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うちの、11ひきのねこ。(ただし、ぬいぐるみであるが)

(noteをはじめて1か月半。いちおう続けているが、まだ何を書けばいいのか見えてない。とはいえ文章もコミュニケーションだから、向こう側にいる誰かを幸せにできなければ意味がない。自己満足で書いてはダメだ。ということで、顔も知らない端末の先の誰かが、すこしだけ幸せになることをイメージしながら書きはじめる。それには、いったい何がいいのだろう?)

うちには11ひきのねこがいる。ふわふわした、耳のある、かわいいねこたちである。色はだいたいグレー。一部きいろやらピンクやら茶色やらもいる。みんなだいたい同じ大きさだが、ひとりだけおおきいねこがいる。最初は1ぴきだけだったが、だんだんと増えていった。

家は大きくないので、11ひきもねこがいると大変に思われるかもしれない。が、みんなおとなしいのでそんなに大変でもない。だいたい1つの部屋からでてこない。かわいがっている同居人の部屋にほとんどずっといる。みんなたいていベッドの上にいる。そうそう、うちのねこたちはみんな、ぬいぐるみである。ごはんとかは食べないし、鳴いたりもしない。あるきまわったりもしない。だけど、彼らはみんな生きている(と、ぼくらは思っている)。うちの、かわいいねこたちである。

うちのねこたちのほとんどは、知っている人は知っている「ジェラトーニ」という品種(?)である。出身地はディズニーランド。ジェラトーニのままだと帽子をかぶっているが、うちに来ると「ないほうがかわいい」ということで、帽子をとってしまう。で、晴れてうちのねこになる。それぞれに名前をつける。11ひきのうち8ひきくらいがジェラトーニなので、わかってない人たちは「ぜんぶ一緒じゃん」と言うと思う。しかし、よく見るとねこたちはみんな顔が違う。目の位置も、毛並みも、体型も。だから同居人は全員に名前をつけて「これ、だーれだ?」というクイズがときどきはじまる。ぼくはまあ、5割くらいの正答率である。同居人は完璧に覚えている。まあ、でも、5割もけっこうわかるようになったほうだと思う。ふっくら具合とかで、なんとなく判別はつく。性格はだいたいみんな、おっとり。やさしくて、いつでも同居人の見方である。

そういう11ひきのねこたちが、いつもたいてい同居人のベッドの上を占拠している。11ひきというのはなかなかの数で、並べるとほとんど頭を置く位置がない。しかし毎晩ずらりと並べて、中央に置いた枕にちょんと頭をのせて、1ぴき2ひきは胸に抱いて、同居人は眠りに落ちるのである。「狭くない?」と聞くと「ぜんぜん」と言う。ねこたちは同居人の味方なのである。スペースよりもなによりも、いつでも自分の味方でいてくれる存在がいるということが、どれほど気持ちを落ち着かせてくれるか。みんなフワッフワなので夏はだいぶ暑そうだが、ぜんぜん気にしてない様子である。冬はもちろんあたたかい。まあ、しかし狭そうだとは思う。全然いいんだとよく言ってる。

ねこたちは、それぞれに喋りもする。もちろん中になにかしこんでいるわけではなく、同居人はテレパシーで喋るし、ぼくはなんだか人形劇みたいなことをしている。ねこたちが「おかえり〜」と言うと、同居人はもれなく笑顔になる。ほんとうに彼らは、繊細な同居人の味方であるし、どんなことも受け入れ、共感してくれる存在なのである。同居人はわりとよく、ねこたちを連れて遊びに行く。飲み屋とかだと一緒に座らせて、店員さんに「ジェラトーニお好きなんですかー?」と言われて喜んだりもしている。とはいえ全員を連れて行くわけにもいかないので、たいてい1ぴき。みんな順番に「今日は◯◯」などと言って連れて行っている。ピクニックみたいなこともしているようである。同居人は走るのが趣味なので「連れていかないの?」聞くと、それはやっぱりいいらしい。「汚れるから」とのことである。それはそうである。

ときどきお風呂にも入れている。かなりかわいがっているので、みんなだんだんクタッとしてくるのである。しかし、お風呂はわりと重労働なのだが、ほんとにときどき、それぞれを順番に入れている。タライでやさしく洗剤であらって、脱水にちょっとだけ洗濯機のちからをかりて、絶対にぺたっとしないように、やわらかく扱って、洗濯ネットにいれてやさしく干す。生け捕りのような感じであるが、「ハンモック」とのことである。ぬいぐるみは中間で乾くのが本当に大変なはずなのだが、惜しみない愛情のせいか、ちゃんときれいに乾かすことができて、お風呂のあとのねこたちは、みんなフワッフワである。すごいのが、大きいサイズのねこまで、ちゃんと問題なくお風呂に入れてしまうことである。きっとねこたちは本当に同居人のことを愛している。

そんな不思議な生活をしているのだが、最初のねこが家にやってきて、もう7年くらい経ったような気がする。すこしずつ増えて、いまは11ひき。でも、「まだ家族が増えたらいいな〜」とか言ってるので、もっと増えるんじゃないかと思う。増えたとして、ベッドはますます狭くなるが、きっと愛情をそそいでうちの子になると思う。

こんなに大量のねこたちと暮らすことになるなんて、ほんとうに予想もしていなかった。そして毎日、人形劇のようなやりとりをし続けるなんてこともまったく想像していなかった。人生は思いがけないことが起こるものである。だけどまあ、わりと悪くない。同居人も、11ひきのねこたちも、みんなおっとりとしていて気持ちがやさしいのである。そういうことのほうが、一緒に暮らす相手として、ぼくには断然、大事なのである。