2024年7月12日フィンランド1人旅 【トゥルク→ナーンタリ】
4日目
6:00頃に起きた。朝起きるのが早い。
足の痛みと疲労感を感じながらも今日こそは移動するぞと部屋を片付けて荷物をまとめた。
鍵を置いてチェックアウトした。受付にスタッフはいなかった。
次に行く街はタンペレという街か、ユバスキュラのどっちか。
タンペレという街はフィンランド第二の都市。地球の歩き方曰く、サウナの発祥地。けど第二の都市とは思えない静かな街と書いてあった。どうしよっかなー。まぁいいや適当で行きやすいところで。
バスのインフォメーションまで歩くとまだ営業されてなかった。
街中の電工時刻標を見ても、どちらの街へ行くバスもまだ運行していない。
数が少ないとは聞いていたから、そしたらそれまで時間潰しがてら近くの街に行こうと思ってバスに乗る。
ナーンタリという、ムーミン発祥の街だ。この街からバスで40分ぐらいらしい。
バスで乗車券を買おうとするも、タッチ決済が使えない。またかー。後ろに人がいるし、こうなったら現金だと思って値段を聞いたら「four」と言って指を3本伸ばした。
大人しく4€支払いバスに乗る。
田舎の道路を走り続ける。大半が森の街だからそんなもんなんだけど。
開けてきて見えた街がナーンタリ。
バスが停まり大荷物の自分が1番最後に降りる時、運転手が後部ミラーで俺をジッと見てることに気付いた。何見てんだと思いつつ外に出ると手を挙げてバスは去っていった。
ナーンタリはデカい建物もない、おだやかな街だった。
小さい街で、歴史のある旧市街と言われているところには赤青黄の家屋が並んでいる。石畳を抜けていくとムーミンショップという店に辿り着いた。
「これがムーミンの観光スポット…?」といささか疑問に思いながら中に入る。ぱっと見観光客的な人がいないなと思った。雰囲気だけど。
外のテーブルでおばちゃん達が一服してたってのもあったかもしれない。
中はムーミン関係のグッズがたくさんある棚、その向かいにドーナツやパン、お菓子がショーケースの中に入ったレジがあった。
店内は親子や年配の方がしばしばいる。
一通り見る。グッズめちゃ高い。マグカップ3000〜4000円ぐらい。もしかしたらブランド物はそれぐらいかもしれないけど、ダイソーで済ませる民からしたら高すぎる。ムーミン全く見たことないし。
ここまで書いてなんだけど、フィンランドは建築と家具が有名。AALTOっていう、有名な建築士で家具デザイナーの映画もクラモトで上映している。出国前に「フィンランドの生活」みたいな名前で美術館でも展示されている。けど、自分は全く興味がない。入国手続きで前にいた日本人が観光目的を聞かれた時に「アアルト!」って答えてたぐらいだから、もしかしたらnoteかインスタを通じて「この人フィンランドのそういうの書くかも!」って思ってる人がいるかもしれない。全く興味がない。なんで行ったんだよ。
ムーミンショップでとりあえずコーヒーを頼む。後ろに並んでる人がいなかったので、どこかこの街にオススメはありますか?と聞くとムーミンランドと答えた。ここ以外にムーミンの何かがあるんだな。そして、コインランドリーはあるかと聞いてみた。
少ない着替えで過ごしてるからコインランドリーがあれば最高。奥に行ってもう1人の店員さんと話した後、「ホテルにだったらどこにでもあるよ」とのこと。街にはないらしい。
kiitosと答えて外のテーブルでコーヒーを飲んだ。詳しい時刻は覚えてないけど午前中。
うまく言えないけど、この街はいいなと思った。
うまくは言えないけど。
カウンターに飲み終わったマグカップを下げて、挨拶して写真を撮らせてもらった。
ムーミンショップを出て、道なりに歩いてみると視界が広くなっていく。海に出た。湖かもと思ったけどマップで見るとどうやら海に繋がる。
レストランやデカいヨットハーバーが点在する。
ちゃんと手入れされた花や苗木。海街で育ったからかもしれないけど、フィンランドに来て1番心が落ち着いた。
ヨットハーバーの桟橋に沿って歩くと、レストランやヨットの事務所がある。さらに奥にいくとムーミン島に辿り着いた。
ムーミン島?マジで言ってんの?
