺はライブハウスに入れた。本当にありがとう。
ネルシャツ男もなんだから、ネル男にしよう。ネル男に招かれてバーカンへ。室内の作りがジャズバーに近いもしれない。入り口からカウンターのあるバーカンへ。そしてテーブルが置かれているホールへ伸びるフロア。何か券みたいなのを渡されたがネル男はそのままカウンターでビールを奢ってくれた。ありがとうネル男。ブラザーブラザーってずっと言ってくれてた気がする。どうやら必ずドリンクは頼まなくてもいいらしい。
ここでよく見るビール、KARHUという銘柄はどうやら日本でいうアサヒスーパードライみたいな立ち位置っぽい。どこにでも置いてある。
ネル男に連れられてフロアの奥に行くとネル男の仲間達がいた。男女の五人組だ。一つ、奢られるということに懸念してたことがある。相手の誘いは全部受けなきゃいけないということだ。正直奢ってもらったことは嬉しいが、治安が悪い街ではある。外で大麻吸ってる黒人集団もいたし。まぁそん時はなんとかなるかと思いながらその仲間グループと挨拶する。男女五人組。物珍しそうにこっちを見る人、Google翻訳する間に退屈そうにする人。付き合わせてすまないけどこれがしたかったです。
そういう対応に慣れてない人と関わらせてもらいたかった。その内の1人が「ビール飲みたかったら俺に言えよ!」って言ってきてくれた。その男は体がデカかったし、ビールの銘柄は熊だからクマ男にする。軽く自己紹介をする。その隣の派手髪の女に「ケーブルテレビみたいなことやってんなぁ!」と言われた。
スタートは21:30。けど時間は10分押しらしい。この国に来て初めて時間通りじゃないことを経験した。
ダラダラ飲みながら待ってると白いレスポールに髪を短く切った男がステージの真ん中に立ってギターを弾いていた。ボーカルだな。リハというか、弾いて遊んでるというか。その内、ベース、ギター、と続き最後にドラムも位置に着いた。雰囲気的にオアシスとか、ヨーロッパのロックバンドを通ってきたタイプなんだろうなと思った。そろそろ始まるぞとステージの下手寄りの方からライブを見てると演奏がドン!と始まった。
ドラムボーカルだった。お前が歌うんかい。
熱いドラムボーカルからスタートし飄々と楽器を弾くフロント。セットリストが10曲以上あった。知らんバンドの10曲か〜と思いつつ楽しめた。知らない国の知らない都市の街のライブハウスで見るローカルバンドは見てみたかったからワクワクした。一応白レスポールも歌った。半半ぐらい。良かった。
どうやら先ほど話したグループはこのバンドの仲間内らしい。
なんとなく手持ちのコンデジで数枚撮ると、そのバンドのカメラスタッフらしき人がミラーレスで撮ってた。ジェットキャップに黒T半袖ハーパン。その隣でこうやってカメラを構えると久間木さんがいるような気がしてしまう。
最前で盛り上がる人、後ろのテーブルでジッとしてる人はまだわかる。カップルで踊り出す人、テーブルで酒を飲みながらライブを横目に喋ってる人。こうしなきゃいけないみたいな雰囲気を感じなかった。気楽にライブを見れた。
ライブの途中、肩を叩かれてクマ男がビールを持ってきてくれた。まじキートス。
1バンド目が終わり、外に煙草を吸いに行った。外には先ほど喋ったグループの女の子2人が煙草を吸っていた。何やら俺に話しかけてくる派手髪の女の子が凄く楽しそう。思わず俺もニコニコして相槌を打ちながら笑顔で煙草を吸った。
2バンド目はKORN、limpが好きそうな音楽性をしていた。体のデカい4人がフロントに立つと雰囲気がある。アディダスのTシャツにプーマのキックス。
けど、ボーカルの人がステージに不慣れ感があって、これもまた地元バンド感あるなと思った。何曲かカッコいいビートの曲があったからCDチェックしてみようと思ったけど無かった。まず物販がツアバン以外無かった。地元バンドかよ。
バンドをやってる人にしかわからない機材の話なんだけど。