確かに海を眺めた時に小島が見えたが、どうやらその島全部がムーミンの島らしい。
島に行くための桟橋を歩く。子連れが多い。そりゃそうだ。
100mぐらいある桟橋を渡って島に入り、島の入場口まで歩く。
ここで受付して入場するらしい。値段は約40ユーロ。7000円ぐらい。引き返した。
ゆっくり街を歩いて思う。俺この街が好きだ。ツアーバンドが初めて来た街に「この街が大好きです!」って言ってるのを見かけるたびに良いこと言ってんな〜と思ってきた自分だけど、それをちょっと恥じた。俺この街好きだわ。
4日目にして、物珍しい観光気分も抜けてる状態でこんなに惹かれることあるのかってぐらいビビッときた。
時間潰し程度に寄ったけど、思い切ってこの街に泊まろうと思った。が、検索してもどこも高い。この街は日本で言う湘南みたいな街かもしれない。
目の前に「HOTEL」と書かれた所に入ってみても、なんか作りがわからなかったり、人がいたから聞いてみても「私客だから笑」みたいに返されたり、看板から奥に入っていくとなんか歴史の博物館みたいな所に入ってたりした。
そういえば、確か「地球の歩き方」に掲載されてるところがあったなと、それを頼りに直接聞きに行ってみた。
直アポでスタッフの人に聞いてみるとめちゃくちゃ高かった。
マジか〜泊まれないな。
でも名残りないように行けるところ練り歩いて写真を撮った。家は外壁がカラフルで、抜け道みたいに伸びる路地が多くて、緑も多いし落ち着いてる。海も近い。本当に良い街だなと思った。
帰りのバス停に向かっている時に声を掛けられた。
振り向くと、先ほど「地球の歩き方」に載ってたホテルのスタッフだった。
「さっき伝えたのは家族用の部屋の値段だった!シングルルームだったらそれよりも安いよ」とのこと。マジか。当初言われてたそこのホテルの値段は23970円ぐらいだったけど提示されたのは11700円。
裏があるとかではなくて、実は「地球の歩き方」と同じ値段で、高すぎる値段を提示された時は正直ぼったくられてるのかの思った。
わざわざ探しに来たし、真面目な人なのかもしれない。
どうしようか悩んでるのを見て「カモン!」と言われ、とりあえず部屋を見せてもらうことになった。
ホテルの敷地内にはバーがあるロッジがあって、その脇にサウナもある。部屋はシングルルーム。全然良い。悩んではいたけど、オッケーと返事した。したのは良いんだけど、まさかの決済が出来なかった。
ここでそうくるか〜〜〜
どうするか、そうするしかないよな。
現金支払いした。もしこれで今後現金対応出来ない時があったら終わりである。残り七日間。結構な賭けではある。
部屋に荷物を置いて、洗濯物を出す。スタッフの人に「服を洗えますか?」と聞くと一瞬だけ間があり、案内されたところが庭のロッジ。サウナがあるところだ。戸を開けると目の前に大量の洗濯物と小さめの家庭用ドラム式洗濯機。その隣にシャワーとサウナがあった。溢れかえった洗濯物は、洗濯機が置いてある奥のトイレにまで散乱していた。物凄く家庭的だぜ。
そこに洗濯物を入れさせてもらい、街をまた散策しようとスーパーで酒をタバコを買いに行った。IQOSが切れてしまった。
フィンランドはタバコが客の目に付かないところに在庫が置いてある。
レジで「シガレットプリーズ」と聞くとカウンターの上の棚を眺め始めた。何の銘柄があるかわからない。
セブンスター?ノー!
ウィンストン?ノー!
キャスター?ノー!
メビウス?ノー!
ハイライト?ノー!
何ならあるんだ。
マルボロ?イエス!
お
???orGOLD?
なんだって?けどとりあえずGOLDということは金マルか。
GOLDプリーズ!
約13€強 日本円で2418円だったのは覚えてる
マジで言ってんの
呆然としながらタッチ決済した。
昼下がり。高いタバコを吸いながら缶ビールを飲む。この国に来て初めてゆっくりした昼だった。
この国のアル中率は10%らしい。酒大好き国らしいが、酒を飲みながらある人を滅多に見かけない。とか書いてて思ったけど、昼間から酒飲んでる人なんて日本でもいないか。平日だし。整備された林道のベンチで、灰皿と一緒になってるゴミ箱の脇でそう思う。
灰皿はあるけど、言うほど煙草を吸ってる人も見かけない気がする。
ゆっくりした後、先ほどまで「これで見るのは最後か」と思いながら歩いた海岸沿いと同じ道を歩く。物凄く落ち着く。小さい街。でも活気がある街。観光名所である教会は興味が無いが、その脇にある展望台に登り街を見渡す。晴れ日に見る海と街が凄く気持ちいい。
すると母親から安否確認のラインが入ったので、とりあえず展望台からの景色を送っておく。
時計を見て、仕事が終わってるであろう地元のやつらと電話して、日本語をバリバリ喋る。この時点ですでに日本語が恋しくなってきたんだろうな。饒舌になっていて、長電話に付き合わせてしまったなとちょっと考えてしまった。
海を眺めながらken yokoyamaの「Nothing' but sousage」を一通り聞いた。なんか無性に聴きたくなる。
飛ばした曲もあるけど。この旅をしていると新しいことに目を向けるよりも、自分の原点に戻りたくなる。
そういうのは旅を経験した人に起こるものなのだろうか。