竿隊の足元はBOSSとベリンガー多め。それかアン直。マルチの人もいた。ハコのアンプは5150じゃないPEAVEY。ベースはベリンガー。ashdownのパクリモデル。地元バンドマンかよ。
色んな場所で見てもローが全然回ってこない。高音ばかりで音がまっすぐ向かってくるような感じ。音良くなかった。
ライブ中、ここのスタッフの人とちょっと話した。どうやらこの国にはメタルバンドが1000バンドぐらいいるらしい。
で、その中で有名なバンドを教えてもらったりした。日本のメタルバンドで有名なのは?って話でX Japanとcolonyと名前を口頭だけど教えた。どっちも知らなかったから聞いてくれるとありがたい。
一応バンドをやってると伝え、HI-STANDARDなんかが有名だよと伝えても伝わらなかった。
改めて日本とはカルチャーの距離がかなりある。それはフィンランドから見てもだなと思った。
フィンランドでここ数年で1番有名なメタルバンド「ローディ」。
煙草を吸い終わってからスーパーに向かった。金が使えないなら何かで返さなきゃ。と思って煙草を3箱買った。クマ男に1箱。チケ代と酒分でネル男に2箱。ただ煙草がどこに売ってるかわからない。ここの煙草は日本のコンビニのようにレジの後ろにたくさん飾られてるのではなく、棚の戸を閉めて客に見えないように販売している。
とりあえずライブハウス近くのスーパーのレジだけ見に行って売ってなさそうと判断した後、どこにもコンビニらしきモノが無く、街を彷徨い、ダメ元でスーパーに戻って試しに聞いたら売ってた。また金マル。
3バンド目が始まる前にハコに戻り、クマ男に一箱渡した。しかし、クマ男はどうやら吸わないらしかったが隣にいる彼女は煙草を吸うからと喜んでくれた。ネル男はどこかへ行ってしまってた。
多分ここの国の人たちは見返りを求めてなさそう。
トリのバンドのライブが始まった。一時期のKORNのフィールディみたいな髪型をしたボーカルと、デトロイトメタルティみたいな格好のベース。全然好きじゃなかった。帰ろうかと思ったけど奢ってもらった身だ、最後までちゃんと見るぞと思いつつ、外に3回煙草を吸いに行ったり受付の人に話を付き合ってもらったりした。
この受付の人が黒髪で美人で背が小さい、なんか日本人に近い雰囲気を持つ人だった。というか高校の部活の先輩に似てた。Google翻訳を通して話しても嫌な顔せず付き合ってくれる、優しい女性だった。ポロシャツに乳首が浮いてた。
演奏が終わりクマ男達に挨拶した。帰り際、お前が歌うんかいのセンターでギターを弾いてた男が受付の女性と話してた。尻を撫でていた。お前がヤレるんかい。
外に出てタバコを吸い、ちょっと話して写真を撮らせてもらった。
話に付き合ってくれた人に一通り挨拶した後、クマ男に会って、手を合わせてお辞儀してきた。You're welcomeと返した。
そういや客層の話なんだけど、日本と、というかいわきと変わらなかった。地元の友達が来て、父ちゃん母ちゃんらしき人が来たり、ガラ悪くてもよく見たらナードっぽかったり。年齢層もバラバラ。地元イベントはこんなに似てるものなのかと驚いた。
ライブハウスを出た後、街に写真を撮りに行った。夜になりかかってない晴れ模様。夏祭りだとこれからが本番である。土曜日だからか、街に人がたくさんいた。パーティ状態である。といっても、人口が少ない国だから言うほどわちゃわちゃはしてない。上野の夜のほうがわちゃわちゃしてる。
酒を飲んで大声で笑う人たち、トラムを待つ人たち、恋人と一緒に川を眺める2人、などなど。前日にいたナーンタリとはまた違う雰囲気の活気があった。若いって言えばいいのかな。物凄く良いロケーションでずっとベッタリだったカップルや、結婚かなんかのパーティで、花嫁ドレスを着て葉巻?を吸ってる人がいた。
街の写真をパシャパシャ撮りホテルに戻る。
二段ベッドの下。16人入るところに全然埋まってない相部屋の静けさに、どことなく寂しさを感じてしまった