このアルバムに「Ten Years From Now」という曲がある。この曲が大好きで、所謂「10.20.30年後の自分は何をしているのだろうか。想像した人生を送っているのか。想像できたら楽しいな。けど、どんな自分でも好きなことをやっているはず」という内容の曲だ。
自分の音楽の原点。今が31歳なので、果たして21歳の時、またこのアルバムを聞き始めた時、海外で1人で散歩している自分の未来は想像出来ているか。絶対に出来ていない。なんだったら去年のこの時期でさえ出来てない。予期しない事がやりたくなるものだなと思った。
このアルバムを聴き始めた当初の自分が考えていた人生は全然歩めていないけど、観光名所よりも、目の前の景色を見て感動していてよかった。
一通り街をまた見て、この街の夜(ずっと明るいけど)を見るために休もうと部屋に戻ると、スタッフの人に「ヘイ!」と声を掛けられてロッジを指差された。洗濯物が終わったと言う事か、思ったより早かった。申し訳ない。と思い洗濯物を出して部屋で干す。
これは絶対に乾かない。燦々としてる日差しの下に出せば一瞬で乾きそうな洗濯物。これは1日置いても乾かない自信がある。さすがに外に出そうと思いドアを開けると既にお客さんが庭のテーブルで楽しんでて、ロッジの隣の洗濯干し場も一杯だったから泣く泣く部屋に置いた。
夜になるまではゆっくり部屋で体を休めた。
寝ていたわけではないけど、こうやって日記を書いたりしていたらいつの間にか3時間以上経っていた。
時刻は20:00過ぎ。
全然明るいけど外に出てみたらオレンジ色の日差しが海から伸びていた。
これは…と思い足早に海に向かう。
途中、明らかに遊びに来たであろう人たちが夕焼けに照らされてる。犬の散歩、日本でいうギャル、イケイケな兄ちゃん、家族旅行、老夫婦と友達、子供達。
凄く綺麗だった。これがサンセットか、と写真を撮りまくった。みんな楽しそう。これに尽きる。
オシャレな店で美味い飯と酒を嗜み、夕焼けと海を眺めてる時間は凄く良いだろうな。
泊まって良かったと本当に思えた。
ヨットハーバー沿いのレストランでDJが音楽を流していた。一切誰も聞いていない、BGM状態で、唯一彼がこの街でバツが悪そうな顔をしていた。動画を撮っている時に、彼がこちらに気づき手を振ってきた。
ヨットハーバーを抜けてムーミンハウスにまた向かってみた。
昼間とは打って変わって、年配の方がたくさんだった。みんな楽しそうに笑い合ったり、ニコニコしたり、手を繋いで帰ってた。いつまで経っても自分の中で色褪せない文化を見つけられるだけで良い人生だよな。
用も無くその海岸沿いを何往復もした。
海岸沿いの白いベンチに座り煙草を吸って月を眺めた。フィンランドの人たちはパートナー同士の愛情表現に照れが無い。見てるこっちが胸焼けしそうになる。それはジュウソーに伝えたら笑われたんだけど。
この街もそうだった。
多分この街に1人でいるのは自分だけかもしれない。
そう考えると孤独な気持ちになった。
もしここに友達と来たら楽しいだろう。けど、今みたいに街を見れたのか。
馬鹿ノリでムーミンランドに入ってレストランに入って、酒飲んで早々に寝てたかも。
それも勿論楽しい。
けど、こうやって異国で夕暮れに海に浮かぶ月を1人で眺めて一本の煙草を最後まで嗜むことはなかったかも。
帰り際、外にたくさん人がいたレストランの支柱が斜めになってることに気付いて写真を撮った。
カップルに訝しげに見られてた。
ホテルに着いたのが23:00。シャワーは明日浴びようと思ったら、ロッジにスタッフの人が立っていて、自分を見かけるなり「サウナ入る?」と聞いてきた。
「マジで!?だって夜遅くない?」
「いいよ気にすんな!バスタオルも貸してやる!」
遂にフィンランド初のサウナに入った。しかも家庭用。
余裕で4人以上は入れるサウナ。シャワーを颯爽と浴び入室。
ロウリュ用に用意してくれた水入りの桶をサウナストーンにゆっくり浴びせる。
どうやらストーブタイプらしい。
一気に室内が熱くなる。熱くはなる。
けどすぐ緩くなる。サウナストーブの火力が弱いのかな。放って置いた室内は緩い温度がキープされる。だからタイミングを見てゆっくり入れる。適当な時間にシャワーを浴び、外気浴をせずもう一度ロウリュを浴びる。桶の水を使い切ってシャワーを浴び、水着も無いしさすがに全裸はマズイと思ったからシャワー室に背もたれて地べたに座る。
言うほど体が温まっていない状態でぬるめの水を浴びたから整う、とまではいかなかった。けど、涼しい風と、賑わった声と夕暮れの空を窓越しに見上げている時間はすごく気持ち良かった。
着替えてからスタッフに声をかけると炭酸水を持ってきてくれた。気が利きすぎだろ。
歯を磨いて寝る。1:00。前々日に暗くなってきたなと感じたのは飲みまくってた2:00。1時間というスパンでこんなに明るさが違うのは天気のせいか。
カーテンを閉める時に窓から覗いた外は、夕暮れなのか朝焼けなのかわからないブルーアワー。
不思議な時間体験をしている。
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